抱き締めたら kiss しよう
by 遙か
秋から冬にへと移りゆく日々
降る雨の冷たさから逃れて
恋人と家の中に籠もる夜―――
††††††††††
「どうしたんですか、悟浄。それって…。」
夕方に『ちょーっと、出掛けて来る』といつもの台詞で。
悟浄が外出しました。
だから、僕も『行ってらっしゃい』といつも通りに。
悟浄を見送りました。
夕方に出れば、帰って来るのは早くて、日付が変わった頃。
遅くて、次の日の昼が…今までの最長でしたっけね。
まあ、無事に帰って来てくれれば。
何も言わないんですけどね…ふぅ。
それが、今晩に限って宵の口、8:00に帰宅するから。
さっきの台詞が、僕の口から出てきた訳です。
しかも、両腕に荷物を抱えているので、疑問にもなるでしょ?
「おうv ただいま〜。」
「あ…お帰りなさい。」
何か、とてもご機嫌です…よね。
酔っている風には、見えないんですけど。
「ほい、ミヤゲvv」
「お土産…ですか?」
差し出された紙袋を覗き込むと。
一杯ごちゃごちゃと食べ物が、入っていました。
…おつまみ系の物が。
「八戒の好物と俺のスキなモンばっか買って来た。」
「ありがとうございます。」
「酒も奮発したのを…2本v」
「判りました。用意しますね。」
「サンキュ〜vv さすが、八戒。」
「褒めても何も出ないのは、判っていますよね?」
「強引に貰うからいーでーすvv」
え? ぐいっと腰を引かれて。
悟浄のアップが迫って、反射的に目を閉じた所に。
キスをされました。
外気のせいで、冷たく感じる悟浄の唇。
少しずつ、温かみを取り戻していくのが判ります。
合わせるだけの、可愛らしいキスで…。
「イタダキましたv」
本当に悪ビレしないんですから。
そんな嬉しそうな顔されたら、許してしまうじゃないですか。
まあ、取り敢えず。
足をぎゅっと、踏み付けておきましょうね。
「いてっ! ナニすんだよ、八戒っ!!」
「キッチンに運んで下さいね、悟浄。
直ぐに、作りますから。」
はい、二の句を告げなくなった悟浄を置いて。
僕は、軽い方の荷物を持って。
すたすたと、キッチンへと向かいました。
††††††††††
部屋ん中は、寒い外と違って。
湯気が立つよーに、ホカホカしてる。
クッションを敷き詰めて。
床の上にグラスとつまみの乗ってるトレイを置いて。
借りてきたビデオを雰囲気を出す為に、灯りを消して鑑賞中。
後ろ抱っこで、八戒を抱っこしながら。
初めは、形ばかりの抵抗はしてたが。
今は、すっかりと大人しく俺の腕に身体を預けてくれてる。
八戒の髪からは、イー匂いがしてさ。
俺は、繰り返し繰り返しkissをしてた。
八戒の匂いって、甘い…よな。
恋人だから、余計そー思うのかもな。
ビデオの内容は、昔の古い映画。
映像は白黒で、お姫サンが周りの目を盗んで。
外に飛び出して、恋をしてしまう話。
全くもって、俺の主旨じゃなく。
借りるビデオを物色してた時。
八戒が観たいって言ってたのと、タイトルが一緒だったんで。
そのまんま、選んできたシロモノ。
けど、最初っからちゃんと観てるんで。
きちんと、ストーリィは追ってる。
八戒も、画面から目を離さずに真剣に観てるしさ。
『Fin.』――ラストの表示が出て。
俺達は、身体の力を抜いた。
ヤセ過ぎ気味の、八戒の身体。
背が大して変わらないのに、どうしても華奢なカンジをウケちまう。
儚い、とまではいかねーけどな。
「悟浄。」
「ん?」
「今日はどうしたんですか?」
「偶には、家族サービスもイーだろ。」
「…家族サービスですか。」
後ろから抱き締めているんで、八戒の表情は見えなかったが。
ふわっと、花がほころぶよーな雰囲気が伝わってきた。
俺も八戒も、一般でいう普通の家族を味わったコトはない。
余所から見たら、俺と八戒は家族の定義から外れてるだろーけど。
「ありがとうございます。
とても、嬉しいです…悟浄。」
身体を俺に預けたまま、振り向いて笑う八戒を見れれば。
俺は、充分満足になる。
ナンで、笑い返して八戒へとキスをする。
しっかりと、抱き締めて。
家族の――恋人の――唯一のキスをする。
2004.9.27 UP
☆ コメント ★
marixxさまに捧げますv
リクエストを頂いて書いた
相互リンクのお礼のSSです(汗汗)
何とか仕上がりました
遅くなって、ごめんなさいっ
Hナシの、超甘々な58、という事で
頑張らせて頂きましたvv
イチャイチャは書くのが楽しいです〜(笑)
慎んで、贈らせて頂きますvv
モドル