プリズム
by 遙か
〜 八戒編
大丈夫、もう止まりましたから
もう、何処にも行きません
これ以上、転がりませんから
■□■ □■ □■ □■ □■□
今、僕は悟浄の部屋で、悟浄のベッドへと座って。
悟浄を目の前にしていました。
もう考えるのに疲れてしまった僕は。
悟浄の『会いたい』というメールの呼び出しに、応じてしまいました。
どうでもいいという、半ば自棄と本当の事を知りたいという気持ちを持って。
「八戒」
急に呼ばれて、ビクッとすると。
悟浄は僕の目の前、足元に座り込み。
僕が膝の上に置いていた手を包み込んで、握ってきました。
「八戒、どーして会ってくれなかったんだ?」
僕は俯いていた顔を上げました。
あまりの驚きに。
声の調子は、以前と何の変わりがありません。
…まるで、何もなかったように。
「何を怒ってんのか、判んねえんだけどさ。
しかとは、ねーだろ?」
悟浄は何を言って…あんな事をされて会える訳はないのに。
…会いたいと、思っていても。
「なあ、八戒〜機嫌直してくれよ〜」
悟浄の、いつもの甘えを含んだ懇願に、僕は感情が揺らぎました。
…判らな過ぎて。
おかしいのは、悟浄?
それとも、僕、なんでしょうか…。
「八戒? どした? 顔色、悪いぞ」
本気で心配してくれている声。
悟浄は、何も変わっていない。
どうして?
「悟浄…」
「大丈夫か? 辛いんなら我慢するなよ」
身体を優しく抱き締められました。
とても安心する悟浄の腕の中に。
「…どうして」
「ん、ナニ?」
「どうして…悟浄は…僕を…他の、人に…」
「カワイイからに決まってんじゃん」
「え?」
「八戒はねえ、俺の自慢なの。美人だしカワイイし」
悟浄の、はしゃぐように言っている事が判りません。
僕の頭の中で、上手く繋がりません。
「俺一人で愉しむのもイーんだけどね。
ナンかそれって勿体なくてさあ」
「勿体無いって…」
「見せびらかしたくてさ、我慢出来なくなっちまったの」
「………」
「兄貴も、兄貴のダチも羨ましがっててさ。
ザマミロだよな〜」
嬉しそうに、きつく抱き締めてくる悟浄に。
僕は言葉を失いました。
悟浄にとって、僕は…でも…それでも…。
「スキだぜ、八戒。八戒も俺のコト、スキだろ」
額に、瞼に、頬に…顔中に降ってくるキスの最中。
悟浄の告白に、僕も答えました。
「僕も好きです、悟浄」
「んv」
何も考えず、するりと出た言葉。
きっと、それは真実で…僕は悟浄の背中へと腕を回しました。
「カワイイ、八戒、スキだぜ〜」
僕なりの愛し方があるように、悟浄には悟浄の愛し方があるのですね。
それが、どんなのでも構いません。
だったら、それで良いんです。
悟浄、だから。
心地良い水中に浸っている、気分です。
ただ、受け入れる。
何をしても、何をされても――幸せだと、思い。
悟浄を好きな事には、何も変わらない。
それが、判りましたから――悟浄…。
2008.10.17 UP
☆ コメント ☆
彩乃さまに、心を込めて捧げますv
本当は三話で終わるつもりだったのだけど
どうしても、終結編を書きたくなり
八戒さんで締めという形にさせて貰いました
それを待っていてくれると喜んでくれた彩乃さん
どうも、ありがとうです〜
どうぞ、お受け取り下さいませv
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