花 散る 散る
by 遙か
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――天使が通り過ぎた
不意に訪れる沈黙の事をそう言うらしい
そして、それを教えてくれたのは
その沈黙さえも、傍に居れれば心地良いと思える
俺の片想いの相手――八戒、だった
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八戒とは、大学時代からの付き合いだ。
俺が二浪して、八戒がストレート合格だったので。
2つ違いの同級生。
入学式で、隣の席。
その後、一番初めの講義出席の時も隣。
3度目の偶然を待たずに、俺達は口をきくようになり。
つるみ始めた。
話せば話す程、俺達は好みとか考え方が似ているのが判って。
どんどんと、親しくなっていったんだ。
俺の隣には、いつも八戒がいて。
いつも、笑っていてくれた。
…大喧嘩する時もあったが、それも相手を知る為の一つだと思った。
―――春夏秋冬
季節を一つ過ごす毎に、何かが深まっていくのを俺は自覚していた。
俺は、八戒が好きなんだと。
…ただ、自覚したのはいいんだが、自覚した途端。
足が止まった…。
これは、俺側の気持ちだから、それはそれでいいんだ。
けど………。
八戒…八戒は?
あいつの気持ちが必ずしも、俺と一致するとは限らないんだ…よな。
確かめてもいないのに、同じ答えがあるとは到底思えな。
そこまで、自惚れられない。
今は変わらず、八戒は俺の隣にいるが。
その有効期限が切れる時も、必ずあるんだ。
このまま…何もしなかったら。
…いや、何かしてこの期限が早まる場合もあるんだが…。
右か? 左か? 真ん中か?
どの道を選んだら、俺が一番強く願っている未来に続くのか。
卒業が、もう近付いてきている。
俺も八戒も、就職先は決まっていて。
大学を出たら、別々の道を歩む事になっている。
繋がりが無くなる訳ではないが、学生の時みたいにいかない筈だ。
けど、俺は毎日、八戒の顔を見ていたいんだ。
だったら、それを叶える為の一番の有効手段は………。
「―――捲簾、捲簾。どうしたんですか?」
「あ? ど、どうしたって、八戒?」
「何度も呼んでいるのに、返事が無いから目を開けたまま寝ているのかと思って。」
「そんな器用に事出来るか。
一寸、考え事をしていただけだ。…返事をしなくて済まない。」
「考え事? 何かありましたか?」
八戒の目が、俺を心配して見つめてくる。
俺は、そこに自分から視線を合わせた。
どうしても…どうしても、八戒が欲しい自覚が湧き上がった。
――玉砕してたまるかっ!
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捲簾とは、大学の入学と同時に知り合いになりました。
席が隣という偶然で始まって、何時の間にか。
いつも、隣にいる人になっていました。
僕は、どちらかというと内向的で。
あまり人との付き合いを自ら進んですることはしませんでした。
…他人って、疲れてしまうんです。
それが、一体何を間違えたのか。
こんなにも関わってしまっているのか…。
捲簾は同級生ですけど、二歳年上で。
明るくて気さくで、周りの人達からとても頼られていて。
…何で、僕にかまうのか。
最初の頃、戸惑いと不可思議で仕方ありませんでした。
僕は自分を判っていますから、相手をしてくれる理由は。
同情位でしょうと、思っていました。
それが…一日、又一日と。
時間を――日々の日常を過ごしていくうちに。
捲簾は、僕にとって空気の様な存在になっていました。
気にならない程、傍にいて、いなくなったら…。
確かめるとか、認めないとか。
そんな次元ではなく、僕の中にストンと落ち着いてしまった素直な気持ち。
ああ…、僕は彼――捲簾が好きなんだなあって、納得したんです。
でも、いつまでもずっと傍に居る事は出来ないのでしょうね、と。
覚悟もしましたけどね。
社会人になれば、学生の時みたいに融通がきかなくなるのは…。
判っていますし。
何より、就職先が別々です。
卒業したら、今までみたいに殆ど毎日会っていた事は。
不可能になるでしょう。
何の約束もしていません。
――それ以前に、友達だけの関係の僕達ですから。
このまま、時々連絡を取り合うかもしれない。
――最悪、自然消滅になるかもしれませんものね。
考えない様にしてはいるのですが、胸がチクチクと痛みます。
きっと、これからもずっと痛むのでしょうね…。
珍しく、捲簾が小難しい顔をしているので。
心配で声を掛けたら、手首を掴まれて。
丁度、講義に使われていない教室に引っ張って行かれました。
――?
何が何だか判らないうちに、捲簾と真っ正面で向き合っていました。
「八戒。」
「何ですか、捲簾。」
「卒業したら、俺と一緒に暮らせっ。
その方が、家賃も生活費も折半出来るだろっ?」
これって…少しだけ、都合良く取ってしまっていいでしょうか。
自分のセリフに、あたふたとし始めた捲簾に。
僕は素直に嬉しくて――『はい』と、即答していました。
捲簾の本当に嬉しそうな顔に、微笑みながら。
2004.2.21 UP
☆ コメント ★
暁さまに捧げますv
超・遅刻しまくりの相互リンクのお礼です…ιι
『甘い捲八』
どうして、こうタイミング良いリクをくれるかな(笑)
書いちゃうよ?
私は書いちゃいますよ(笑)
で、出来上がったのがパラレルでございます
どうかしら?
ねえ、暁さんvv
では、慎んで贈らせて頂きますvv
モドル