あなたが 私に くれる もの
by 遙か
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簡単で 難しい 言葉
『誕生日、おめでとう』
簡単なのは 『スキ』だから
難しいのは 『タイミング』
さて 今年は どんな風に 告げようか
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曜日どころか、日付の感覚も薄くなる、西へのサバイバル旅。
はっきり言って、非日常。
刺激を求めたいんなから、正に打って付けなもん。
まあ、腐れ縁だから、仕方ねえってやつ。
俺は、ジープの後部座席で。
ぷかっと、一つ煙を吐き出した。
横で、寝腐ってるのは小猿の悟空。
前には、その飼い主の三蔵と。
口の煩いおフクロ兼俺の恋人の、八戒がいる。
何でもねーって顔してっけど、だいぶ疲れが溜まってきてるよな。
肩が少し下がり気味。
ジープの運転から、細々した雑事を全部引き受けちゃうんだからな。
当然って言えば、当然。
大変だろーと、言ったコトがあるが。
楽しいんですと、返されたコトがあって。
俺は切なくなったコトがある。
八戒は、必要とされるコトを凄く欲っしている。
それだけ、孤独を怖れているんだと、分かった。
姉ちゃんに、目の前で置き去りにされたから。
だから、俺は……。
ガクン―――と、ジープが傾いた。
この悪路じゃ、しょっちゅうあるコトだが。
考え事をしていた俺は、つい銜えていたタバコを落してしまった。
「うわっちっ、ひでっ、悟浄っ、ナニすんだよっ!」
「あ、わりぃわりぃ。」
火のついたタバコが、寝ていた悟空を掠めた。
一気に飛び起き、キーキーと文句を喚き出す。
あ〜、うっせー。
「謝り方が、本気じゃねー!」
「本気本気、本気で謝ってるって。」
「どこがだよ!
くっそお、折角、でっかいケーキを喰う夢見てたってのによお。」
「ああ、分かった分かった。」
「分かってねー!!」
―――ん、ケーキ? そういやあ……。
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珍しい事もあるものです。
街に到着して、宿を探そうとしたら。
悟浄がその役を進んで、引き受けてくれました。
しかも、三蔵とペアを組んでです。
そして、悟空と先に食事を取る様にと、追いたてられてしまいました。
? 分かりません。
悪巧み位だったら、良いのですがね。
許容範囲を超えないようには、して貰いたいものです。
街を追い出される面倒はしないで、欲しいんですけどねえ。
「八戒っ、早くメシを喰いに行こー!」
「はいはい、悟空、行きましょうね。」
悟空に手を引かれながら。
消化の良い物を食べようと、僕は考えていました。
少し、疲れているもので…。
食事を終えて、合流すると。
宿は取れたけど、別々になってしまったと告げられました。
丁度、この街にある湖の神様のお祭りがあるからで。
取れただけ、ラッキーという事でした。
「じゃあ…。」
「何かあったら、ジープに伝言させる。
五日後に、ここに集合だ、いいな。」
口を挟む間もなく、三蔵がすたすたと歩き出し。
悟空が『じゃあなー』と、ジープを連れて、その後を付いて行くのを。
つい、見送ってしまいました。
五日間の滞在…結構、長いですね。
「三蔵…どうかしたんでしょうか?」
「持病の腰痛が出たんじゃねーの。で、養生、したいと。」
「悟浄…。」
くすくす、もうあなたって人は。
知りませんよ、三蔵に聞こえても、地獄耳なんですからね。
「さ、俺らも行こ。」
「はい。」
肩をポンと叩かれ、僕は悟浄に付いて行きました。
「よく、三蔵のOKが取れましたねぇ。」
「俺サマの人徳よ。」
連れて行かれたのは、湖の側のコテージで。
はっきり言って、吃驚しました。
外見は、こぢんまりとしているのですが。
内装は、品良く、値段の張る部屋だと分かりました。
「いいのでしょうか?」
「いーんでない。ここしか、無かったわけだしぃ。
三蔵さまだって、イーとこ取ってんだしぃ。」
「…そうですか。じゃあ、いいんですね。」
確かに、三蔵が自分の方のランクを落す訳もないし。
三仏神のカードですし、心配する事ないですよね。
ただ、気になるのは………。
「八戒、先にフロ入って来いよ。」
「え、悟浄は?」
「俺は後でいいからさ。ほら、入れ入れ。」
備え付けのタオルを渡されて、ぐいぐいと背中を押されました。
「分かりました、分かりました。
そんなに、押さないで下さい、入って来ますから。」
「よしよし、ちゃんと入ってくるんだぞ。100まで、数えろよ。」
そんな、子供じゃあるまいし。
悟浄の物言いに、少しムッとして。
僕はさっさと、バスルームへと入りました。
けど、ドアを閉めると肩から力が抜け。
どうしても、さっきの気になった事が頭に浮かびます。
このコテージは、2つ部屋があって。
1つは、居間で。
もう1つは、寝室で…クィーンサイズのベッドが1つ…。
…嫌だという訳ではないのですが。
どうしても、気恥ずかしくて……。
僕は、自分の顔が赤くなっていくのを自覚しました。
でも、シャワーを浴びて、出て来ると。
『出掛けてくる、先に寝てろ』のメモ書きだけが。
ベッドの上に、残っていました………。
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真っ暗に、灯りが消してあるコテージに。
俺は足音を忍ばせて、帰って来た。
黙って(メモは残したが)出て行った俺に、抗議してるような。
部屋の暗さに苦笑しつつ、シャワーを浴びてから。
寝室へと滑り込んだ。
淡い、オレンジ色の常夜灯の中。
ベッドの中で、八戒は眠っていた。
ちゃんと、俺のスペース分を空けてあって。
そっと、髪に触れると、まだ濡れていて。
拗ねて、不貞寝したなってのが、分かった。
八戒は、自分ではあまり意識していないよーだが。
俺には、我が儘で、簡単に八つ当たりしてくる。
それが俺に対して、甘えてるってのを八戒は知らない。
気持ちが、込み上げる。
『愛情』なんて、知らなかった俺に。
今、確かに、存在する気持ちがあるコトに。
八戒が、いいと―――はっきりと、感じる。
八戒の横へと、自分の身体を横たえる。
八戒の躯を、自分の腕の中に抱き込む。
「―――ん、ごじょ?」
ふわりと、舌足らずに。
八戒は俺を認識する。
「ごめん、遅くなった。」
「―――おかえり、なさい。」
「ただいま。さ、寝よーぜ。」
八戒の頭が、ころんと俺の方へと転がってきた。
ゆっくりと、表情を緩め、再び眠りへと落ちてゆく。
その子供みたいな寝顔に、そっと口吻る。
明日は、おまえの、バースディ。
喰いモンも酒も――ケーキも、全部用意してきた。
1日中、傍に居よう。
1日中、KISSしよう。
1日中、抱き締めていよう。
だから、朝、目を覚ましたら一番に言ってやる。
『誕生日おめでとう』と『アイシテル』ってな。
な、八戒。
2002.9.20 UP
☆ コメント ☆
お誕生日です
誰のって、勿論、最愛の八戒さんのv
優しい気持ちで
この話を書き上げました
幸せになって欲しいから
一杯一杯、幸せになって欲しいから
悟浄と……………
………………うんvv
なんか、すっげえ、引っかかる言い方だよな by 悟浄
まあ、とにもかくにも・笑
HAPPY BIRTHDAY To 八戒vv
