Two as One
by 遙か
ちゃんと
布団の中で、眠れば良いのは判っています
ソファから起き上がって
ベッドまで、歩いて行けば良いってことも判っています
でも
このまま
ここで、寝てしまいたいんです
だって、気持ち良いんです……ふ、ぁ………
**********
「八戒〜、はよ〜。」
お昼を過ぎてからが起床時間の悟浄が、寝癖ぼさぼさで起きてきました。
いつもでしたら、ここで『おはようございます、悟浄』の返事と。
八戒が時間をみて淹れておいてくれる珈琲の香りが漂っている筈なのですが。
今日は、どちらもありません。
「あれ? 八戒?」
まだ螺子の巻いてない寝呆け頭の悟浄ですが。
八戒に関しては、専用の脳みそが動き出します。
目がバッチリ開いて。
首をキョロキョロとさせています。
エプロンを付けて、自分へとニコニコしている八戒を見つける為に。
けど…狭い家の中。
姿が無いのは、一目瞭然です。
「…八戒。」
相当、情けない声色が悟浄の口から零れました。
でも、無理もありません。
悟浄の1日は、八戒で始まって八戒で終わると言っても。
過言ではないのです。
ベタ惚れの、相思相愛の、相手がいないというシチュエーションは。
悟浄の頭の中からは、カットされているのです。
「はっ…! うわっ! ぶっ!!」
八戒の名前を大声で呼ぼうとした瞬間。
悟浄の頭上に、白いものが飛び掛かってきました。
「ジープっ、このヤロウっ! ナニすんだ、お前っ!」
悟浄が必死になって、除けようとするのですが。
ジープの方が一枚上手で、羽でバシバシと顔を叩かれました。
その痛い事痛い事。
悟浄は、反撃を試みようと構えましたが。
ある事に、ハッと気付きました。
いつもはピーピーと煩く鳴くジープが、一言も鳴いてない事に。
これって………。
ジープを押し退けて、悟浄は抜き足忍び足で。
窓際にあるソファへと、近付きました。
そこをそおっと覗き込むと。
午後の日溜まりの中。
健やかなの寝息をたてて、うたた寝をしている八戒を見つけました。
はぁ〜〜〜、力が抜けたとばかりに悟浄は。
その場にしゃがみ込みました。
不安を寄り切った安心感が、怒濤の如く押し寄せた所為で。
【失踪】とか【家出】とか【誘拐】とか。
心臓に良くない単語が、次々と消滅してゆきます。
ズルズルと、悟浄は力の抜けた身体で這いずって。
ソファの前。八戒の前へと移動しました。
ジープにズボンの裾を引っ張られるも、強行突破して。
八戒の寝顔の前を陣取りました。
『よく、寝てんなあ。』
気付いていない間の、ジープとの攻防戦で。
物音はそれなりにした筈なのに、八戒が起きる気配はありません。
瞼もぴったりと、閉じられていて開きそうにはありません。
こんなうたた寝と言えど、熟睡している八戒は珍しいです。
悟浄は息を最小限に止めて、マジマジと八戒の寝顔を鑑賞し始めました。
『…顔色はいいな。
けど、こんなトコで寝ちまうのって寝不足か?
俺のコト待ってなくてイーって言ってあんのに。
八戒は待っててくれるもんなあ。』
悟浄の目尻がでれんと、下がりました。
どうやら、何か思い出したようです。
『やっぱ、一昨日のが原因かなあ。
朝方までヤッたもんなあ。ガマンきかなくてさあ。』
シャツの襟、ぎりぎり。見えるか見えないかの所にある。
キスマーク。
翌日に気付いた八戒から悟浄は、散々お小言を喰らいました。
その後、ご機嫌を取る為に特売日の買い出しに付き合いました。
当然、大荷物持ちの役目で。
でも、後が反省とか二度としないとかは全くの別問題で。
どんなに、八戒に怒られようと独占欲丸出し、丸分かりの悟浄が。
止めるという事は、絶対にありません。
すやすやと、よく眠っている八戒の髪に鼻先を埋めました。
『イー匂いv
お日サン浴びてっから、あったかい匂いだなあ。』
くんくんと、わんこが懐くように悟浄は。
八戒が寝ているのを良い事に、どんどんとエスカレートしていきました。
顔中にキスをして。唇にも当然して。
窮屈そうだなと、勝手に判断してシャツのボタンを外して。
そこに顔を潜り込ませて。
八戒の胸にキスマークを付けておこうと―――した所で。
頭をスパーン!と、叩かれました。
「何しているんですか、悟浄っ!」
「…いってぇなあ〜。ナニって、そりゃナニを…。
いてっ、八戒。ヤメ…おい、ヤメろって。」
パンパンと連打されて、悟浄は漸く八戒の胸元から顔を上げました。
そこで見たのは、顔を真っ赤にして怒っている八戒でした。
『怒ってる顔も美人vv』
けど、内心で喜んで全く懲りてません。悟浄ですから。
「寝込みを襲うなんて、卑怯ですよ。」
「襲ってねぇって。俺の愛情表現じゃん。」
「そんな表現方法知りません。」
「え〜、だったら判るまで教えてヤルって。」
「遠慮します。」
「そんなに照れなくたってイーじゃん。」
「照れてなんかいません。」
押し問答しつつも、ちゃっかりと悟浄は。
八戒の隣に座って、しっかりと肩も抱いて腰も引き寄せています。
「イーからイーから。」
「ごじょ……っ!」
甘く、恋人を籠絡する手段にかけては、悟浄に敵う訳もなく。
唇を塞がれて、八戒は不承不承目を閉じました。
結局は、八戒も悟浄に甘いのですから。
ただ、TPOというものを忘れる訳にはいきません。
鍵の掛かる寝室ではなく、リビングのソファの上では…。
「いてっ!! ジープっ、このヤロっ、邪魔すんなっ!!」
悟浄の頭は、ジープの恰好の的です。
見事に狙いを定めて、攻撃されていました。
もうこうなったら、続きをという訳にはいかないでしょう。
悟浄とジープの戦いから、避難する為に。
八戒は服を直しつつ、ソファから離れました。
『…もぅ、ジープも悟浄も仕方ないんですから。』
途中中断を残念がっているのを苦笑いで隠して。
お昼の支度をしに、八戒はキッチンへと行ってしまいましたとさ。
沙家のよくある―――風景でしたね。
2006.02.22 UP
☆ コメント ★
黎明さまに捧げますv
相互リンクのお礼に贈らせて頂きましたv
黎明さんからのリクエストは
『58でメチャクチャ甘くて、すっごく幸せなお話』
キーワードは『日だまり』と『うたた寝』ですvv
なーんて、可愛らしいリクでしょう
張り切って書かせて頂きましたよ〜♪(笑)
ではでは、慎んで贈らせて頂きます♪
モドル