接 吻
BY 遙か
「悟浄、最後にあれに乗りませんか?」
「ああ、いいな。」
八戒が指差したのは、夜の闇の中にネオンで浮かぶ、大きな観覧車。
一周するのに、15分掛かるというモノ。
夜の遊園地。
もう、閉園に近い時間なので、2人は待たずに。
多分、最終のに、乗る事が出来ました。
普段から、多忙な旦那さまの悟浄は。
ここ、2週間程、更に多忙になり、毎日の帰宅までままならず。
奥様の八戒が、気になって気になって仕方ナイのですが。
どうにもならない自分に対して、かーなーり、キテおりました。
そして、奥様ですが。
結婚する前から、してからの、旦那さまの溺愛のせいで。
自覚のナイ、寂しがり屋になっているのですが。
旦那さまに心配を掛けたくないの、一念で。
一人、留守番を我慢をしておりました。
そんな2人に、贈られたプレゼント。
旦那さまのお兄様より、贈られたモノ。
…いえね、一日一日、凶悪な顔になっていく弟が、鬱陶しいって訳じゃ御座いませんよ。
遊園地のナイト・フリーパスポート&ホテルの宿泊券。
会社のイベント用のモノでしたが、弟の為にと融通してきたそうです。
良いお兄様ですねえ。
「足元にお気を付け下さい。」
係員の言葉に、2人は素直に従い、丸い箱の中へと乗り込んだ。
かしゃん。
ドアロックの音と共に、かくんと揺れて、2人を乗せた箱が動き出す。
ゆっくりとした速度。
地上から離れていく、自分達。
区切られた窓からは、夜景が良く見えて。
2人は、暫く沈黙を守っていました――が。
「寒くないか、八戒。」
「ええ、寒くないですけど?」
「八戒、すぐ冷えちゃうだろ。ほら、手、冷たいぞ。」
膝の上に置いておいた両手が、悟浄の両手に包まれる。
悟浄の体温が、手の表面から、心の中へと浸透していく。
八戒が、ふわりと微笑む。
傍に居られる事が、実感出来る事の幸せを感じて。
悟浄にしか見せない、悟浄しか見られない、笑顔で。
「大丈夫ですよ、悟浄。」
「いいの。俺がしたいんだからさ。
な、させてよ。」
「ええ。」
誰も、代わりになどならない。
たった、ひとりの人。
愛しさで、胸が灼け付きそうになる事も度々あって。
子供の様に、理不尽な我が侭と凶暴な無邪気さで。
ひたすら――欲しくなる。
「寂しい思いばっかさせて、ごめん。」
「悟浄?」
「でも、俺も寂しい。八戒に毎日会えないのは、結構きつい。」
「僕も、です。」
八戒の返事に、悟浄の腕が伸びた。
がたんっ。
大きな音で、箱がバランスを失って。
かたかたかた……。
小さな振動で、元へと戻っていく。
悟浄が、八戒をきつく抱き締める。
八戒は、悟浄へと必死にしがみつく。
「…あっぶねぇの。恐かった、八戒?」
「いいえ、驚きましたけど。」
「八戒とだったら、一緒におっこちてもいーけどさ。
お前、残してくのヤだからさ。」
「僕もです、悟浄。」
抱き締めた腕の中。
抱き竦められた胸の中。
くすり、と。
瞳を合わせて。
互いを瞳の中に映して。
ただ、笑いあった。
何故。
こんなにもスキなのかが、分からない程の――。
スキ。
鼻先を掠め合わせ。
頬を擦り寄せ。
2人きり、ふざけて、じゃれあって。
ひたすら、戯れる。
そして――。
悟浄は、八戒を。
八戒が、悟浄を。
確かめる。
長く、甘い、接吻を交わして。
アイシテイルの言葉と……。
2001.9.27 UP
☆ コメント ★
8888のキリリクをGETして下さった煎奈さまへ捧げます。
『58遊園地デート(観覧車必須)で、甘々』
以上が、煎奈さんからのリクエストでした。
そして、【新婚さん】がお好きとのコトでしたので、
旦那さんと奥様モードで、書いてみました。
如何なものでしょうか?
兎に角、ここのお二人は何時までも新婚さんが抜けません。
これだけ、相思相愛で、あと何が欲しいのってくらいに。
甘〜い話なのです。
はい、砂吐いても構いませんよ。
私も、吐いてますから・笑。
BGMは、Oreginal Loveの接吻です。
これをリピートして、書き上げました。
機会があったら、聴いてみて下さいねvv
すっごく、Goodな曲と詞ですから。
それに嵌る様に、頑張りました。