きみがくれたもの



BY 遙か




夏が終わる。
日が、短くなり。
空が、高くなり。
ふと、暑さではなく、涼しさに気付く。
そして。
あなたが、居る。
居てくれる、ことに気付いてしまう。
…気付かなければ…良かったのに。
…気付いてしまえば…好きなのを。
……………認めて、しまうから。


「八戒。」
「悟浄?」
「買い物か?」
「ええ、もう帰るところですけど。」
「じゃ、一緒に帰るか。」
「お仕事はいいのですか?」
「ん、いいや。今日は。」
「偶には、ですか?」
「そ。偶には、だな。」

悟浄の手が、八戒の荷物を一つ持つ。
八戒の首が、軽く揺れて感謝を表す。
空の青に、夕焼けの朱が深く染まり始めていて。

「明日も、晴れですね。きっと。」
「そうだな。洗濯モンが乾くってか。」
「そうです。気持ち良く乾きます。」

意識はせず、歩くスピードを合わせて。
2人は、帰り道を歩いて行く。
2人で、暮らし始めて、最初の夏。
一日一日を。
単調に。
笑って、喧嘩して、嬉しくて、意地を張って。
その時の、最高の思い出を幾つも、共有している。
出逢った時。その後の様々な時。生きるコトを決めた時。
そして、再会した時。
未来は、いつも見えないけれど。
現在は、いつも傍にあるから。

「今日、ナニ?」
「春巻きと空豆の冷たいスープ、ハルサメのサラダと。」
「あ、ハルサメのやつ、俺、好き。」
「杏仁豆腐。」
「ミカン、入れてな。」
「はい。」
「早く、帰ろうぜ。」
「ええ。」

陽が沈んでいく。
夏を惜しむかの様に、ゆっくりと――。



「悟浄。」
「ナニ?」
「呼んだだけです。」
「ソレだけ?」
「好きです。」
「俺も好き。八戒のコトが、好きだなあ。」

枕の白に、八戒の黒髪が広がる。
その首筋に、鼻先を埋めながら囁く。
愛したい気持ちと愛されたい心。
肌を触れ合わせるコト。
腕の中に閉じ込めるコト。
何もかも。
切ない気持ちと愛しい心。

「どうして、好きなんですか?」
「美人だし、可愛いし、何よりさ、八戒だし。」
「何ですか、それ。」
「簡単じゃん。八戒だから、俺は好きになったんだって。
違うか?」
「そう…です、ね。僕も、悟浄だから、好きになってますもの。」
「だろ?」
「ええ。」

後ろに纏めていた悟浄の髪が、一房落ちてきた。
八戒の頬を掠めて、毛先が小さく揺れる。
躰を重ねるコトの意味。
快楽の熱を分かち合うコトの意味。
指と指を絡め合って、しっかりと握り合う。

「誕生日、おめでとな。八戒。」
「不思議です。
あなたに言って貰える事が、こんなに嬉しいなんて。
ありがとう、悟浄。」
「来年も言ってやる。その次も次も次も…な。
十年後だろうが、百年後だろーが、ずっと言ってやる。」
「ええ、僕にも言わせて下さいね。――あなたの誕生日の日に。」


互いの腕の中の――小宇宙。
悟浄と八戒の、秘密の――。



2001.9.21 UP



★ コメント ☆

八戒、お誕生日おめでとうーーーーーっ!!

の、ひとつめのお話です。

シリアスしてます。
真面目にしてます。
(これが、ウチの本質なのよ・笑)

スキな人の誕生日って、とても大事な日ではないですか。
節目ってゆーか。
転機ってゆーか。
普段、言えないコトをこの日の為に大事に大事に取っておいて。
さあ。
いよいよってな、カンジで。
相手に贈っちゃう。

そんな、悟浄の心境で書き上げました・笑。


【BGM】

ZONE

secret base 〜君がくれたもの〜