プリズム
by 遙か
〜 天蓬編
何故 止められないのか、判りました
坂を転がってゆく小石が、止まらないのと
同じ事でした
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ずっと、僕は悟浄を避けています。
あの事があった日から、携帯の電源は切ったままで。
悟浄の口から、何も聞きたくはなくて。
聞いたら…終わってしまうような気がして。
変ですよね…僕。
あんな事があったというのに、悟浄との事を終わりにしたくはない…と思っているなんて。
結論という出口の前で、うろうろしているだけ…なんて。
僕はどうしたら…。
そんな溜息だけで、音にならない自問自答に落ち込んでいた所に。
『天蓬と申しますが、猪八戒さんの免許証を預かっています。ご連絡下さい』
と、自宅の留守電にメッセージが入っていて。
僕は慌てて、相手の方に連絡を入れました。
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「お待たせしました。遅れてしまって、済みません」
「いえいえ、大丈夫ですよ。僕が早過ぎたみたいですから」
待ち合わせの時間の10分前。
待ち合わせの場所の、ホテルのラウンジに相手の方がもう先に来ていて。
僕は慌てて、謝罪をしました。
気にしないで下さいね、と微笑まれ、椅子を勧められ座りました。
「はい、先ずは忘れないうちにお返ししますね、どうぞ」
「ありがとうございます」
テーブルの上に置かれた、免許証を確かに僕の物で。
頭を下げて、お礼を口にしてから。
ふと、頭に浮かんだ疑問を口にしました。
「本当にありがとうございました。
それで、あの、これをどこで拾われたのでしょうか、天蓬さん」
ここ数日の出来事に、落とした事に気付いていなかったのもありましたが。
何処でという心当たりがなかったので、尋ねてみました。
「ん〜僕が拾ったんじゃなくて、友人から預かったんですよ。
これと一緒にねv」
え? 携帯の画像が、僕へと向けられました。
…これって…まさか…何故、あの時の事が…。
「判りました? 捲簾からね、薬の結果だって貰ったんですよ」
くすくすと笑う声に、僕は全身が冷えていきました。
「それでね、僕の薬の成果を知りたいなって言ったら。
捲簾が、釣り餌だってこれをくれましてね」
つんつんと指先で、テーブルに置いたままの免許証を突きました。
「見事に引っ掛かってくれて、嬉しくて」
携帯が閉じられるのを、ただ呆然と僕は見つめてしまいました。
「ここのホテルの部屋を取ってあるから、一緒に行ってくれますよね、八戒?」
椅子から立ち上がり、僕の座っている横へと来て。
優雅に手を差し出してきました。
それに、逆らう事など思いも付かず。
僕は、その手に自分の手を重ねていました。
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「良い躰ですね。捲簾が薦めるだけはあります」
僕の方が上になって、大きく足を広げ。
自分から腰を下ろす格好で、僕は抱かれていました。
「あっ…あ……、いや…だ…め………」
「薬がしっかり効いているようですね。声も可愛いです」
部屋に入った途端、この間のよりずっと効くからと。
改良型のを口移しで飲まされて、僕の身体は完全に。
僕の意志から、あっという間に離れていきました。
不規則なリズムで、下からずっと突き上げられて。
微妙な力加減で、前をずっと弄ばれて。
涙が止まりません。
視界がぼやけていきます。
それ以上に、頭の中も…何も、僕は考えられなくなりました。
「八戒」
伸ばされてきた両手に、二の腕を掴まれて、僕は引き倒されました。
息の付けないキスと濃厚な快感に。
抵抗を放棄させられて、僕は無理矢理引きずり堕とされていきました。
2008.08.04 UP
☆ コメント ☆
彩乃さまに、心を込めて捧げますv
続々の天蓬編です
本当に続き書いて良いのかな〜と思いつつ
彩乃さんが楽しみにしてくれているので
時間は掛かりましたが、書いちゃったv つー代物です(笑)
…あ〜なんつーか、天蓬が鬼畜っぽくって楽しかった(本音)
どうぞ、お受け取り下さいませv
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