花 風 *
by 遙か
吹き渡る風の 晴れの日の 拾い物
花の香りの いと小さき 愛しきもの
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今年は台風の当たり年で、朝の天気予報チェックと傘が欠かせなかった。
昨夜も凄い雨風&雷で、外に出ると。
飛んできたもん、ぶっ倒れてるもんと、酷い有様だった。
ただ、台風一過で。
綺麗な青空が広がっていた。
取り敢えず、晴れたから大学へ行くかと。
ゴミ出しの日なので、ゴミ袋をゴミ集積所にポンと置いた時だった。
「みぎゃん!!」
ブザーを押したかの様に、ネコの声が――ネコ?
続けて、耳を塞ぎたくなる様な。
「みゃーん、みゃーん、みゃーん!!!」
と、自己主張の鳴き声が。
あー、一体どこだと見渡してみると。
俺が置いたゴミ袋の下から、尻尾が飛び出していた。
「ここか…。」
ひょいと、ゴミ袋を退けると。
そこには、小さなクロネコが一匹…いた。
デカイ緑色の目が泣いている様な。
俺を睨んでいる様な。
「みゃあっ!」
「済まん済まん。そんな怒るな。
態とじゃいなんだぞ。」
首の所を掴んで、持ち上げると。
余りにも、小さくて…軽くて、吃驚した。
「お詫び代わりに、ミルクでもやるから許せ。な?」
大学は休みと即座に決めて。
俺は踵を返し、アパートの部屋へと戻った。
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「ん。どうした、腹減ってるだろ?」
小皿にミルクを入れて、目の前に置いてやったんだが。
口をつけず、じっと固まってしまっている。
心なしか、まだ睨みが続行している様な気がする。
「そんなに警戒するなよ。」
頭を撫でようとしたが、その手にもビクッと身を竦められてしまった。
…参ったな。
俺は苦笑しながら、立ち上がった。
「俺は向こうに行ってるから、ゆっくり飲めな。」
これ以上、驚かさない様に。
普通に声を掛けて、俺は隣の部屋へと移った。
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さて、レポートでも片付けておくか。
今更、大学に行く気にもならないしな。
大体、あの子ネコの事が心配で行かれない。
よく、昨夜の台風の中で無事でいたものだ。
…首輪はしていなかったが。
親ネコとはぐれてしまったのだろうか。
可哀想に。あんな、ちっこいのに。
俺、ネコ好きだから、このまま飼ってもいいんだが。
あんなに警戒されてたらなあ…さて、どうするか。
うーーーんと、背伸びをしたとこで、足元から『にゃ』と声がした。
見ると、ズボンの裾に爪をかけて、ツンツンと引っ張っている。
「どうした?」
「にゃあーっ、にゃあーっ。」
何かを訴えている様で、屈み込んでみる。
ふと、さっきまでの警戒心が無い感じがして。
そおっと、掌を差し出してみた。
すると、右の前足の爪を引っ込めて、ポスンと乗せてきた。
おv
「機嫌直してくれたか?」
「にゃあ。」
「腹は膨れたか?」
「にゃあ。」
おや? 会話が成立…してるよな。
「俺の言ってる事が判るのか?」
「にゃあ。」
「利口だな、お前。」
「にゃんv」
ずっと屈んでいた姿勢が、辛くなってきた。
俺は子ネコの身体を両手で包んで抱き上げた。
…ああ、やっぱり、ちっこいなあ。
俺の手の方が、大きいよなあ。
「なあ。」
「にゃあ?」
「良かったら、ここに住まないか?
俺は一人暮らしだから、何の気兼ねもいらないぞ。」
「にゃん!」
目玉がくるんと丸く大きくなって、騒ぎ始めた。
これは、OKって事だよな。
そうすると…。
「名前を決めないとな…『チビ』で…どうだ?
そうそう、俺は『捲簾』っていうんだ。」
手の中で、一生懸命に動く柔らかい温かみに、俺は嬉しくなり。
これから宜しくな、の意味で。
子ネコにkissをした。
―――ポンッ! ―――ドッスーン!
急に腕が重くなり、その重みに耐えきれず。
俺は座っていた椅子ごと、後ろにひっくり返った。
「チビっ、大丈夫かっ?」
「…あの、僕、もう『八戒』って名前があるんです。」
「ネ、ネコは?
さっきまで、俺が抱いていた子ネコは?」
「それが、僕です。
…僕、好きになった人にkissされると…少しの間だけ人間になってしまうんです。」
俺は子ネコから変身した『八戒』と名乗った男の子を。
身体の上に乗っけたままの状態で、フリーズした。
「あの…ネコじゃないと、駄目…ですか、捲簾さん?」
子ネコの時と同じ大きな緑の目で。
真っ直ぐに見られて――駄目なんて事はないが……。
この今の体勢。
一体、どうしたらいいんだ、俺は。
なあ…八戒。
2004.9.30 UP
☆ コメント ★
いづるさまに捧げますv
いづるさんのサイトの3周年記念のお祝いに
贈らせて頂いたお話ですv
以前、極甘の捲八でとリクエストはあったので
じゃあ、それで書こうと決めたのはいいのだけど…
あら? 思っ切り外している様な〜(汗)
けど、いづるさんは喜んでくれたから
ま、いっかvv という事で〜(笑)
慎んで、贈らせて頂きますvv
モドル