林檎



by 遙か



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人の恋路を邪魔する奴は…馬に蹴られて死んじまえ
と、いう諺に
そっくりそのまんま、弾付きで返してやろうかと
最高僧が思ったのを
誰にも止められない…と思います

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「悟浄。
 お風呂から上がったらちゃんと髪を乾かさなきゃ駄目ですよ。」
「ん――そのうち、乾くって。」
「駄目です。風邪引いちゃいますよ。
 いつも、言っているでしょ。」
「だーって、面倒くせーモン。」
「ほら、タオルを貸して下さい。
 拭いてあげますから。」
「やったv」
「はい、ここに座って下さい。
 じっとしてて下さいね、悟浄。」
「はーいvv」

良い子のお返事をした悟浄の髪を。
タオルを持った八戒の手が、丁寧に拭いていく。
慣れた手付き、慣れた手順で。
それは、本当に効率良く。

八戒が口元に、微笑みを浮かべている。
悟浄は、気持ち良さそうに目を閉じている。
2人だけの、いつもの日常が。
そこに空間を作っていた。自然な流れで。

まあ、当事者達はそれで良いのですが。
堪ったもんでないのは、随行している残りの2人でしょう。
多少は目を瞑るでしょうが。
この先、この旅の間中。
この状態は、基本は変わりませんが。
パターンを変えて、目の前にドンと据えられるのは。
考えなくても判ります。

何しろ、今日は旅立って第一日目の夜。
隠す気もなく、堂々との方がまだマシかもで。
何しろ、万年新婚さん夫婦のお2人は。
単に、いつも通りというだけで。
意識している訳では、無いのですから。

どんなに、端から見たら。
イチャイチャを見せ付けられてると、思われていても。
自覚が無いというのは、恐いものです。

「…三蔵〜。」
「――寝るぞ。」
「う、うん。」
「あ。おやすみなさい、三蔵、悟空。」
「おっやすみ〜、年寄りとガキは早寝しな〜。」

何かを言うのも面倒臭く、三蔵が悟空を伴って。
自分達用の部屋へと、行こうとした瞬間。
八戒の、お邪魔虫は眼中に全くない、今気付いた様な挨拶も。
悟浄の、優越感を含んだニヤニヤとした言い方も。
三蔵の血管を刺激するには、充分でした。

「お前等っ、いい加減にしろっっ!!」
「さ、三蔵〜。」
「三蔵?」
「あら、三ちゃん、アノ日?
 イライラは身体に良くねーぞ。」

思わず怒鳴ってしまった、三蔵の声に。
悟空の焦り声。八戒の天然に判っていない声。
悟浄の神経逆撫での声――の、三重奏に。
三蔵は、思わず眉間に手を当てて視界を遮りました。

「……寝る。」
「俺も寝るよ。おやすみ、八戒、悟浄。」

お祖父ちゃんの手を引く孫の光景の様に。
三蔵と悟空は、部屋を出て行きました。
そして、残された新婚夫婦は……。

「どーしたんだ、三ちゃん?」
「さあ? どうしたんでしょうね。」
「初っ端から、あんなに疲れてたらこの先大変じゃん。
 年寄りは無理しねー方がイイじゃんなあ。」
「そうは言っても、三仏神から直々に依頼された訳ですから。
 行かない訳には、いかなかったのでしょう。」
「年寄りの冷や水になんなきゃイーけどね。」
「だから、それを僕達でフォローしてあげましょう。
 ねっ、悟浄。」
「そーだな、八戒。」

見事な大曲解。
ここまでくれば、天晴れと言えますが。
最高僧様のお耳には、入れられません。
……何が起こるかが、見えてしまって。
とてもじゃありません……。
くわばらくわばら(笑)……。


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「さあってっと。
 お邪魔虫2匹が居なくなったコトだし〜八戒v」
「はいはい、悟浄。」
「今のうち、イチャイチャしとこーぜvv」
「ええ、悟浄。」

悟浄の腕に、その細腰わ引き寄せられて。
八戒はにこりと、微笑みました。
グリーンの瞳の中に、恋人の紅を映して。
先ずは、キスからと………。


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どうも、イチャイチャのラインがずれている2人らしいですね。
さてさて、始まったばかりの西への旅。
一番の不安要素は、外の敵ではなく身内にありそうな(笑)。



2004.10.13  UP



☆ コメント ★


中曽根さま&堀江さまに捧げますv

お2人に頂いたリクエスト
「三蔵と悟空がめげる程のイチャ甘
 〜西への道中編」です(笑)
もう、思いっきり楽しんで書かせて頂きましたv
悟浄と一緒に、三蔵に弾を撃ち込まれても
悔いの無いくらいに(大笑)


ではでは、慎んで贈らせて頂きます♪




モドル