君と約束した優しい場所
by 遙か
どんなに思っていても 叶わない 約束もある
それでも 願わずには いられない
君と約束した あの言葉を 忘れない為に
**********
ぽっかりと、何の気なしに空いた時間。
取り敢えずの家事を終え、ジープも外に遊びに行って。
家の中は、静かです。
暑くも寒くもない、秋の一日。
僕は開けた窓際へと、コーヒーと椅子を持って移動して。
外を見ていました。
澄んだ、高くなった空。
色付いた、舞い散る落ち葉。
風の音。さかのぼっていく、キヲク。
僕は現実の視界から、目を閉じた―――
**********
いつも、一番初めに浮かんでくるのは。
不安を払拭してから、幸せそうに笑う、君の顔。
僕一人で背負えれば良かったのにと、思う気持ちを押し隠して。
いつも、笑い返していた。
モラル――罪の意識――禁忌の領域
今だったら、判る。
囚われていないと、自分達に言い聞かせながら。
どんなに、雁字搦めだった事が。
姉と弟だった、花喃と僕。
あまりにも似すぎていて。
理解しているつもりで。
僕は君を。君は僕を。
全く判っていなかった。
ただ、母の胎内で一つだった時の事を拠り所にしていたかったのかも…ね。
アイシテイタ、ヨ――トテモ、モウヒトリノ、ボクノキミヲ
**********
「だあれだ?」
不意に、塞がれた視界。
耳元に、囁かれる聞き間違える事のない、声。
「…誰でしょうねえ?」
「ナニ、わかんねえの!?」
「はい、判りません。」
「ひっ、酷えっ。ナンで俺がわかんねーんだよお。」
「だって、目隠しされたまんまなんですもの。」
「お前、こんなコト位で恋人の俺がわかんなくなるのかよ。」
悟浄の声が、拗ね出しています。
ストレートに、僕に感情をぶつけてきてくれるのが心地良いです。
僕の目を覆っている、堅く温かい掌を名残り惜しく外して。
悟浄へと振り向きました。
紅い…紅い…本当に綺麗な色の瞳に、笑っている僕が映っていました。
「お前の恋人は、だあれだ?」
「貴方です、悟浄。」
悟浄のシニカル笑みが、解かれる一瞬。
僕にだけ見せてくれる、優しい表情。
こんなにも貴方を好きな自分を誇れる瞬間を。
貴方だけが、僕に与えてくれてるいるんですよ? 悟浄。
「大正解v」
ゆっくりと、確実に。
僕の身体へと回されてくる、2本の腕。
大きく、広く。
泣き笑いしたくなる位の安心で包んでくれる、悟浄の腕の中。
僕は目を閉じて、次にくる悟浄のkissを。
待ちました。
**********
1枚の絵のよーだと、思った。
家に帰って来て、窓から外をぼんやりと視線を泳がせている八戒を見て。
俺の立ち入れない空間を彷徨っている、八戒。
嫉妬心の残り火が燻って、俺がジレンマを感じる程に。
八戒は自分でも気付かない程に、トリップしている。
過去は消せない。生きている限り消えるモンじゃねえのは。
俺自身が、一番良く知っている。
だから。
ネエちゃんの幻影――過去を見ていてもいーから。
必ず、俺――今に戻って来てくれればいい。
たださ。
俺は寂しがり屋なんだからさ。
長い時間、ほっておくのは許さねーかんな。
ぎゅうっ、と。
腕の中の馴染みきっている八戒の細い躯を抱き締める。
その恋人の形が、俺を熱く満たしてゆく。
触れるだけの、優しいkissを交わしながら。
――誰にも 何処にも 渡さない
お前と 2人で 約束したこの場所から――
2003.11.02 UP
★ コメント ★
某ゲーム(参加型恋愛シミュレーションゲーム)の終了に伴って。
その思い出に、書き上げました。
とても、楽しかったんです(笑)。
この話は、そこで出逢った恋人さんに贈る為に書きました。
優しい貴方に出逢えて、本当に嬉しかったです。
貴方の幸せをいつも祈っています。
幸せな時間を本当にありがとうvv
モドル