Love somebody
by 遙か
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例えば、すっと手が差し伸ばされて
エスコートされる事
言葉で、はっきりと大切だと
告げられる事
好きにならない方がおかしいのに
好きになってしまった自分が
おかしいような気がするから…
悔しいから、返事は保留にして
タイミングを図って、上位に立てる様に
そう、決めていたのに
どうして、なのかな?
こんなに、ちっとも
…上手く、いかないなんて………
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3年間一緒に暮らして来たのですから。
今更、どうのこうのといった事も無い筈なのに。
一旦、意識してしまった今では。
どうしても、意識してしまう。
得意のポーカーフェイスを保つのが、苦しいなんて。
…こんな事は、一度もなかったのに。
原因は…判っています。判っているんです。
悟浄の…せい、なんです。
悟浄の…告白のせい…。
西への出発前に、言われた言葉。
『俺、八戒が好きだからさ。
本気で、恋人にしてえからさ。
――宣言、しとくな。』
知りませんっ。こんなの知りませんっ!
一方向に、言うだけ言って。
僕の答を聞かないで、そそくさに背中を向けたんですよ。
中途半端な、宙ぶらりん。
どっち着かずの、灰色。
白か黒か、はっきりとさせたいのに。
僕一人じゃ、どうにも…出来ないなんて。
狡いです、悟浄。
卑怯ですよ、悟浄………。
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卑怯もズルイも、判ってるって。
けど、そんなのかまってられっか。
好きだったんだぜ。最初っから、ずっと。
この3年間、それこそ、ずっとな。
だったら、ナンでさっさと告っとかなかったって?
スル必要なかったんだよ。
あそこだったら。二人で暮らしてたあの家にいるんだったらさ。
大体、俺があからさまだったから、街の奴等にも公認だったしさ。
気付いてなかったの、八戒ぐれぇだったもん。マジな話。
ナンで、別にそれで良かったんだ。
鈍チンなトコも、可愛かったし〜。
焦らずのんびりでさ、いーやと思ってたんだな。
そりゃ、手出したかったさ。
けど、情緒不安定薄幸美人に、下手に手は出さねーよ。
意地っ張りの、強がりのクセに。
中身が脆いんだからさ。
八戒に知られずに、守ってやらねーと。
それに、八戒は俺にとっての一生モンのつもりだからさ。
いっくらでも、時間を掛ける心構えでいたって訳。
けど――人生、何があるか判んねーよな。
まっさか、ボーズとサルに付き合って。
サバイバル旅行に出る、なんてよ。
まあ、断るコトも出来ただろーけど。
浮き世の義理って、ヤツ(笑)
仕方ねーから、一緒に行ってやろーだったんだけどさ。
出掛けるその前に、これだけはしとかなきゃ出掛けられっか、と。
八戒に正式に、告った。
あん時の、ビックリおめめは可愛かったなあ。
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普通に普通に。
旅に出た以上、三蔵と悟空の手前。
以前通りを心掛けていました。
けれど、それが余計に悟浄を意識してしまい。
姿を目で追って、居ない時は気配を追ってしまう…。
悟浄の一挙手一投足に、動揺してしまう…なんて。
滑稽過ぎて、自己嫌悪に陥ってしまうんです。
だから、せめて距離だけでも取ろうと。
悟浄と2人きりにならない様に。
買い出しは悟空を必ず連れて行っていたのに。
三蔵…恨みますよ。
この街の寺院に用事があって出掛けるのは、構いませんけど。
どうして、悟空を連れて行くんですかっ!
宿は個室が取れたから、夜は大丈夫ですけど。
問題は、昼間の買い出し、です。
悟浄が先に何処かに出掛けてくれれば、良かったのですけど。
『買いモンするんだろ? 荷物持ちしてやるよv』
なんて、屈託の無い好意で言われたら断れないじゃないですか…。
『はい、お願いします。』
なんて、いつも通りに返事しちゃったじゃないですか。
はぁ…。
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「八戒、疲れたか?」
「あ…。い、いいえ。」
「――ん、俺が疲れたから一休みして行きたいんだけど…ダメ?」
「い、いいですよ。」
本当は、早く帰りたい、です。
悟浄と向かい合って、お茶を飲むなんて。
平常心がどこまで保つか、自信が無いんです。
だって…意識してしまってから、悟浄の事が格好良く見えて。
前みたいに、平気で見られなくなってしまっているんですから。
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もお、一押しだな。
十分以上に、俺のコトを意識し出してくれたよーだし。
順調順調v
荷物を足元に、纏めて置いて。
八戒と差し向かえで、コーヒーを飲む。
久しぶりのイイ時間だ。
八戒は、俺と視線を合わせないよーにしてっから。
反対に、俺はマジマジと八戒を見ていた。
耳朶が、赤くなってきている。
目元が、ほんの少しだけ、やっぱ赤くなってきている。
伏せ目がちなんで、睫毛の長さが際立ってる。
頬のカーブが、滑らかだよな。
…等と、いつも思ってるコトをひとつひとつ確認したりしてる…俺。
ホント、八戒は美人。
美人で、可愛い。
「八戒。」
「は、はい、何ですか、悟浄。」
「八戒の淹れてくれるコーヒーの方が、ずっと美味いよな。」
「え?」
「だからさ、ウチに帰ったらさ、又淹れてくれよな。」
「え、えぇ。」
「約束なv」
「――はい。」
OKをくれた八戒の右手を掴んで、指先にkissをする。
とうとう、顔も首も全部真っ赤になった八戒を見ながら。
俺は最後の一押しの、愛情の籠もったウィンクを。
八戒に贈った。
2004.09.09 UP
☆ コメント ★
蘇芳さまに捧げますv
もーの凄く遅くなってしまった
相互リンクのお礼のお話です(汗)
折角、蘇芳さんから…
『悟浄ファンなので、良かったら格好イイ悟浄が出てくる58…』
…と頂いていたのに、本当に申し訳ありませんっ!
是非、贈らせて下さいっ!!
モドル