Virgin Eyes

E 〜 あなたと逢った瞬間まで 〜


by 遙か


思いも寄らない、八戒の攻撃――両手ビンタに。
悟浄の身体が、くの時に折れ曲がった。
その隙をついて、八戒はベッドから飛び降り。
一目散に、出口の扉へと走り出した。
大きな音を立て、扉を開き。
回廊を右へと、足を進めた。

怒りが、身体を覚醒させたらしく。
先程よりも、ずっと動く。
素足のままのせいで、床の冷たさが伝わってくるが。
今は、気にしてはいられなかった。

長い、回廊が続く。
部屋の中と似た、アラブ仕様の内装。
ここが、異国なのだと、八戒に知らしめる。
息が詰まりそうになる。
自分の置かれている状況の、不覚さに。
少しずつ上がる息を抑えて、八戒は唇を噛んだ。

『あっ。』

出口らしきものを発見して、スピードを上げる。
トン、と。
扉に手を付いて、力を込めたが。
予想していたよりも、あっさりと扉は左右に開かれてゆく。
八戒は、外へと飛び出した。

「熱いっ。」

足元には、熱砂。
強烈な光線。
じっとりと纏わり付いてくる、熱を孕んだ空気。
見た事も無い風景が、消失点が分からない程に。
眼前に広がっていた。

「……………嘘。」

砂。砂。砂。
あとは、天一杯に広がっている、空のみ。
まるで、本の中にある一枚の写真の様に。
けれど、八戒には現実のもの、で。

身体が崩れていくのを実感する。
動きを止めたせいで、汗が吹き出すのも。
何をどうしていいか、分からず。
座り込み掛けた八戒の肩が、後ろから支えられた。

「どうした?」

今、一番、聞きたくない声。
………一番、顔を見たくない、人物。
八戒は、自分の中の理性が切れたのが、分かった。
眦をきつく、ゴジョウへと振り返った。

「どうした、ではありませんっ。
今直ぐに、僕を帰して下さいっ。」
「それは、出来ない。」
「出来ないじゃ、ありませんっ。
勝手にこんな所に連れて来て…許しませんっ。」

激昂したままで、八戒の掌が上がり。
ゴジョウの頬へと、狙いを定める。
けれど、今度は打たれる寸前で、手首が掴み取られた。
そのまま、腰を引かれ、身体を密着させられた。
そして、顎を上向かされ、紅い瞳に覗き込まれ。
唇と唇が、重ねられた。
優しい、バード・キス。
一瞬、触れて。
一瞬で、離れた。

「お前の許しなどいらない。
俺がお前を連れて来た。
だから、ここに居ればいい。
それだけだ。」

正常な思考を半ば放棄している八戒が。
もう一度、手を振り上げようとしたが。
それよりも早く、ゴジョウの手が動いた。
八戒の身体が、ゴジョウの腕に絡め取られる。
さっきよりも深いキスが、唇へと落とされる。

コクリと、八戒の喉が鳴る。
カシッと、ゴジョウの唇が噛み切られた。
そして。
抱く力を緩めない、ゴジョウの腕の中へ。
即効性の薬に、意識を眠らされた八戒が。
力を失って――抱き留められる。


いつまで、平行線の噛み合わない、2人。
八戒は全身で、拒否し。
ゴジョウは、ひとつも残らず捉え様とする。

2本の糸が、絡み合うコトは。
まだまだ、難しい様です。



2001.12.08 UP



Fへ続く


★ コメント ☆

サイト復活記念のE話目v

はい、私も思ってます…ι
いつ、終わるんだ、この話はって…ιι
あ〜、どっしよーっ
何がって、八ちゃんが全然折れてくんないんだもん
完全に、おへそ曲げちゃうし
ゴジョウは、王様だしさあ
人のゆーコトちっとも聞かないじゃん
困ったちゃんが、2人…も
その間に立って、苦労してます、私……
まあ、懲りずにもう少しおつき合い下さると嬉しいです
次こそは…うん、次こそは
どーにか、しよう……うん