プリズム



by 遙か



〜 天蓬編



何故 止められないのか、判りました
坂を転がってゆく小石が、止まらないのと
同じ事でした

■□■ □■ □■ □■ □■□


ずっと、僕は悟浄を避けています。
あの事があった日から、携帯の電源は切ったままで。
悟浄の口から、何も聞きたくはなくて。
聞いたら…終わってしまうような気がして。

変ですよね…僕。
あんな事があったというのに、悟浄との事を終わりにしたくはない…と思っているなんて。
結論という出口の前で、うろうろしているだけ…なんて。
僕はどうしたら…。

そんな溜息だけで、音にならない自問自答に落ち込んでいた所に。

『天蓬と申しますが、猪八戒さんの免許証を預かっています。ご連絡下さい』

と、自宅の留守電にメッセージが入っていて。
僕は慌てて、相手の方に連絡を入れました。


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「お待たせしました。遅れてしまって、済みません」
「いえいえ、大丈夫ですよ。僕が早過ぎたみたいですから」

待ち合わせの時間の10分前。
待ち合わせの場所の、ホテルのラウンジに相手の方がもう先に来ていて。
僕は慌てて、謝罪をしました。
気にしないで下さいね、と微笑まれ、椅子を勧められ座りました。

「はい、先ずは忘れないうちにお返ししますね、どうぞ」
「ありがとうございます」

テーブルの上に置かれた、免許証を確かに僕の物で。
頭を下げて、お礼を口にしてから。
ふと、頭に浮かんだ疑問を口にしました。

「本当にありがとうございました。
 それで、あの、これをどこで拾われたのでしょうか、天蓬さん」

ここ数日の出来事に、落とした事に気付いていなかったのもありましたが。
何処でという心当たりがなかったので、尋ねてみました。

「ん〜僕が拾ったんじゃなくて、友人から預かったんですよ。
 これと一緒にねv」

え? 携帯の画像が、僕へと向けられました。
…これって…まさか…何故、あの時の事が…。

「判りました? 捲簾からね、薬の結果だって貰ったんですよ」

くすくすと笑う声に、僕は全身が冷えていきました。

「それでね、僕の薬の成果を知りたいなって言ったら。
 捲簾が、釣り餌だってこれをくれましてね」

つんつんと指先で、テーブルに置いたままの免許証を突きました。

「見事に引っ掛かってくれて、嬉しくて」

携帯が閉じられるのを、ただ呆然と僕は見つめてしまいました。

「ここのホテルの部屋を取ってあるから、一緒に行ってくれますよね、八戒?」

椅子から立ち上がり、僕の座っている横へと来て。
優雅に手を差し出してきました。
それに、逆らう事など思いも付かず。
僕は、その手に自分の手を重ねていました。


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「良い躰ですね。捲簾が薦めるだけはあります」

僕の方が上になって、大きく足を広げ。
自分から腰を下ろす格好で、僕は抱かれていました。

「あっ…あ……、いや…だ…め………」
「薬がしっかり効いているようですね。声も可愛いです」

部屋に入った途端、この間のよりずっと効くからと。
改良型のを口移しで飲まされて、僕の身体は完全に。
僕の意志から、あっという間に離れていきました。

不規則なリズムで、下からずっと突き上げられて。
微妙な力加減で、前をずっと弄ばれて。
涙が止まりません。
視界がぼやけていきます。
それ以上に、頭の中も…何も、僕は考えられなくなりました。

「八戒」

伸ばされてきた両手に、二の腕を掴まれて、僕は引き倒されました。
息の付けないキスと濃厚な快感に。
抵抗を放棄させられて、僕は無理矢理引きずり堕とされていきました。



2008.08.04  UP



☆ コメント ☆

彩乃さまに、心を込めて捧げますv

続々の天蓬編です
本当に続き書いて良いのかな〜と思いつつ
彩乃さんが楽しみにしてくれているので
時間は掛かりましたが、書いちゃったv つー代物です(笑)
…あ〜なんつーか、天蓬が鬼畜っぽくって楽しかった(本音)

どうぞ、お受け取り下さいませv



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