君の前でピアノを弾こう



by 遙か



ゆっくりと、辿られていく、指。
さっきまでの、性急な動きとは正反対の。
ひたすら、ただ、触れるだけの、優しい動き。

他人なんか、キライだった。
彼女以外、血の――ひとつの腹から生まれた、花喃以外は。
誰も好きになどなれなかった。
だから、彼女を奪ったこの世界など。
大キライだったのに。



「ど、落ち着いた?」
「…まだ、駄目…です。」
「きつくしすぎ?」
「えぇ…いくら、誕生日だからって…。」
「だあって、好きにしてイイって言ったじゃん、お前が。」
「…手加減と遠慮を…勉強しておいて下さい。次…までに。」

それは、無駄だと、悟浄は頭の真ん中で思った。
口にすると、直ぐに弱々しくもその綺麗な指が伸びて来て。
頬を思いっきり抓られるからだ。

「分かった、分かった。」
「……本当に、です…よ。」

返事はしておかないと、後がヤバイので。
相槌を打っておく。
が、八戒の目はしっかりと疑っていて。
悟浄は、クスリと。
八戒に分からない様に、苦笑した。

「八戒。」
「はい?」
「こっち。」

手を差し伸べると。
コロリと素直に、転がってくる。
腕枕をして、胸の中に引き寄せて。
具合の良い様に、調整する。



闇の中に、薄く発光する、白い躰は。
艶めかしいとか。
色気があり過ぎるとか。
まあ、堅くて筋張ってはいるけれども。
器も中身も、大変、好みで。
上限のナイ位に、愛し合っているから。
誕生日という特別な日には、甘えに甘えて。
甘え倒すのが、礼儀と言うものでしょう。
との、持論の悟浄の誕生日。

9日の0時から23時59分59秒まで。
丸一日、家の中、部屋の中、ベッドの中。
己の腕の中に、最愛なる八戒を抱いて。
来年の誕生日までの、この一年の幸せを。
満喫する、悟浄と。
自分の甘さに、溜息を付きつつも。
悟浄をアイシテイル八戒が。
眠りに付いたのは、さて、いつでしょうかね。



2001.11.9 UP



★ コメント ☆

悟浄、お誕生日、おめでとうvv

なあんか、こっちはサラリと書いてしまいました
@が、悩み悩み書いたのが信じられない位に
はいってな、カンジで・笑

スル前とかシタ後の話が、好きです
書くのも、読むのも
いえ、最中も、勿論、大スキですがね

2人だけの、濃密な、秘密をちと覗かせて貰ってるってゆーか
あはは
言葉ひとつひとつに、ドキドキしちゃうv

まあ、一年に一回の誕生日ですから
悟浄には、イイ思いをさせてあげました
さ・せ・て、だよ・笑