ちょっと、マジ


作:遙か


抱きてぇ。
マジ、抱きたくて仕方ねぇ。
わかっては、いるさ。
そんなコトしたら、いけねぇっとコトくらい。
けど、俺に付き纏う不安が。
勝手に、俺を追い立てる。

何が、不安かといえば。
喪うコトだ。
傍にあって。
それが、当然で。
護らなくても、大丈夫なモノが消えてしまう、恐怖だ。

八戒は。
久しぶりに会えた八戒は。
当然、怒っていたが。
ちゃんと、俺のコトを分かっていてくれて。
それが、どんなに嬉しかったか。
言葉ぐらいじゃ、表せない。

血塗れの、八戒。
あの−−初めて、出会った時の光景が、浮かぶ。
確かに、今は。
あの時とは、違うし。
八戒だって、死ぬ気などナイ。
けれど、本人の意志ではナイ、死とゆーもんは、確かにあるんだ。
それを。
俺は目の前に突きつけられた。

だから−−。
静かに、眠る八戒を。
両腕で抱き締めて。
骨を軋ませても、肉を裂いても。
俺の欲望を最優先したくなる。
……きっと。
八戒は、それを許してくれるだろう……。

だらか、俺は祈る。
勇気を。
何かに、縋るみっともなさなど、構わない程に。

「八戒。」

冷たい唇に、触れるだけのキスをする。
ただ、ただ……祈りながら。



                 2001.4.23 UP



☆コメント☆

 いやあ、悟浄のマジ語りになってしまいました。
 私の書き方って、見切り発車が多くて、いえ、殆どそうなんですが。
 当初の予定と大幅に、違う方向へと行くことは多々あります。
 これも、う〜んと唸って書き始めました。
 途中から、もう、悟浄に任せてしまったし。
 彼の言葉を綴っただけって感じです。
 確かに、あの状態でもきっと八戒は悟浄の為だったら……。
 じゃないな、きっと八戒も悟浄を欲しがってると思います。うん。