その腕の中の天国
     



by 遙か




淡く光を 放つような 白き腕が
褐色の 汗の浮いた逞しい背へと 回される

ゆっくりと――  しっかりと――





誕生日祝いの、定番の2人だけのパーティ。
その後の、恋人同士のお約束のH。

今年も、悟浄の誘い言葉に、八戒の頬が染まる。
日頃の太々しさからは懸け離れた、この初々しさ。
いつもの様に、からかう気も起きず。
ただ、愛しさだけが募る。

差し出す掌と。合わせる視線の先。
唯一無二の存在に。
生まれてきたことを。生まれてきてくれたことを。
――感謝する。

抱き締めれば、腕に馴染む…その躰。
顔を近付ければ、閉じられる…瞳。
重ねた唇の冷たさと、柔らかさ。
焦る気など無く、確かめるように…何度も啄んでゆく。

恋人と交わす、キス。
その甘さに、意識が集中して。
抱き合う腕に、力が自然と籠もる。

「俺のコト、好き?」
「好きですよ、悟浄。――あなたは僕が好きですか?」
「俺も好きよ、八戒が。」

言葉は祈りにも、似ている。
そして、誓いにもなる。
永遠が無いのは、知っているけれど。
それでも、失いたくないと。
失えないと、切に願う相手。

「ええ、それは判っていますけどね。」
「お前が聞きたい時には、言ってやるし。
 俺が言いたい時には、言うしぃ〜。」
「いつでも?」
「いつでもv」
「どこでも…ですか?」
「モチロン、どこでもvv」
「TPOは考慮して下さいね。」
「わっがままーーーっ。」
「けど、その我が侭も…。」
「そ。愛しちゃってんのさ…。」

声が途切れる。
安心しきった吐息が、漏れる。
再び、目を閉じて、キスに集中して。
お互いを一つでも多く取り込もうと、する。
液体になって。
ドロドロに溶け合ってしまいたいくらいの熱望を。
今、解放し合ってゆく。





月光に満たされた、カーテンを引かない部屋のベッドの上。
裸身を晒す羞恥心に八戒は、堪えていた。
いつもだったら、さっさと逃げを打つのだが。
悟浄の誕生日という呪文が、八戒の抵抗を簡単に封じていた。
ただ。
我慢すると言うのではなく。
悟浄の願いを叶えてあげたいと言う、八戒の一心からで。
だから、それを判っている悟浄の喜びは、とても大きかった。

八戒へキスをするのが好きな悟浄は。
自分の嬉しさが、八戒に伝わるようにキスをしながら躰を重ねてゆく。
隙間を厭うように出来るだけぴったりと、重ねて抱き締める。

優しくシテやりたい、気持ちと。
狂暴に喰らい付きたい欲望を。
混沌と混ぜ合わせて、ひたすら愛し合う。

目も。声も。爪も。
相手の全てを食べる事が出来たら、どんなにか幸せだろうか。

悟浄は。
八戒のモノを舐めあげながら、ふと。
そんな事を思った。
肉体の一番弱いトコロを。
自分に預けきってくれている。八戒。
目の届くトコに居てくれるだけで、幸せに浸れる時もあると言うのに。
こうして、肌を合わせて飽きる事なく、しつこく愛撫を繰り返して。
声を上げさせないと、気が済まない時もある。

何が一番の幸せなのか……。
そんな答えの無い、答えの見つからない答えを。
いつも2人で探している。


「………ごじょ、う?」
「ん? どーかした、八戒?」
「…いえ、あなたがどうかしたのかと…あっ
/////

きゅうーっと。
痛みを感じる一歩手前まで、自分のモノを握られ。
次に、ペロペロと鈴口を舐められて。
八戒は声を高く上げ、躰も跳ね上げさせた。

「いやっ、イヤ…ですっ
/////
「イーの間違いだろ? 八戒のウソツキ。」

ククッと。
悟浄が笑いながら、先を口に含んで吸い上げてやると。
我慢の限界だった八戒は、堪えられずに達ってしまう。

「ほら、良かったじゃんv」
「……………ばか。」

ぐったりと力の抜けた八戒を。
大事なお人形を抱くように抱き上げ、愛しげに悟浄は頬を擦り寄せた。

「…悟浄…本当に、どうしたんですか?」
「ん。誕生日プレゼントにさ、毎年さ、お前をくれるじゃん。」
「そっ、それは、あなたが他のリクエストをくれないからっ
/////
「だからさ、嬉しーんじゃん。
 俺の好きなお前が、俺の為に、俺の願いを叶えてくれるんだからさ。」
「悟浄…
/////

腕の中にある、宝物以上の宝物を。
悟浄は抱き締める。ただ、抱き締める。

八戒の腕がゆっくりと上がり、悟浄の首へと回して。
精一杯の力で、抱き返す。

「お誕生日…おめでとう、ございます…悟浄。」

悟浄へと。
無邪気に子供みたいな笑みを浮かべて、八戒は躰を浮かせて。
唇を小さく合わせる。

「本当、お前って最高の誕生日プレゼント、だよvv」

そう言いながら、八戒が見惚れる程の良い顔を浮かべた悟浄は。
大人の時間の再開の為に、恋人を押し倒していった。


……その腕の中の天国へ



2003.11.08 UP



★ コメント ★


悟浄の誕生日SSです。
そして、自分へのお誕生日…おめでとうも込めてあります(笑)。
だって、私は11/8生まれなんだもーん。
悟浄は11/9だから、一日先にお姉さんvv
(図々しいにも程がある・悟浄談)

まあ、お誕生日たからその日一日は王様ですよね。
なので、お願い事は一つだけだろうし、悟浄には(笑)。

沙悟浄氏、ハッピーバースディ!!




モドル