オフ・ホワイトのバスタオル


by 遙か



よっこらせ、っと。
力の抜けている、柔らかい躯を抱き直す。
乾いた。
大きな。
白いバスタオルに、包んで。
どうやら、完全に湯当たりだな。
顔の赤味が、引かないし。
息も苦しそうだ。

「大丈夫か?」
「…………。」

翠の色した大きな瞳が、オレを見るが。
小さめの、今は色を濃くしているピンク色の唇が。
何かを言いたそうに、動きかけ…きゅっと、閉じられた。

「苦しいか?」
首が横へと振られる。
「暑いのか?」
こくんと、縦に頷く。
「分かった。
 今、水を持ってきてやる。」
リビングの大きなソファの上に。
そっと、その躯を横たえてやる。
「ちょっと、待ってろ。
 なっ。」

ウィンク、ひとつして。
オレはキッチンへと向かった。



大きなガラスのコップに、不揃いの塊の氷をガラガラといれて。
それから、なみなみと水を汲んで。
オレは、リビングへと戻った。

「持って来たぞ。」
返事がない。
慌てて、近寄ると。
本当にぐったりとしてて、辛いのだろう。
息が、さっきより弱々しくなっていた。

「ほら、水だ。」
どうやら、起き上がる力が出ないらしい。
瞼がぴくっと動いたから、意識はあるのだろうが。

「起こすぞ。」
片腕で、躯を起こしてやり。
もう片方の手で、顎を取り、唇を軽く開かせる。

「水、だぞ。」
ゆっくりと、少しずつ。
口移しで、水を飲ませた。
こくりと、咽が鳴る。

「慌てると、噎せるからな。」
 もう一度、飲ませると。
水を認識したらしく。
もっと、欲しいとばかりに。
唇が自ら、開いてきた。

「もっと、か?」
こくこくと、首が縦に振られる。
細い指が、オレの胸元のシャツを握り締めてくる。
長い睫毛が、揺れているのが。
すっげえ、可愛いっ。
何か、雛が親鳥を求めているみてえ。
こーんな、可愛い仕草されたら。
オレの方が、逆上せそうだ。

何度も、繰り返し、水を口移す。
八戒が、求める分だけ。
オレは何度も、八戒に水を与え続けた。



「落ち着いたみたいだな。」
「……………ええ。」

頬の赤味が、だいぶ、引いて。
呼吸も、落ち着いてきた八戒を。
膝の上に抱きながら。
オレは、八戒の髪を撫でてやっていた。

「良かったな。」
「………ありがとう、ございます…悟浄。」
「八戒。」
「はい?」

今度は、水なしの、純粋な。
キスを――オレは八戒に、した。



2001.6.30  UP



★ コメント ☆

【紅頭巾】シリーズbRです。
いつの間に、シリーズになったんだろう?
不思議、だわ・笑。
さて。
お風呂上がりの話。
魚住さまが、お風呂上がりのほこほこのトコロをぱっくりと、と。
私の妄想を刺激してくれたので。
じゃあ、まずは、初めの一歩――Kissからね。
って、もうラストまで、やってるじゃんっ! ←一人ツッコミ……。
いいや。
ここで、書きたかったのは。
悟浄にしがみついて、水を欲しがる八戒だったからvv

では、ご意見・ご感想・リクエストをお待ちしてまーす。