永久 〜 tokoshie




by 遙か



『なんだっていいんです…』

ポツリと零された言葉には
諦めとか 哀しみとかは なくて
素直な愛おしさだけが ひたひたと広がってゆく

≪ ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ≫


「ケン兄ちゃん、天ちゃん、おやすみっ!!」

小さな悟空が、大きく手を振るのに。
僕は小さく手を振り返して、見送りました。
金蝉が後ろ手にドアを閉めると、再び部屋の中には。
静寂が戻って来ました。

捲簾と2人だけに、戻りました。

「…少し、寝とくか?」
「眠い、ですか?」
「いーや、全然。」
「僕もです。」
「じゃ、起きてっか。」
「ええ…。」

勿体なくて、眠れないんですよ。
目を瞑ってしまったら、貴方の姿が見られなくなる。
まだ…こんなにも貪欲に、僕は欲しがっているんですよね。
捲簾を。

掴めるものは、全て掴んでおきたいんです。
砂を集める子供の様に、ひたすら両手で…。
一つでも多く、一つも残さずに。
…欲しい、貴方が。

一人で生きるのは、楽でした。
けど、2人でいるのが楽しいと、教えられました。
後ろを預けられて、横に立つ事が自然となり。
息を楽につける、唯一の存在。

ああ、でも。
初めっから、こうだった訳じゃありませんよ。
数え切れない位、衝突して。
縁を切ろうなど、何度思った事でしょう。

思い通りにならないのが、口に出せず悔しくて。
その反面、新鮮で目が離せなくて。
『大馬鹿』って、いるんですね、って。
そうですよ。貴方ですよ、捲簾。
貴方しかいないじゃないですか。

こんな事をしでかして、全然反省の欠片もなく。
煙草を噴かしている人なんて。

笑っちゃいますよ。嬉しくて。
貴方の『馬鹿』に付き合えて。
謀反人の片割れにして貰えて。

先が見えてても、僕を一人安全圏などに置いていかないでくれて。


愛しています、捲簾。
一蓮托生でも、毒を食らわばでも…何でも。
貴方の優しさで、突き放さないでくれて…ありがとうございます。

貴方の居ない場所に、意味はありません。
勿論、未練も。
長く長く凍っていた僕の時間を動かしたのは。
貴方ですから、一緒に行きます。

ええ、どこでもいいですよ?
後悔なんてしません。
後からするものだったら、貴方がさせなければいいんです。
それ位の手間は、掛けて下さい。
ちゃんと、貴方の傍にいますから、僕は。

ええ、最後まで…。


≪ ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ≫


隣でタバコを吸いつつ、ぼんやりとしている天蓬の横顔を。
盗み見る。
考え事をしていると、無心に天蓬はタバコを吸う。

色々、考えてんだろうなあ。
本当に、色んな事をさ。
今の状況に付き合わせて悪かったと、口にすれば。
無言でデコピンが飛んでくるだろう。

『馬鹿ですね、貴方って』って、台詞付きで。
『僕は自分で決めたんですよ』って、本音を隠してくれながら。

判ってんだよ。天蓬がそう言うのは。
けど、それでも悪いって思っちまうのは、俺がバカだからで。
喜んでしまうのは、俺が天蓬に惚れてるからだ。

置いてくのも、置いてかれるのも勘弁だ。
離れる気がねえんだ。
だから、連れてく。どんな所だろうと、な。

こんな風にころころと、俺は弱気になったり強気になったり。
内側は葛藤を続けていた。
これから、どうなるかなんて本当は判んねえ。
いくら、シミュレーションを想定しようが。
それは、仮定だ。
西方軍が誇る元帥にも、見えない部分だ。

確定なものは、誰にも見えない―――――

そして、俺は足掻く。天蓬と一緒に、な。
どんなに格好悪くとも、滑稽であっても。
俺は、俺の欲しいモンを手放さない。


「…なあ、天蓬。」
「はい、何ですか。」
「お前さ、マジ、覚えてねえの。」
「何をですか。」
「初対面ん時。」
「ああ…ええ。」
「俺との初体験ん時のは。」
「それは覚えてますよ。いくら何でも。」
「あー、良かった。これまで覚えてねえって言われたら、凹むぞ。」
「あれだけ痛い目に合わされたのは、後にも先にもあの時だけですから。」
「そんな痛かったか。」
「ええ。何しろ初体験でしたから。」

ひょいと、天蓬を見ると俺を見ながら笑っていた。

「俺も初体験だったしな。」
「そうですか。でも…忘れませんよ。」
「ん。忘れんなよ。」
「はい。」

小さく、それでも嬉しそうに返事をする天蓬の肩を抱き寄せる。
見つめる距離が近くなり、目で笑い合った後。
口吻けた。


俺はこいつを見つける。
こいつも、俺を見つけるだろう。
この確信だけは、揺るがない。

離れない――お前から――天蓬
愛しているからな………



2005.12.01  UP



★ コメント ★

WARDを読んだ結果の暴走して出来たお話ですv

何何、あの2人は!
零寒の悟浄と八戒の会話とリンクしてると思ったのは
私一人だけじゃないと、思ってるからねっ!(ぜいぜい)

↑と、これ位興奮してしまい位、キましたね〜(笑)
もう、2人がいてくれれば良いです、ホント

さて、このSSは既にお手付きが入ってます(笑)
某氏、風呂敷の用意はいいかな?
はい、持ってけ〜(笑)




モドル