〜 悟浄
全部がギリギリだった。
一つ間違えば、だった。
だから、俺は絶対に踏ん張る気でいたし。
実際、踏ん張った。
境界線の先に、八戒を一人でなんかいかせねぇ。
今更、離してたまるモンか。
握った細い、頼りない手は離さねぇ。
…あん時から、これからもな。
†††††††††††††††
「ごじょ、ぉ…。」
長いキスから解放すると、八戒は俺を呼んだ。
制御装置を外して、悟空の件を片付けた八戒は。
可哀相なくらいに、怯えていた。
荒れ狂ったあの状態で、自身で振り回した身体と心。
自我を保つのに、どんなに八戒は苦しんだだろう。
俺に背負わすコトを口にしたコトも。
覚悟があったって、辛いモンは辛い。
だから、その痛みが少しでも楽になれるよーに。
俺は八戒に、ナンでもしてやっから。
知ってんだろ、八戒。
俺はまだ落ち着かず、強張ったまんまの八戒の身体を。
できるだけ優しく抱きしめた。
「も、全部片付いたんだからさ、安心しろって。」
「悟浄。」
「ガンバってくれてさ、サンキュ。」
「悟浄。」
「それと、俺んトコにちゃんと帰ってきてくれて、サンキュ。」
「悟浄…悟浄。」
まだ戻れない。
妖怪の姿のまんま、ガキみてぇにしゃくり上げる八戒を。
俺はキスしながら、ベッドに押し倒した。
尖った耳の先を指で擦りながら、キスを続ける。
八戒は、俺とのキスがスキだからさ。
こーしてキスしながらってのだと、素直になってくれるんのが早ぇし。
カンジやすくなる。
本人、知らねぇみてぇだけどさ。
少しずつ身体の力を抜いてって、俺の重みを受け止める、八戒。
そんな仕草に。
着てる服が鬱陶しくなって、自分と八戒のを脱ぎ捨てた。
八戒の全身を這う模様に、俺はキスをしつつ舌で舐めた。
蔦は八戒にとって、妖怪の象徴で。
イヤなモンなんだろーけどさ、俺にとっては。
独占してる満足感があんだよ。
八戒がこの姿を晒すのは、俺だけってゆー。
何度、俺の背中に手を伸ばしかけて。
慌てて、落としてシーツを掴む八戒。
伸びてしまった妖怪の爪で、俺を傷付けんのをイヤがってさ。
その姿があんまりにもいじらしいんで。
俺は八戒の身体を裏返して、腰を高く引き上げた。
「ご、悟浄っ。」
背中から続いている蔦の模様が、八戒の下の口へと入っていってた。
俺以外のモンが、八戒の中に挿っているのにムカついた俺は。
八戒の背中にのし掛かり、両手首を抑え。
一気に、奥の奥に勢いを付けて沈み込んだ。
ココは、俺のモンだってな。
抑え込まれて身動きの出来ない八戒を俺は、揺さ振り続けた。
深く…浅く、何回も中を擦り上げるたんびに啼く八戒の声に。
気をよくして、グッと押し込むと。
短い悲鳴を上げて、八戒はヒクヒクとイッちまった。
〜 八戒
一人では出来なかった―――出来ませんでした。
悟浄が居てくれたから、戸惑う事なく外せたんです。
人の姿でも妖怪でも『お前はお前だ』と言ってくれた、悟浄の為に。
僕は僕で居られます。
†††††††††††††††
イッてしまった脱力した身体を持て余しながら、僕は。
シーツに顔を埋めて、息を整えていました。
背中に張り付いていた悟浄が、スッと身体を上げると。
熱を持っている肌が、震えました。
「大丈夫か?」
「え……えぇ。」
掠れた声で、それだけ返すと肩に手が掛かり。
僕は仰向けにされました。
自分では好きではないこの身体を晒すのは、抵抗があるのですが。
今はどうにも力が入らず、悟浄の視線に誤魔化すように苦笑いしました。
「カワイーよな、八戒は。」
「え?」
言われた事が理解出来ないでいると、悟浄が身体を重ねてきて。
耳の中に『ホント、カワイー』と囁かれました。
その声に、消えようとしていた火が煽られて。
僕は無意識に、悟浄へと腰を押し付けていました。
さっきイッていない悟浄の物は、大きくて。
擦り寄ると、膝裏を掬われて。
アッという間に、貫かれていました。
一突き目の衝撃に、目を固く瞑ると涙が零れ落ちました。
後から後から、止めようもなく。
身体の中を悟浄で、一杯にされている喜びが涙という形を取って。
僕の中から、溢れているようでした。
挿ってきて刺激されて、焦らすように出ていって。
そして又、挿ってくる。
自分からは見えないのですけど、悟浄と繋がっている部分が。
音を立てているのが聞こえてきて、僕は熱く息を吐きました。
悟浄とだけ得る快感が嬉しくて。
意識をそこに集中させていると、シーツを握っていた手を取られて。
爪にキスをされました。
「悟浄?」
「いつも通りにさ、俺の背中に手ぇ回せよ。寂しーだろ。」
「で、でも、この爪じゃ…貴方を傷付けて…しまう。」
「いくらでも付けろよ。」
「…したくない、です。」
「してくれよ。」
「でも…。」
「して、イーんだって、お前は。」
掴まれたままの手が、グイッと上げられ導かれるままに。
僕は悟浄の背中へと、そっと手を回しました。
「バカ、です…貴方は…悟浄。」
「八戒もバカじゃん。」
「ええ…そう、ですね。」
「だろv 俺達、お似合いだモンな。」
腰に腕が回されて浮いた背中を抱かれて。
僕も悟浄を抱きしめて、口吻けました。
『好きです』と、何度も繰り返しながら。
汗と血の匂いに、何もかも預けて。
悟浄の熱を貰って、僕も吐精して。
きつく抱き合いながら、僕達は果てました。
ひとときの休息の時へと………。