少女の決断


by 遙か



女性の躯に、何故だかなってしまってから。
戻る気配もなく、時間だけが過ぎて。
多少、自分なりにも、この躯に馴染みだしてきているんです。
それは、別にいいのですが。
僕としては、ちょっと、他の事…。
ええ、悟浄の事がとても、気になっていて。

どうやら。
悟浄が一番、僕の女性化に戸惑っているみたいで。
最近、ちっとも傍にいてくれないんです。
本人、何気なさを装っているらしいのですが。
バレバレですよ。
僕の事を避けているのが。
そのくせ。
僕が1人で買い出しにでも行こうなら、凄く怒るんですよね。

『危ないって言ってんだろっ!
どうして、お前は俺の言うコトが聞けないんだっ!!』

あのですねえ。
ずるいですよ。
ちっとも、構ってくれないのに。
そんな頭ごなしに怒るなんて。
僕だって、拗ねる時があるんですよ。
但し、貴方限定ですけどね。

『危なくなんてありません。
いつも、してる事なんですから。
それに、僕が行かなかったら誰が行くんですか。』

ほら。
ぐっと、詰まって。くすくす。
そんな風に睨んでも、平気です。
悟浄の方が、分が悪いのは明らかですもの。

『それとも、悟浄。
一緒に行ってくれますか。』

するりと、悟浄の腕に。
僕は自分の腕を絡める。
女性化したせいなのか、僕の背は縮んでしまっていて。
悟浄を見上げてしまうくらいの大きさしか、今、ないんですよ。

『悟浄、お願い出来ますか?』
『あっ…ああ。』
『ありがとうございます。』

えいっ、と。
このまま。
悟浄の腕に、ぎゅっと、しがみついてしまいましょう。
だって。
世にも珍しい、悟浄の真っ赤な顔が見られるんですよ。
こうすると。ふふ。

『じゃじゃ…い、行くかっ、は…八戒。』
『はい、悟浄。』

なんだか、とってもとっても楽しくて楽しくて。
僕は悪戯心を込めて。
悟浄へと、全身を擦り寄せた。



はあ〜。
八戒が女化してから、俺様。
一体、幾つのの溜息を付いたコトか。
別に、な。
俺は八戒が好きだから。
男でも女でも、全然、構わないっちゃあ、構わねえの。
でもな。
今の八戒ってばよ。
女ってゆーより、女の子ってカンジなんだよ〜。
美人は変わりないが。
メッチャ、可愛い。
マジ、可愛いっ。
八戒の癖の一つで。
小首を傾げるってゆーのが、あんだが。
これを今の八戒がすっと。
ちょこんとしてて、幼いカンジになって、抱き上げちまいたい――衝動に駆られるんだ。

これって、一種の犯罪だと…思う。
超・凶悪。
超・つれえのなんのって。

傍にいっと、何しでかすか、自分に自信がねえから、距離をつくっちまうだろ。
そうすっと、何が気にいんないんだが。
ふらふらと、1人で出掛けようとするしさあ。
目が離せねえの。危なっかしくて。
はあ〜。

『悟浄。』

俺のコトを呼ぶ、八戒の声。
しっかりと、俺の右腕にしがみついて、微笑んでいる。
何で、こんなに可愛いのかなあ。
八戒だからだよなあ。
と、見取れていたら。

『雨です、悟浄。』

もう、宿も近かったから、そのまま突っ走る。
荷物を抱えて直して、八戒の手を握って。
俺の方へ引き寄せて、雨から守る様に。
降り出した雨の中を俺達は、走り出した。



2001.5.8



☆ コメント ☆

はい、今日は58の日です。
そのお祝いの話です・笑。
で、選んだ題材が、女の子・八戒。
小悪魔・八戒ちゃんですね。
私の頭は、腐ってる〜・笑。
だって、可愛いんだもん。
悟浄にだけ、我が侭言ってるのが、可愛いんだもん。
一応、これは、悟浄たじたじVer.です。
これからも、色んなVer.で、女の子・八戒を書いていこうと野望しております。
何か、リクエストがありましたら、どうぞ、してやって下さいませえ。
いつでも、受付中でーす。