彗星



by 遙か



書いては破り 書いては手を止めて
紅い髪の男が 机を前にして
椅子に座っている姿は 酒場でだったら
見慣れた光景だが これが宿場の備え付けのもので
しかも 書き物をしているといったら
目を疑いたくなる ベスト3に入るでしょう

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悟浄と八戒が、同居から意識を同棲に変えてから、半年。
正に、ラブラブ新婚さん(死語)で。
お互いしか目に入らない状態で『ケッ、やってろ』でした。

下手に構ったりすれば、あまりの甘さに砂吐きになりますし。
これで平和だから、いいのですが…。
どこにでも、天の邪鬼はいるもので。
わざわざ、目にしなきゃいいものを。
勝手に視界に入るな、とか。向こうに行け、とか。
一々、反応する御方がおりまして。
自ら、わざわざストレスを背負い込む最高僧なんですけどね。
(ハゲるぞ!)

まあ、その分質が悪いというか…。
そのストレス分をきちんと変換して返すという小技を持っているものですから。
返された2人のうちの一人は、堪ったものではありませんでしたが―――

『屋根の修理費。欲しいですね…。』

と、以前ポツリと漏らした八戒の言葉をきちんと、悟浄は耳に拾っていて。
三蔵の仕返し――仕事の依頼を一人で引き受ける事にしました。
単身赴任という条件の、割りのとっても良い仕事を。


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仕事の内容は、寺院荒らしの生きた儘の捕獲。
期限は未定。つまり、捕まえるまで帰って来るな、という事で。
殆ど役に立たない、今までの経緯と情報を纏めたという薄っぺらい報告書を渡されて。
長安から南の端の山裾の街へと、悟浄は派遣されました。

八戒さんには『さっさ、片付けてくっから』と、大見得を切って。
『気を付けて下さいね』と、寂しそうな顔をした八戒さんを。
思いっ切り抱き締めて、Deep Kissして。
見送り(?)に来ていた三蔵に発砲されつつ……。


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そして、一ヶ月…。
未だに、帰れない悟浄は。
生まれて初めて、手紙というものを。
八戒さん宛へと、書いていました。

書いては消し、消しては書き。
一つ一つ言葉を探して。
気持ちが、文字になる様にと。


悟空よりは、少しある筈の脳みそを使って恋人への言葉を探していました。
…どう出来上がるのかが、とても楽しみですね。


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八戒 へ

元気? 俺、元気
ごめん
帰るの遅くなっちゃって
早く帰るつもりだったんだぞ、俺
早く帰りてえんだからな、俺
あー、こんな仕事うけなきゃ良かったって言ったら怒るよな
怒ったら、ごめん
けど、お前の顔が見らんないのが辛いんだよ
思いっきし、抱き締めてえ
抱き締めてキスしてえ、お前に
お前もしたいだろ?
キスも アレもさ、俺と
あ!まだ続きがあんだからな
ここで、読むのやめんなよ!

今までさ、ひとりで平気だったのにさ
今はさ、俺はお前がいなくちゃダメなんだなってさ 思った
ホント、スキ 俺、お前が大スキだ

うわー、こんなこっ恥ずかしいコト
良く書けんな、俺って思うくらい

あと、ちっとだけ待ってて?
すぐ仕事片付けて
すぐお前んトコに帰るから、俺
だから、待ってて 俺のコト
お前が待っててくれんだって思ったら
ナンでも出来っから

えっと、今回は遅くなっちまったけど
えっと、もうすぐだからさ
待っててくれな 八戒

―――お前の悟浄 より


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かーなーり、恥ずかしい文面を書いた所為か。
封筒に入れて、後は郵送するだけという所で。
悟浄は出すのを止めてしまいました。

けれど、何処にでもお節介が好きな人はいるもので。
部屋の掃除に入った宿の女将さんが、気を利かせて。
丁度来た、郵便屋さんに手渡ししました、とさ。

八戒の元に届くのは、三日後位。
それを読んで、八戒さんがどう行動するかは目に見えてますよね。
さあ、それまでに悟浄が一人で仕事を片付けられるか否か。
手伝って貰う嵌めになるかは。

―――先のお楽しみという事で



2005.12.04  UP



☆ コメント ★


櫂さまに捧げますv

相互リンクの…大変遅くなったお礼で御座います(苦笑)
やっと何とか形になりましたので〜。

頂いたリクエストは『悟浄から八戒へのラヴレター』
きゃあvv なんて素敵なお題でしょうか(笑)
本当に、悟浄が恥ずかしいヤツになっていますが
八戒さんはきっとその手紙を読んで
綺麗に微笑まれた事でしょう…悔っ!

ではでは、慎んで贈らせて頂きます♪




モドル