Virgin Eyes
D 〜 距離を縮めてく 〜
by 遙か
……………。
頭…が、痛い……。
でも…起き、ない…と。
講義に、遅れて…しまい、ます。
今。
何時で、しょう…か。
…ん、あれ?
今日…何曜日、だったかな。
……昨日。
…昨日は……。
そう。
花喃が、遊びに来てくれたっけ……。
そこまで考えた僕の思考は、ふわりと沈み。
一番下へこつんと着いた途端、一気に覚醒しました。
そうだっ。
あの男っ。
シャ・ゴジョウはっ?
ガパッと、飛び起きると。
目の前に広がるのは、絶対に僕の部屋でなく。
まさか、まだ眠っているのではないかと、頭を左右に振ってから。
もう一度、目を開けてみましたが。
やっぱり、そこには見知らぬ部屋なのは変わりませんでした。
「……ここ、は?」
今まで、僕が寝ていたのは、支柱の高い天蓋付きのベッド。
周りを見渡すと、品の良い室内装飾と調度品。
ただ、それは日本の物ではないと、直感出来てしまい。
嫌な予感に、僕はその先を考えるのを一時止めてしまいました。
『もしかして…ここって……。』
「あーっ、やあっと、起きたんだあ。」
不意に飛んで来た、元気な女の子の声。
驚いて、顔を上げると、扉の所にその声の主が。
ちょこんと、顔を覗かせていました。
「ずーっとね、寝たまんまかと思っちゃったよ、オイラ。」
にこにこっと、人懐っこい満面の笑顔と明るい声。
「ねっ、お兄ちゃんv」
「こらっ、言葉遣いが悪いぞ。もっと、丁寧にだ。」
「はーい、お兄ちゃん。」
声で、もう一人いた事に、更にびっくりしていた僕へと。
その2人は近づいて来ました。
「お目覚めになられたのですね。
ご気分は如何ですか?」
「気持ち悪いとか、なあい?」
「あの…あなた方は、誰なのですか?」
間抜けな質問だと、分かっていても聞かずにはいられません。
今の自分の置かれている状況が、ちっとも分からないのですから。
「済みません。紹介が後になりまして。
コウガイジと申します。八戒様。」
は、八戒様? それって、僕の事ですか?
「で、オイラが妹のリリン。
えっとね、八戒さま付きの、侍女ってのになったんだあ。」
「ええ、これから私達、兄妹が八戒様のお世話をさせて頂く事になりました。
どうぞ、宜しくお願い申し上げます。」
「うん、そーなのー。お願いしまっすvv」
2人の頭が、同時に下がる。
僕は、完全に言葉を失う。
でも、逃げないと、それだけは分かる。
このまま、ここに居たら、絶対にいけないって事だけは。
今だったら、逃げ出せる。
逃げないと、大変な事に……。
「済みません、どいて下さいっ。」
ベッドから足を降ろし、一目算に部屋の扉へと向かう。
そこしか、この部屋から出られる場所がないみたいですから。
「は、八戒様っ?」
「どこ行くのっ!」
2人の声を振り切ろうと、走り出したのですが。
何だか、身体が巧く動きません。
一体、僕に何が起きたんですかっ。
「大丈夫か、八戒。」
扉から出掛けた所で、僕は足が縺れてしまい。
倒れ掛かったのですが、それを掬い上げる腕に助けられました。
「起きたばかりなのだろう。
クスリが抜けたばかりで、無茶をするな。」
そのまま、抱き上げられて。
部屋の中、ベッドの上へと戻されてしまいました。
「2人共、下がっていろ。」
「はい、ゴジョウ様。」
命令に従い、下がっていく二人。
残ったのは僕と、僕の目の前の男…。
「どうした、八戒?」
「…ここは、どこですか?」
「俺の国だ。」
「どうして、僕が貴方の国にいるのですか?」
「俺が抱いて、連れて来たからだ。」
「……さっきの【クスリ】って、何ですか?」
「眠りの粉だ。暴れて怪我でもしたら大変だからな。
それより、気分はどうだ?」
「………最悪、です。」
「それは如何。横になっていろ。」
彼に従う訳ではないが、今は頭の中が整理しきれず。
取り敢えず、僕は身体を横にしようと……して、初めて気付きました。
今の僕の、格好って……。
「あの、僕の着ていた筈の服は……。」
「処分した。お前には、この方が似合う。」
「これって……。」
「俺からの贈り物だ。遠慮などいらない。」
それは、軽い素材で――多分、シルク。
色は薄い紫で、上品な色彩。
けれど、デザインはアラブ風。
肌は隠されているけれど、透けていて、艶めかしさが強調されている。
八戒のみが着こなせる、ゴジョウのセンスが光る、一品。
バチーーーーーン、と。
八戒の両の掌が、ゴジョウの両頬を直撃する。
さあ、捕獲された山猫の反撃が始まりますが。
対抗する密猟者も、それなりの腕扱きなので。
一体、どうなりますことやら……。
2001.11.11 UP
Eへ続く
★ コメント ☆
サイト復活記念のD話目v
はい、とうとう、連れて来られてしまいました
八戒の堪忍袋は、切れる寸前
対する、ゴジョウは余裕ぶちかまし
いつものパターンと違いますからね
これはこれで、楽しんで書いてますv
あ〜、八ちゃんの血管が切れないウチに
何とかしたいんだけど、ねえ
どう転がるのか、私にも分からん
えっへん・笑
ただ、こんなに感情を明け透けにぶつける相手って
今までいなかったと思うの
だからね
ふ、ふう〜ん
次でねvv