真 冬
     



by 遙か



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X'mas     わざわざ はしゃがなくても
        気分が高揚してしまう
        不思議な日


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子供じゃあるまいし、と思いつつ。
節目毎の行事が、大好きな悟浄は。
一年の最後の大イベントのクリスマスを心待ちにしておりました。

例年、悪友とか馴染みのお姉様達とのドンチャン騒ぎで。
終日、過ごしていましたが(去年は酔っ払って、寝こけて大風邪をひいたオチ付き)。
今年は、恋人と2人きりで、というシチュエーションに萌えていました。


柔らかく、少しウェーブのかかった黒髪。
色が濃く、深みをもった碧の瞳。
鼻の形も、唇の形も良くて。
声のトーンも良い(飛び出す言葉には、棘含むだが)。
いつも、きっちりと服を着込んでいるので。
見える部分は少ないが、襟足、喉元、手首の白さは際だっている。
ピンとした背筋。
高い位置の腰に。
小さ目のお尻と細く長い足。
背は大して変わらないのに、抱き締めると華奢で。
守ってやりたくなる(口にしたら、絶対零度の笑みと気功を喰らう事は確実)。

こんな、なかなかお目にかかれない超弩級の美人。

猪八戒が、沙悟浄の恋人でした。 


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想いが通じ合ったばかりのビギナーさん同士。
恋人という定義が、今まで2人共ありませんでしたので。
ぎこちなさがありますが、それさえも喜びに変えて。
恋人という事を楽しんでいました。

『なあなあ、八戒。』
『はい、何ですか、悟浄。』
『クリスマスが、もう直ぐじゃん?』
『ええ、そうですね。』
『だからさ、あのさ。』
『はい。』
『俺達、恋人になったじゃん?』
『ええ、なりましたね。』
『なんで、クリスマスは俺とお前で、2人きりでやろうな。』
『ええ、過ごしましょうね。』

ウキウキと、約束して。
ドキドキと、クリスマスが来るのを。
悟浄と八戒は、指折り数え始めました。



前髪の触覚以外は、綺麗なストレートの紅の髪。
お揃いの目の色も、研磨されたルビーの様。
精悍な、男臭い容貌で。
低くて、重みのあるセクシーボイス(口調は軽くて、ナンパだが)。
服の上からも判る、均等の取れた引き締まった身体。
肌は浅黒く。
腕も胸も足も、適度な筋肉が付いていて。
しなやかな獣の様な印象を受ける。
尊大な態度も。
人懐っこさが、上手く融合していて。
見目も良い(抱き付かれると、大型犬にじゃれられている様な気分になってしまいます)。
こんな自画自賛を全く隠さない良い男が。

八戒の、恋人の悟浄です。 


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当日の役割分担は。
八戒が料理で、悟浄が買い出し。
家で八戒が、この日の為に計画していたクリスマス用の料理を作っている間に。
悟浄は外に、頼まれた買い物と八戒へと用意したプレゼントを受け取りに行きました。

八戒にバレない様にと、プレゼントを隠しながら。
買い忘れはナイなと、大急ぎで帰って来た悟浄は。
後少しで、家という所で足をピタッと止めました。

―――そして、空を見上げました。


料理に専念していた所に、携帯の着信音が鳴り。
八戒は、慌てて手を洗って、通話ボタンを押しました。

『八戒!』
『悟浄?』

どうしたのですか、と続く筈だった言葉は。

『外。外。外っ、見てみろよっ!!』

興奮した声に阻まれて、携帯を持ったまま。
八戒は、冬用のカーテンを開けました。

―――雪。

本当に、今降り始めたばかりの。
ふわふわとした粉雪が、地面をうっすらと覆い始めていました。

『見た?』
『はい、ホワイトクリスマスですね。』

もう、直ぐ傍に見えている所から。
同じ様に、携帯を耳にあてたまま、荷物を抱えてやってくる悟浄に。
八戒は嬉しそうに、微笑んだ。



窓越しに、キスをする。
恋人達は。
雪たちの祝福を受けながら―――

                         

2003.12.24 UP   



★ コメント ★


クリスマス・イブに書き上げたお話ですv
良かった……間に合いました(笑)
悟浄と八戒の可愛らしいクリスマス・ナイトを
どうぞ、お楽しみ下さいませvv




モドル