Seven Days



by 遙か



まあ〜ったく。
ナンでこの俺サマが、課題試験なんか受けなきゃナンねーのよ。
ちょ〜っと。
この間、下界に降りた時にさ、ナンパしたくらいでさあ。
あったま堅いよな。あのバカ上司。
あっ、三蔵ってんだけどね。
なあにが、面白くって生きてんのか。
眉間にシワ寄せっぱなし。
あーゆー詰まんないヤツには、なりたくナイね。根性も悪ぃしよ。

試験クリアしねーと、クリスマス後の休みナシって。
そんなんアリ?
けど、三蔵はヤルっつーたらホントに、そーするヤツだからなあ。
あ〜あ、メンドイけどこーなったら、さっさと片付けた方が得策だよな。
俺って頭イーv モチ、顔も身体もイーしなvv

―――バサッ

俺は一旦、人目の付かないトコで着陸して、背中の羽を仕舞い込んだ。
この天使の羽は、地上では目立ち過ぎるしも、ジャマ!
あとは、人間の服を――パチンと指を鳴らして――身に付けて。
ヨシ、準備完了v どっから見ても、人間のイー男だ。
ホレボレしゃうね〜。

さあて…俺のするコトの確認しとくか。
[猪八戒、22歳。
 一年前、旅行先の飛行機事故での生き残り。
 両親・双子の姉はその時に死亡。
 その後、性格が一変。鬱状態を継続中。
 課題内容〈笑顔を取り戻させる事〉
 〆切、12/24/――以上  玄奘三蔵]

グラリ――視界が傾いたどころじゃなく、歪んだぞ。

ナンだ! このチョーベタな課題は!
ぜってぇ、三蔵の嫌がらせだ。
期限まで付けやがって、あんニャロ〜。

俺はタバコを取り出し、スパスパと吸い始めた。
頭に昇った血を下げる為に。
ココは、切れたら俺の負けだ。落ち着け、俺。
考えよーによっちゃ、簡単じゃねぇか。
要は笑わせれば、イーってコトだろ。
ナーンダ。ナーンダ。難しくなんかネーじゃん。
こんな課題、スグに終わらせてやる。
俺の手腕を見てろよ?
デキる部下に嫉妬する上司ってのは、カワイソーだねぇ。
ま、俺の心が広いから〜、笑って済ましてやれっけどねぇ。
あはは………。


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ナンだ!ナンだ!! あの偏屈の頑固モンはっ!!!
あれから速攻、目的の人間、猪八戒んトコに行ったんだけどよ。、
元っからじゃネーの? あの無愛想は、さ。
俺サマがあれだけ色々してやってんのに、にこりともしねぇ。
大体、ホントにアイツ、人間なのか?
感情ってモンがナイぞ? 息して動いてっけど。
まあだ、人形の方がマシってもんだ。
人形だったら、反応がなくても当然。期待しネーもんな…。

あのさ。そんな辛かったんか。
ごっそりと、なくしちまったんか。
もぅ、ナンも欲しくネーんか。………八戒。

一週間前、初めて会った時のコトを思い出した。
いきなり、オートロックのマンションの部屋のドアを開けた俺に。
八戒は全く、動じず『こんばんわ。どなたですか?』と、返してきたもんだ。
俺の正体も、来た理由も、全部話して。
居座る宣言しても『どうぞ。』の、一言だった。
ビー玉みてぇな、翠のおめめで俺を見ながら。

1日、2日、3日目はまだ余裕があった。
4日、5日で、ちと焦って、ナンでだよー!だったんだけどさ。
一緒にいれば、情が湧くじゃん。
俺は慈愛の天使だしぃ。
それに、実はさ。
段々、課題の為じゃなくて俺自身が八戒の笑顔を見たくなってさ。
何とかしてやりてぇ、と躍起になっていたんだ。

明日は期限の7日目。うーんうーんうーん………。


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突然、僕の部屋にチャイムを押して訪ねて来たのは。
悟浄という名前の天使さん、でした。
新手のキャッチセールスかと思いました。
天使というより、出で立ちがホストさんでしたから。
堂々と説明してくる内容も、現実離れしていましたし…。
でも、オートロック、セキュリティ万全のこのマンションに。
何の騒ぎも起こさず、アラームも鳴らさずに侵入している事。
何より、背中に白い羽を背負っているのを見せて自慢された事が。
信じるというより、現実だと理解しました。

それから毎日、手を変え品を変えて。
悟浄はご自分の課題をクリアしようとしていましたが…。
どうにも、申し訳なくて。

あの時、一人で生き残った時に僕の感情は。
全部、外に出てしまった様です。何も無いんです。
笑わないのではなく、笑う事が判らないんです。
意味も。
仕方も。だから、出来ないんです。

悟浄に申し訳ないと思っても。
出来たら、笑ってあげて、悟浄の課題を完了させてあげたいんですけど。
…出来ないんです。ごめんなさい、悟浄。

…僕には、それしか言えません。
…でも、それに。
…笑ってしまったら、悟浄は帰ってしまうんですよね。


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7日目の朝。
俺は夕べ、考えに考えたコトを実行する為に街に出掛けた。

チョット、調達するモンがあるんで、出て来たんだが。
うわあ〜〜、すっげぇ〜〜。クリスマスカラーってのか。
赤と緑のディスプレイが、あっちにもこっちにもあって。
その上、色んな飾りもしてあってさ、見てるだけで楽しいのナンのって。
…八戒も連れて来てやれば、良かったな。
…けど、秘密の計画だからなあ。
八戒には内緒で用意しないとなんねぇもんな。
ヨシ、ガンバるかv

あ? ナンでこんなにガンバるかって?
気付いちまったんだよ。俺が八戒をスキだってコトに。
天使が人間に恋したんだよ。前代未聞だろ?
けど、どーしよーもねぇ。
気持ちなんて、誰にも止めらんねぇ。
例え、カミサマでもな。

覚悟は出来てっさ。
俺は八戒を。
俺が幸せにしてぇんだ。


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クリスマスのオーナメント
ツリーに、クラッカーに、プレゼント用の長靴下
窓には、雪のディスプレイ
シャンパンにチキンに、サンタとイチゴの乗ったクリスマスケーキ

天使の悟浄と人間の八戒の、2人で迎えるX'mas

目には見えないけれど、心が近付いて
同じ願いを祈って―――



2005.12.18  UP



☆ コメント ★


ケイさまに捧げますv

毎年、ケイさまの所のクリスマス企画に参加させて頂いているのですが
今年は募集されるのを忘れてしまったとの事で
でも、ネタは考えていたので、突き進んで書いた勢いで
ケイさまに貰って下さい、と(笑)

天使の悟浄と人間の八戒の、恋物語
どうなるのかは、悟浄次第…八戒次第

ケイさまも私も、ハッピーエンドと思っております
疑っておりません(笑) 悟浄、頑張れ!

ではでは、慎んで贈らせて頂きます♪




モドル