天の水



by 遙か



「天蓬?」
「――ああ、捲簾ですか。」
「ああ、じゃねーだろう。
どーしたんだよ、灯りも点けねーで。」
「ちょっとね、ぼんやりしたくて…。」

そう言って、天蓬は再び、視線を窓の外へと移した。
天界の夕暮れ。
薄闇の、頼り無い光に彩られた、部屋の中。
いつものスタイル。
白衣で、煙草を燻らせて。
天蓬は窓際へと持ってきた椅子に座り、外を見ていた。
そこへ、別に用事はないが、捲簾が顔を出したのだった。

「捲簾。」
「何だ?」
「アレ、知ってます?」
「知らね。」

天蓬が指差したのは、外に置いてある笹。
ただ、笹だけではなく、色紙かなんかで、飾り立ててあった。

「何だ、アレは?」
「僕が下界から拾って来た物なんですけどね。
七夕の笹飾りって言うんですよ。」
「七夕?」
「ええ。
ほら、紙がひらひらしてるの分かります?」
「ああ。」
「あれにね、願い事を書いて、笹に吊すんです。」
「吊して、どーすんだ?」
「願い事が叶う様に、祈るんです。」
「はあ?
そんなコトして、どーすんだ?」
「縋るんですよ、どうにも出来ないから。
神に。」
「ふ〜ん。」

気のない返事をして。
捲簾は、天蓬の座っている場所の横へと立つ。

「オレ達も、どっしよーもナイことだらけだってのに。」
「ええ、本当に。」

捲簾が、天蓬の顔を覗き込む。
天蓬が、捲簾の肩へと手を伸ばす。
ゆっくりと、唇が重なっていく。

「どうにか、なることしないか?」
「ええ、しましょうか……。」

焦燥なのか。
虚無なのか。
それでも、腕の中の躯は。
熱くなるから。
口吻けを深めて…今に、2人は没頭していった……。



2001.7.9 UP



★ コメント ☆


3003番のキリリクです。
いちご様、リクエストをありがとうこざいましたv

外伝の2人で、シリアスで、七夕で――とのコト。
【済みません、少し遅れてしまって・泣】
頑張ってみましたが、如何なものだったでしょうか。
いちご様に捧げますので、どうぞ、お受け取り下さいませませ。

まだ、八戒受けに嵌ったばかりとのコトでしたよね。
これから、どうぞ、仲良くして下さいねvv