小さな恋のメロディ



by 遙か






「僕で…僕で、本当に…いい、んですか……悟浄。」
「いーんだよ。俺はおまえが、いーんだ…八戒。」

そう言って、不安に震える八戒を
安心させる様に、しっかりと悟浄が抱き締めて
キスをしたのが、2人の始まりでした





三年前。
目を抉り出し騒動から、八戒が悟能から脱皮して。
俺んトコに居候を決めての、直ぐのコト。
俺達は、速攻でめでたく。
『相思相愛』の『恋人同士』となったんだ。

……………なったんだよ、確か。
しかも、今もちゃーんと、それが継続してて。
八戒以外なんて考えらんない、自分もちゃーんと。
自覚してます、って。
……………。
それに対しての、不安も不満も御座いません、って。
……………。
身体の関係だってよ。
八戒には、姉ちゃん入れての2人目だけど。
男は、俺が初めてで。
俺にも、数多の美人のおネエちゃん達ばかりを相手にしてきたんで。
やっぱ、男は八戒が初めて。
どっちも、初体験だったけどな。
俺さまとしては、全然OK。
チョー・気持ち良かったね。
しかも、八戒ってさ。
本人気付いてないらしいが、敏感体質でよ。
張り切って開発しちゃったもんな、俺。
つまり、俺の努力と八戒の素質のおかげでさ。
躯の相性はバッチで。
言うコトなしの、満足いく夜の生活も送ってる。
まあ。
それは、イーんだけどなあ………。


「悟浄。朝ですよ、起きて下さい。」

……………。

ドアがノックされて、ドアが開いて、室内に入ってくる音。
カーテンを両端に、寄せる音。
窓を全開にする音。
風が入って来て、空気が入れ替わり、日差しで明るくなる。

俺は、毛布を頭から被り、ベッドの上で丸くなった。

絶対、死守。
何が悲しゅーて。
毎朝毎朝、ガキみたいにきちんと起されなくちゃなんねーんだって。
俺が早起きしたって、するコトねーじゃん。
メシだって、洗濯だって、掃除だって。
八戒が一通りこなしちゃってんだからさ。

大体、俺は夜行性なんだよ。
知ってるっしょ、八戒?

たがら、今日とゆー今日は。
寝てるぞっ。
俺はまだ、眠いんだからなっ。





さてと。
僕は、今。
目の前に盛り上がった毛布の小山に、溜息を付きました。
諦めのではなく、呆れたのを。

悟浄の行動のパターンは、基本が大体同じで。
それに多少のオプションが、付いていく位です。
つまり、分かり易いんですね。
しかも、進歩が無い…。
まあ、そこが可愛いんですけどね。
これって、やっぱり。
『痘痕もえくぼ』でしょうか?
くすくす。


一緒に暮らして、三年。
初めの頃は、本当に悲惨で。
雨か降る度に、境界線で迷う僕を根気良く。
この世界に居られる様に、抱き締めてくれていた――悟浄。
感謝しています。
僕にあなたと生きる事を選ばせてくれて。
でも、その感謝以上に。
あなたを想う気持ちが、日一日と深くなっていく事が。
こんなにも、嬉しいなんて。
絶対に、口には出してあげませんし。
悟浄に、伝えるなんてしてあげません。
ほら、よく言うでしょ?
好きな子程、苛めたくなるって。
だから……。ねっv

「悟浄……起きてくれないんですか。」

溜息も、聞こえる様に言ってみる。

「僕…悟浄と一緒に朝食を取りたかったんですけど…。」

残念そうに、ぽつりと言う処がポイント。

「眠いなら、仕方…ありませんものね。」

きちんと、言い切ってから。
悟浄の部屋をさっさと出ます。
ドアは、わざと音を立てて、でも静かに閉めます。
勿論、悟浄が行動を起す前に。
これで、いいんです。
これで、今頃ベッドの上、毛布から顔を出して。
呆然と、罪悪感を胸に抱えてくれるでしょうから。





は?
い、今。
な、何が起った?

俺は狸寝入りを中止して、即ガバッと起き上がったが。
八戒の姿はドアの向こうに消えた後だった。
……………。
そっかあ。そうだったのかあ。
八戒が俺に口煩く、オフクロみてえに言うのは。
俺にかまって欲しい、愛情の裏返しなんだな。

は!

そうすると、もしかしてさっきの俺の態度は。
八戒を酷く傷付けたコトになっちまうっ。
うわあー、ごめんっ。
八戒、ごめんっ。

俺は慌てて、キッチンへと。
八戒を追って行った。



挽き立てのコーヒーの香り。
手作りドレッシングのサラダ。
焼きたてのパンは厚くスライスしてあって、たっぷりのバターは俺の好み。

「どうぞ、悟浄。」

コーヒーカップを差し出してくれる、白い綺麗な手と。
慈悲溢れた様な、八戒の優しい微笑。
いいねぇ、俺達って、
いつまでも、新婚さんでよ。
最高の嫁さんをゲットしたよなあ。
うんうん。



―――――と、にまにましてる悟浄の座右の銘は
『知らぬが仏』とは
本人以外、誰もが知っている周知の事実―――――



2002.7.24 UP



☆ コメント ☆

へたれ悟浄のお祭り参加作品ですv
なんて、素敵な響きでしょうか
『へたれ悟浄』
上の悟浄ではありませんが
にまにまと書き上げてしまいました
う〜ん、愉しいわv

目指したのは
『同棲三年間のカカア天下UP率』
でしたが…どうでしたでしょうか?
皆さまの判断をお聞かせ下さると嬉しいですvv

この企画を運営されたサイゴック様・一条様・美琴様v
参加させて頂き、ありがとうございましたvv