勝ったの、だあれ?




by 遙か



悔しい――

悟浄と暮らし始めて、3年目。
擦った揉んだの末。
恋人同士なんて、関係に落ち着いてしまっている、現在。
悔しいと、思う。

元々が良い男の悟浄は。
時間が経てば経つ程に。
 更に良い男になってきています。
惚れた欲目だと言えば、そうなのですが。
それが、更に僕を悔しくさせて。
余計に憎たらしく、なってしまうのです。

「ん、何、八戒?」
「…浮気、でもしてみようかなって、言ったんです。」
「は? 浮気?
止めとけ、止めとけ、どーせ出来ねーくせに。」
「出来ます!
それより、あなたこそ出来ないでしょう?」

悔しくて、意趣返しのつもりで言ったのに……。

「うん、出来ねーよ、俺。
八戒にベタ惚れだもん。」

そう言って、テーブルに頬杖を付いていた僕の処に来て。
悟浄は僕の頬に一つkissを落としました。
突然の言葉と行動。
僕は、ボンと赤くなった自分が分かってしまいました。

「ほおら、出来ねえ。」
「出来ます。出来ます。出来ますっ。」

顔が真っ赤になっては、いくら反論しても無駄なのは分かっていますが。
勝ったって顔をしている悟浄が、憎たらしくて。
僕は、同じ言葉を繰り返してしまいました――。



なあに、小難しい顔してんだか。
シャワーを浴びて出て来たら。
八戒が、綺麗な眉をへの字にして、俺を睨んできた。
気付いてんのか――イヤ、気付いてねーんだろうなあ。
ホッペタが少し膨らんで、唇が不機嫌そうに軽く尖ってるなんてさ。
ホントに、些細な変化。
分かるのは、俺様ぐらい。
八戒の感情の起伏は、本人がほぼコントロールしてっから。
表面に出るなんてコトはない。
だから、これは優越感。
俺だけの、八戒に対する優越感。
八戒は、俺のモンだから。
俺だけのモンだから。
誰にもやんねえ。
そんなニヤけてたトコに、八戒がポツリと何か言った。

『は? 浮気だって?
そんなの出来る訳ねーじゃん。』

俺の返事に、眉尻を上げて八戒は反論してきた。

『あれま。
ムキになっちゃって、可愛いコト。』

これを口に出したら、どーなっかな?
もっと、ムキになるんだろーな。
そんでもって、真っ赤になって。
……可愛いっ……マジ、可愛いぞっ。

「悟浄の馬鹿っ!」

珍しくも、キャンキャン喚く八戒を抱き込んで。
俺は八戒の唇へとkissをする。

浮気なんかしてる暇なんかねーくらいの。
俺の本気の、八戒に――。



2001.10.11 UP



☆ コメント ★

久々のサイト用の書き下ろしのお話です。
58&捲天オンリー終了後。
予定の話は、リクもあるし、色々とあったのに。
突発的に書いてしまいました。
何か、書きたくなっちゃったの。
妬きモチ妬く、八ちゃんが。
ゴジョを喜ばすだけとは分かっているのですが。
もお、この2人はって。
カンジのバカップルの話をね。
ネタ帳につらつらと書いてしまったのですよ(^^;)
へへへ。
で、貴女はどっちが勝ったと思いますか?

それにしても。
ゴジョ、いーなあ・本音。
そお、思いません?