真っ白



by 遙か



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絶対なんて 保証は どこにも ないのよ?

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冬のイベント。
バレンタインディの次は、ホワイトディ。
いまや、定石となっている恋人達のイベント。
バレンタインディに、八戒にチョコを貰っていた悟浄は。
ここ数日、ずっと浮き浮きしておりました。
例えて言うならば、遠足前日の小学生。
その日が待ち遠しくて待ち遠しくて、仕方ありません。

恋人へのプレゼント。
今まで、悟浄が経験した事の無い、物を贈る事の。
楽しさ、喜びが。
更に、その日を待ち遠しくさせておりました。

やっぱり、特別な人には特別な事をしたい。
そして、喜んで貰いたい。
八戒の事を想うと、素直にそう思ってしまう悟浄は。
自分に、照れていました。

今まで、言葉なんて、その場の思い付き。
深く考えた事もなく、口から出していた。
けど、八戒には違う。
厳選して、選り抜いて。
それでも、口籠もってしまう。

伝えたい事は、一杯あるのに。
伝えられないもどかしさが、ある。
四苦八苦して残るのは、飾りっ気の無い。
全然、スマートじゃないセリフ。
歯の浮く様なが得意なだけに、逆にこっちの方が。
悟浄には、恥ずかしくて仕方ありませんでした。

バレンタインの時。
八戒がくれた手作りチョコレート。

『貰って頂けますか、悟浄。
 僕からって言うのも、変ですが。』

苦笑いしながらの八戒のセリフに、悟浄は舞い上がって。

『サ、サンキュー。』

と、思いきりドモり、その後の言葉が続かない位。
身体中を幸せが、駆け巡りました。

この時の幸福の絶頂を実体験して、この1ヶ月。
悟浄の機嫌は、ニコニコ・ニヤニヤ。
目尻が下がりっ放しで、思い出し笑いをしては。
酒場の悪友達を引かせておりました。
しかも、勝負事は何故か、バカヅキ。
普段よりずっと、実入りも良くなっていました。

なので、懐も温かくなっていましたので。
ホワイトディに、八戒へと贈る物を悟浄は色々と物色しておりました。
アレでもない。コレでもない、と。
様々なジャンルの店を梯子しておりましたが。
今一、ピンとくるものがなく。
日も経過しており、悟浄は段々と焦りを覚えてきました。

何しろ、八戒にです。本命の恋人にです。
最高の贈り物を選んで、贈りたいと思うのが男心です。

贈った時に、八戒がどんな表情を見せてくれるか。
――悟浄の好きな微笑みを見せてくれるかを。
下半身に血を集めつつ、楽しみにもしておりました。


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さて、八戒へのこれという贈り物が見つからない侭。
ホワイトディの前日となりました。
悟浄の焦り度は、最高潮へと達しておりました。

ホワイトディなので、白いキャンディの用意はしてあります。
美味しいと評判のお店に予約を入れてあり。
そちらは、準備万端でした。

けれど、もう一個のタイムリミットは、今日中。
いくら何でも、明日――ホワイトディ当日に。
探して走り回りたくは、ありません。

う〜〜〜んと、首を捻りつつ歩いていると。
目の端が、チラリと曲がり角を捉えました。
家と家の間の狭い路地。
この街の悟浄の知らない場所が、あった事に。
ふと、興味を覚えて…曲がって…路地の奥へと歩いて行きました。

すると、そこで見つけたのはワンオフのお店。
オーダーも取らず、そこの主人が趣味のみで。
一点物の作品を作っている、お店でした。

そして、そこで悟浄が見つけたのは――細いシルバーリング。
慎み深く、ルビーとエメラルドの石が小さく一個ずつ。
上品なデザインの中に、埋め込まれていました。

値段は、当然張りましたが。
悟浄は、主人の言い値通りの金額を躊躇いもなく払って。
そのリングを手に入れました。


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さてさて、ホワイトディ当日となりました。

台所で、食器洗いをしている八戒の後ろ姿に。
悟浄は、声を掛けました。
流石に、真っ正面から向き合っては一寸恥ずかしいので。
照れ隠しの為です。

「八戒…。」
「はい、何ですか? 悟浄。」
「あのな、そのまんまでイーから聞いて欲しい事があんだけどよ。」
「はい? このままでいいのですか?」
「そうそう、それでイーからさ。」
「判りました。ご用件をどうぞ。」
「あのさ、お前さ、バレンタインのチョコをくれたろ。
 だからさ、俺からもさ、ホワイトディのプレゼントをしたいんだ。」
「ホワイトディ? …ああ、バレンタインのお返しの日の事ですね。」
「うんうん。」
「ありがとうございます、悟浄。」
「そ、それとな…八戒。」
「けど、悟浄って義理堅いんですねぇ。
 僕の義理チョコにまで、お返しをくれるなんて。
 そんなに気を遣わなくても、いいんですよ。
 でも、その心遣いは本当に嬉しいです。」
「はい?」
「テーブルの上に置いておいて下さいますか。
 後で、コーヒーを淹れますから三時のおやつにでも頂きましょう。」

皿洗いを終えて手を拭きながら、にっこりと振り返った八戒に。
悟浄の思考は、真っ白に燃え尽きたとか、フリーズしたとか…。

取り敢えずは、ご愁傷様でしたとか。
言葉は出てこない、悟浄のホワイトディの結末でした。
ちゃんv



2004.3.27 UP



☆ コメント ★


ぱせりさまに捧げますv

相互リンクのお礼です…ιι
いいの…どんなに遅刻しても…
最近、開き直ってます(苦笑)

『へたれ悟浄のホワイトディ』

ぱせりさんが何故か、ウチのへたれ君を気に入って下さっているので
大ノリノリで書かせて頂きましたv
どうかしら? へたれ度は?(笑)


では、慎んで贈らせて頂きますvv




モドル