グリーン・アスパラとサラダボウル
by 遙か
「ちゃんと、乾かさない、とな。」
「は、はい。」
そう、答ながら。
僕は、凄く、困惑していました。
お風呂上がりの、まだ濡れていた頭とかを。
乾いたタオルで、大雑把に拭かれた後。
今度は、ドライヤーの温度をクールで。
ずっと、大きな掌と一緒に。
ぱさぱさ、と。
丁寧に。
耳が終わったら、しっぽを。
乾かされて…いて。
「よし、出来た。」
「…あ、ありがとうございます。」
「ん――可愛い。可愛い。」
そう言って、僕を真っ正面から、見つめてくるのは。
昨日、出会ったばかりの、この森に住む。
紅頭巾の悟浄さん。
どうして、こんな状況になっているのか。
どうして、こんなに面倒をみてもらっているのか。
今、頭がぐるぐると、パニックを起こしていて。
どうやって、掴めばいいのか。
僕には、全く分かりません。
でも――。
「腹、減ったろ。」
あ、確かに。
お腹…鳴ってる。
「オレが作っていいか。」
「えっ。」
「台所、借りていいか。」
「は、はいっ。」
「じゃ、ちと待っててな。」
ぽんぽんと。
頭を二つ撫でられて。
僕は、ぽかんとしてしまいました。
完璧な子供扱いなのに。
何故だか、ちっとも、嫌ではなくて。
「好き嫌い、あるかあ。」
「いえ、ないですう。」
突然の質問に。
僕は反射的に、同じ大きさの声で返事をしていました。
自然に。
「ど?」
「美味しいです、本当に。」
「そっか。」
悟浄さんが作ってくれた朝食は。
蜂蜜のたっぷりかかったトーストと。
半分、牛乳の入ったコーヒーと。
形が壊れちゃってる双子の目玉焼きと。
大雑把にボウルに入っているグリーン・アスパラのサラダ。
お世辞じゃなく、本当に美味しくて。
ああ。そう言えば。
ここに来てからずっと一人で食事をしていたんですよね。
やっぱり、食事は一人じゃない方がいいですね。
一人で頑張るつもりで、この森に来たけれど……。
「八戒。」
「は、はい、何でしょう?」
「あのさ、オレ、ここに住んじゃダメか?」
「え?」
「オレ、妾の子だから家に場所なくてさあ。」
「……………。」
「それに、何より、お前と一緒にいてえなあって。
ダメか?」
僕はぶんぶんと、横に首を振った。
悟浄さんって辛い立場だったんだ。
でも、同情なんて失礼ですよね。
それに。
僕もさっき、ちらりと思ってしまったんですもの。
一緒に居られたらって。
「いいのかっ。」
「悟浄さん、さえ良ければ…僕は……いいです。」
テーブルをガタンと鳴らして。
勢い良く、聞いてくる悟浄さんに。
僕は、はっきりと、返事をしました。
悟浄さんの嬉しそうな顔で。
僕も嬉しくなりながら。
2001.7.6 UP
☆ コメント ★
だ、騙されているぞっ、狼さん。
紅頭巾がそんな殊勝な立場に甘んじているものかっ。
と、いうことで、【紅頭巾】シリーズbSです・笑。
とうとう、いついちゃいましたねえ〜。
公認で〜。
うぎゃっ。
しくしくしくしくしくしく……。
ところで、ここの森の住人って、いいなと思いません?
私は…そうだなあ、と考えまして。
昼はリス、夜はモモンガにしました。
理由→デバガメするのに、適役だと思って。
この森の住人になりたい方、が万一いらっしゃいましたら。
何の動物で、その理由を書いて、メールでもカキコでも、送って下さい。
種類が重なっちゃても、構いませんよ〜♪
ご応募、お待ちしてまーすvv