ディスティニー




by 遙か



†††††

『笑う…って、一体、どんな事なのでしょうか。』

†††††

拾って来た、酷い怪我をしていたオトコは。
命が助かって、目覚めてから、いつも笑っていた。
愛想の良い、ソツのナイ笑顔で。

有り難いと、感謝する笑い方。
防波堤をさり気なく、強調する笑い方。
謝罪しなから、一つもナンとも思っていない笑い方。

…別に他人事だから、オトコがどんな笑い方をしよーと。
俺には、関係ナイコトで、気に掛けるつもりなんか。
これっぽっちも、持つつもりなかったてのにさあ…。

行きずりの他人だから、ナンだろーか?
苦笑いしながら、俺に怪我を負ったまでの経緯を話してくる。

ドラマティック――悲恋――そんな陳腐な言葉で、括ったら。
どんな顔をするんだろ?
地獄に行き損ねたタマシイは、虚無の躯におさまって。
一体、ナニを待っているんだ?

―――満足な、死?

誰にも干渉されない世界の、構築。
一番、居て欲しい人間の居ない、一人だけで住む世界。

貼り付いた仮面のよーな笑顔は。
その世界を守る為の、番人。

コイツは、一人でいーんだ。
一人で、さっさと死にてーんだ。
――と、思ったらムカついた。

ほっとくつもりだったのが、手を出して。
ほっそりとした腕を掴んでいた。
真っ正面から、オトコの目の中を見ていた。
俺はオトコの存在を否定しなかった。

ウソでも。幻でもなく。
確かに、ココに。
温かみをもっているんだから。


…そうだろ?



†††††

『考えるモンなのか…それって。』

†††††

目が覚めたら地獄と、思っていたのに。
期待を外して、庶民的な場所に僕は居ました。

怪我をして、死にかけていた僕を。
拾って、手当して、看病したと言ってくる男の人に。
僕は、お礼を言いました。

意識が戻ったばかりで、ぼんやりとしてたせいでしょうね。
ちっとも、有り難くなんてありませんでしたもの。
本当は。

何で生き残ってしまったのか。
考えようとする僕の前に、これみよがしに。
血の赤と同じ色の髪と目をした、この男が立ち塞がってくれました。

今更、柵なんて作る気もない僕に。
笑い掛けて、話まで聞いてくれて。
始めは、一体貴方は何なんですかっていう殺伐な気分だったのですが。
少しずつ、見る目が。気持ちが。
変化している事に驚いて。
僕はポーカーフェイスを徹底してしました。

懺悔という欺瞞を身に纏って。
態と、貴方の関心を引いて、時間を無駄に伸ばして。

―――反吐が出そうでした。泣きたい位に。

受け止め方なんて、判らないのに。
掴まれた腕から、伝わってくる温かいぬくもりが。
どうしようもなく、嬉しかったんですから。


…そうかもしれませんね。



2004.5.8 UP   



★ コメント ★


58DAYに無事(?)にUP出来ましたv
ちと、暗めかな?(苦笑)
けど、私の中の基本なんですよねぇ
二人が出逢った事が、とっても

なので、もう一度原点に戻ってみましたv
妄想爆裂、腐女子の腕を奮って(笑)




モドル