秋 桜
by 遙か
そんなに儚げだと 思った訳じゃない
ただ 頼りなく揺れている様が
アイツが隠したがっている部分と 重なって
俺は ずっとその花から目が 離せなかった…
††††† †††††
無口ってワケじゃねぇ。
話し掛ければ、返事はするし。
向こうからも話し掛けてくる。
但し、必要最低限のコトだけな。
それも、ホントーに済まなそうに。
そんなに気ィ使わなくてもと、思うんだが。
性分なのか、負い目なのか。
アイツの中には『命の恩人』ってゆー俺がいて。
アイツ自身は、その一段低いトコにいる。
それで、八戒の気が楽なんだったらイーかと。
ほっといたんだけどさ。
それが段々と…なあ?
いつまで、ソコにいんのよ。
もしかして、俺のコトがホントはイヤなんじゃないかって。
思っちゃってさ。
だってさ。
アイツ、本音ゼッテー言わねぇだろーし。
あの張り付いた、出来の悪い面を被った笑顔で。
武装したまんま。
小さく小さく息をして、存在自体を隠そうとして。
誰にも気付かれないよーに、ひっそりと。
それをね。
本人が満足で選んでいるんだったら。
俺が口を出す筋合いじゃねーの、判ってんの。
…けどね、出してーのよ。口を出してぇ。
しかも………手も、出してぇんだな。
この俺がよ?
男相手だってぇのに。
思っちまうのって、相当ヤバイよなぁ。
けどさ、俺、アイツのコト…手放す気がねぇんだよ。
なあ、八戒。
俺、お前のコト、好きになって、イイか?
††††† †††††
妖怪になってからのこの身体の治癒力は。
人間の時と比べものにならない位に、早いです。
全く、お節介な能力です。
いつまでも、傷が残った儘でいいのに…。
そうすれば、その痛みに気を取られて。
他の事を見ずに…考えずに済みますから。
関わりたくないんです。
迷惑を掛けたくないから。
…あの人に。
『生きて』変わるものの意味を。
自分の都合の良い様に、解釈したくなる生活の中。
僕は気が付くと、悟浄の姿を目で追っていました。
元からの性格と。
何かを…多分、心に傷を内包している所為でしょう。
悟浄は、とても優しい人です。
口が悪くても、素っ気なく聞こえても。
ぶっきらぼうに差し出してくれる手は、大きくて。
温かなものでした。
他人の痛みなど、所詮理解出来るものじゃありません。
哀しい事も辛い事も、背負うのは自分一人です。
肩代わりなど、出来ません。
例え、押し潰されても責任は自分自身のものです。
けど…。
『やせ我慢ばっかしてんじゃねーの』と。
軽く僕の両頬を両手でパンと叩いてから。
包むようにして、顔を覗き込んできた悟浄に。
僕は、言葉を失ってしまいました。
―――綺麗な紅に、見とれてしまって
外は季節が、移り変わってゆきます。
雨も降れば、いつかは止んで晴れる事に。
今更ながら、気付きました。
僕も変わっていいのでしょうか。
窓の外から見える所に、コスモスの一群が色取り取りに。
花を咲かせ、風に揺れています。
ふわふわ。ゆらゆら…と。
悟浄、僕は貴方を………。
††††† †††††
「秋の桜って言うんだよ。このコスモスの花は。」
花屋のオバちゃんが得意気に教えてくれた名前の花の花束を。
俺は両腕に抱えて、帰って来た。
マジな衝動買い。
花屋のバケツん中に入ってたのを全部、買い占めてきた。
白から薄いピンクから、濃いピンクまで全部。
こんだけあれば、寂しくないだろ。
無駄遣いをして、とガキを叱るみてぇに言うだろーけど。
きっと、笑ってくれるさ、八戒は。
だから、そん時デッカイ声で言ってやろう。
『誕生日おめでと、八戒っ!』ってな。
あと、ドサクサに紛れて思いっ切り抱き締めてみっか。
八戒がどう出るかを期待してさ。
2005.10.8 UP
★ コメント ★
大大大遅刻の八戒さんへのバースディストーリィです(苦笑)
悟浄から八戒さんへの贈り物。
どう受け取るかは、これからの悟浄の腕の見せ所でしょうか?
ま、頑張れよv(←悟浄のBDの時に決着付くかなあ??)
Happy Birthday Dear 八戒さんvvv
モドル