White Love




by 遙か



降り注ぐ 雪の白
音も無く ただ無心に
淡く 触れると溶ける その儚さを

お前は その眸に どう うつすのだろうか

     ††††† †††††


下界への出撃が。
思ったよりも簡単に済んだので、責任は自分達が取ると。
勝手に休暇と称して、部下達に二日間の自由を与えて解散させた後。
その軍の大将と副官は、姿をくらませました。
誰にも気付かれずに。

それは。
下界に初雪の降った、クリスマスイヴの夜の事でした。


戦うという事は、精神に異様な興奮を呼び起こします。
普段を軍人として、それなりに訓練をしていても。
実践となった時の高揚感は、口では説明出来ないのです。

それは、捲簾も天蓬も例外ではなく…。


     ††††† †††††


とある場所の、鍵の掛かった部屋の一つのベッドの中で。
2人は眠りに就いていました。裸身の儘で。
捲簾の腕は、天蓬の痩躯を抱き締め。
天蓬の身体は、捲簾の腕に満足そうに収まっています。
一対でいられる時間を掻き集める様に。

刻は、深夜。
天蓬の眠っていた眸が開かれました。
小さな小さな気配を感じ取り、そこへと目を向けました。
暗闇の静寂の中、カーテンのほんの隙間に。
外から、白い光が入り込んできていました。

『何でしょう…あれは。』

何となく胸が騒いだ天蓬は、捲簾の腕から抜け出し。
落ちているシャツを一枚拾い上げ、窓際へと近寄りました。

『あっ! 雪が…降ってきていたんですね。』

夜の黒と、雪の白。
美しいコントラストが、窓の外を見事に飾っていました。
全ての深い眠りを守る様に。


「おい、天蓬。」

外に魅入っている天蓬の背中から、捲簾が包む様に抱き締めました。

「どうしたんですか、捲簾。」
「どうしたは、こっちのセリフ。風邪引くぞ。
 そんな格好で、ボーーッと立ってたら。」
「ボーッは、余計です。
 それにシャツも羽織っていない貴方に、格好の事を言われてもねえ。」
「俺は平気だ。こうしてお前を抱いてればさ。」

途端、更に躰を密着されて、シャツ越しにお互いの体温を感じ合いました。

「調子がいいんですから。」
「ああ、いいぞ。」

力強く抱き締める捲簾の腕の中で、天蓬は嬉しそうに力を抜きました。
唯一、素の儘でいられる場所。失いたくない場所で。

「捲簾。」
「ん?」
「雪です。」
「雪だな。」
「綺麗です。」
「綺麗だな。」

天界では見る事のない光景を。
今度は2人で見つめ始めていました。
すると、そこで――くしゅん!
冷えている空気に、天蓬が思わずくしゃみをしてしまいました。

「…天蓬。」
「はい?」
「お前でもくしゃみをするんだなあ。」
「はい? 何を言い出すのかと思えば。
 僕だって、くしゃみのひとつやふたつしますよ。」
「済まん済まん。」

呆れた顔で振り返った天蓬に。
捲簾は、それは嬉しそうな顔で口吻けました。
出逢った頃に比べて、感情を遠慮なく出す天蓬が愛しくて。
他人に対し、いつも薄いベールを纏い距離を置き。
決して、一定以上に踏み込ませない元帥が。
自分にだけは、無意識に許容する。

その想いが、抱き締める腕に力を込めさせました。

「…捲簾、苦しいです。」
「我慢しろ。」
「勝手なんですから。」
「お前程じゃない。」

小声で囁き合って、目で笑い合って。
今度は、貪り合う為の深いキスへと移っていきました。


     ††††† †††††


シーツの上に、自分と覆い被さってくる相手の重みをうけて。
沈み込む。
ゆっくりと、撫で上げられる首の線。
噛まれる鎖骨への、小さな痛み。
鼓動を早めてゆく心臓は、一体どっちのものなのか。
肌と肌を密着させて、汗を混じり合わせる。

「け……ん、れ…。」

熱く息を吐いて、名前を呼ぶ唇を塞がれ。
再び、躰の中に熱を吹き込まれる。

「…てん、ぽぅ……俺、の。」

焦らす優しいキスの合間に、大きな掌に欲望を掴まれ。
性急に扱かれる。
切れ切れの、甲高い声。
嬌声が上がり、白い腕が。
堅さを持つ背中を抱く為に、持ち上がる。

躰のあちこちを隈無く愛撫され、意識を快楽に流しながら。
自ら、脚を大きく開き。
最奥の窪みを丁寧に、指で…舌で解される事に。
髪を振り乱す。

脚が高く抱え上げられた次の瞬間に、苦しい程の圧迫感と共に。
楔が打ち込まれる。
息の仕方も忘れ、衝撃に目を見開いて。
理由の判らない、涙を零す。

うねりを上げる、血の脈動。
バラバラになっていく錯覚を起こす、躰への律動。
一番の奥に入り込んでいる満足感と。
銜え込んでいるという、充足感。
引き千切りたいのか。壊したいのか。
見境のなくなった、狂気にも似た熱を。
2人同時に、吐き出して―――――

     …アイシテマス
     …アイシテル

一つの言葉を与え合って、眠りに就く。

その呟きを聞いたのは。
しんしんと、舞い落ちる粉雪だけ…。


          メリークリスマス☆



2005.12.25  UP



★ コメント ★

捲簾と天蓬のクリスマスなお話ですv
BGMはSPEEDの【White Love】なのです
え? どこがどうしたらですか?
腐女子の脳内では、こうなるのです(笑)

では、皆様、素敵な聖夜をお過ごし下さいませ♪




モドル