5センチ。



by 遙か



5センチ以上 離れたくない

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その場限り。一夜限りの。
後腐れナシの関係ばかりをしてきた悟浄にとって。
実は八戒が初恋と言っても、過言ではありませんでした。

同じ男なのに、好きになっちゃって。
オマケに、死んでしまった恋人の面影を追ってくれちゃってて。
前途多難、なんてもんじゃなく。
お先真っ暗。

けど、障害があればある程。
諦めた方がいいと、どんなに言い聞かせようと。
更に、好きになってしまうんですよね。
つまりは、悟浄もその罠に自分から掛かったお馬鹿な一人となった訳です。

しかも『恋は盲目』を地でいって。
過去のトラウマは、ブレーキの役目を果たす事なく。
勢いで、八戒に告白してイエスの返事をもぎ取りました。

………勢いって、凄いですね。


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八戒と晴れて恋人になってから、3日が過ぎた。
なあんか、照れくさくってよォ。落ち着かねぇったらありゃしねぇ。
前っから、八戒の『おはようございます』
『いってらっしゃい』『お帰りなさい』『おやすみなさい』と『悟浄』には。
ヤラれてたんだけどさ〜。
こ〜イントネーションが、変わったっての?
一瞬のタメってのかなあ。
八戒が俺を意識してるってのが、声に出んのヨ。
それがまた、ヨクってさ〜。メッチャくんの。
思わず抱きしめちゃったモンね。
ビックリして、八戒はジタバタしたけどさ、離さなかった。
ぎゅうって、俺の両腕で抱きしめてんの。今もなv

「ご、悟浄///」
「ん〜〜〜。」

こんな焦る八戒ナンて、信じらんねぇけど。
顔真っ赤にして、俺を見る八戒は本物。
夢ナンかじゃねぇ。今まで見てきたムシのいい夢とは違う、この感触。

背が大して変わんねーから、こーして抱きしめっと。
顔が至近距離になる。
睫毛長ぇなあ。
体毛は薄そぅ。ヒゲなんか、生えんのかってカンジ。
色は…白いよな。焼けない体質かも。

全体の造りが細いんだけど、女顔には見えねぇ。
八戒は、八戒ってカンジだ。
もお、前の名前の悟能じゃねえ。

「悟浄…離してくれないと、食事が作れないんですけど。」
「あ、悪ィ悪ィ。」

目一杯未練がましく腕から八戒を解放すっと。
緊張を解いて、八戒が息を抜いたのがさ〜可愛かったんで。
ほっぺに―――チュッv

「悟浄っ!!」

デッカイ声と握りしめた拳から。
俺は安全圏に、ピョンと逃げた。

「スキだぜ、八戒っ!」

負けずにデカイ声で言ってやると、八戒の動きがピタッと止まった。
うわ〜すげぇ〜、八戒がこんな風になるなんてさ。
赤いトコがナイってくらい、真っ赤になっちゃうなんてさ。
そんだけ、俺のコトがスキってコトだよな。

……………。
うわっ、うわっ、うわっ!
俺は慌てて口を押さえた。
どーにもこーにも、嬉しくってさ、顔が笑っちまう。
血がカーッと昇ってきて、顔が熱くなってるよ、この俺サマが。
ダメだ。もぉ、ノックアウト状態だ。

「…八戒。」
「悟浄…。」

一歩も動けず、見つめ合っちまった俺達。
一体、どーすりゃいーんだヨ。
百戦錬磨の腕前は、ドコいった!?


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ずっと、ドキドキしています。心臓が。
悟浄に告白されてから、ずっと。
気持ちがふわふわしていて、平静を保とうとすればする程。
落ち着かなくて。
…実は、もう2枚もお皿を割っているんです。
悟浄には、絶対に内緒ですけど。

想っているだけで、良かったんです。
同居人として、悟浄の傍にいられたなら。
いつか、別々の道を歩んでも友人としていられたら、と。
それを悟浄は、思いっ切りひっくり返してくれました。

最初、何を言われたのかが全く判りませんでした。
悟浄が僕を好き…。
罪人で、妖怪で、男の僕を。
友人を越えた好きだと、告白された時は夢だと思いました。
僕に都合の良い夢、って。
だから、悟浄の頬を抓ったんでしたっけ。

『いってってーっ! ナニするんだよ、八戒っ!!』

と、怒鳴られて。
やっと、現実だと知って。

『あ、それより返事くれっ!』

に、コクンと頷いてしまったんです。
悟浄の迫力の勢いに乗って…。

良いのかな…いえ、良いわけがない、と。
頭の中では、交互に反対のものが鬩ぎ合っているのですが。
悟浄が嬉しそうに、僕を見る顔を前にすると。
どちらも、どこかに飛んでいってしまうんです。

自分が一番吃驚しています。
こんな僕がいたなんて。信じられないんですから、僕自身が。
でも、悟浄が僕を呼びながら笑ってくる顔や。
日常の何でもなく普通の顔を見せてくれたり。
少しずつ、埋めていった距離を大事にしてくれる。

それが嬉しいと。
悟浄も同じように思っていてくれると、言う事が。
僕が悟浄に向き合う勇気をくれたのだと、思います。
不安なんて、探せばいくらでもあります。
それこそ、山積みに。
けど、それを解消出来る術を、言葉を。
悟浄は僕にくれるんです。

ほら、こんな簡単に―――僕を『好き』と。

言われて、僕は困りました。
内心、大慌てで。
どうしていいのか、判らず。返す言葉も出てこず。
一気に駆け上ってきた感情をコントロール出来ず。
悟浄から、目が離せませんでした。
僕が好きになった、僕を引き止め受け入れてくれる、紅の色。

それを僕が、どんなに大切に思っているかを伝えたくて。
手をぎゅっと握り、動かない足を叱咤して。
動かして…一歩又一歩、悟浄へと近付いて。
見栄も外聞も、今だけは隅に押しやって。
僕は悟浄の背中に腕を回して、小さく呟くだけで精一杯でしたけど。
悟浄に『僕も貴方が好きです』と、伝えられて…。


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     抱き締め合った腕の中
     募る想いに戸惑いながら
     好きという気持ちに包まれて
     今は動きたくない2人

     ―――――5p以上、離れたくない



2006.03.27  UP



☆ コメント ★

空夜さまに捧げますv

寒中見舞いに頂いたイラストのお礼に贈らせて頂きましたv
空夜さんからのリクエストは
『58で八戒を甘やかす悟浄。これでもかって位の激甘』
でしたv(笑)
きゃー、楽しいじゃないかと書き上げましたらば
マジ超激甘…どうすんのコレってなものになりました(笑)

ではでは、慎んで贈らせて頂きます♪




モドル