スクランブル・エッグ【5】
この話は不定期連載の形を取ってます
この話は萌え仲間ののぞみ嬢に捧げます
by 遙か
ドサッ――自分ちの自分の部屋の自分のベッドに、俺は倒れ込んだ。
…疲れた…眠い…。
けど、頭ん中がビシバシ冴えちまって、ちっとも眠くねえ。
原因?
そんなの判ってらあ。
昼間の出来事。
現実の悪夢が、俺を苛んでっからだ。
あーのー野郎っ!
天蓬の手前、俺が大人しくしてっからって、イイ気になりやがって〜。
しかも、俺が気にしてっコトをチクチクといたぶりやがって〜。
『これ位、寛容にうけてやれよ。大人だろ?』
どーせ、年下だよ。まーだ、学生の身だよ。
仕事持ってる天蓬からしたら…頼りになんかなんねえ、ガキだよっ。
うーっ、自分で言ってめげた。
俺は暫く、枕に顔を埋めて自己嫌悪の海に浸っていたら。
ん? あ? 着信音か。
慌てて携帯を取ると、空いては八戒だった。
――高校からのダチで、今も大学が一緒のイイ奴。
「八戒? どーしたん?」
『…悟浄こそ、どうしたんですか?
今日、レポートの資料探しに付き合ってくれって言っていたのに』
あっ! そうだそうだ、そうだった。
八戒と約束してたんだ、俺。
ショッキングな事件の所為で、忘れてた。
「ゴメン! ゴメン、八戒っ、今から行くからっ」
『大丈夫なんですか? 具合とか悪いのなら…』
「行くっ! 行くから、待っててくれっ」
『判りました、待ってますね』
俺は上着をひっ掴んで、猛ダッシュで家を飛び出した。
††††† ††††† †††††
「悟浄…」
待ち合わせのカフェテラスで、俺に声を掛けたはいいが。
その後に続く言葉を失った八戒は、目を丸くして俺を見てた。
そりゃあなあ…息絶え絶えで、声は出ねえ、大汗かいて。
手のジェスチャーだけで、遅くなってゴメンをされてもなあ。
…よく引かないでくれてるよ。
「…何か飲みますか?」
俺はコクコクと頷いた。
俺の好みを把握してる八戒は、砂糖ナシのアイスコーヒーを買ってきて。
俺の前に置いてくれた。
「どうぞ、ゆっくり飲んで下さい。落ち着きますよ」
又、コクコクと頷いて、八戒の言う通りに飲み干した。
アイスコーヒーの冷たさが、美味い。
半分、一気に飲んで、俺はやっと落ち着けた気がした。
「…サンキュ、八戒」
「いいえ、どういたしまして」
「ゴメンな、今日」
「何があったんですか?」
「ん〜アクシデントつーか、災難が降ってきたつーか…」
「大変だったんですね」
「ウン」
詳しく話さなくても突っ込まず、労ってくれる八戒の優しさに。
ホッと気を抜いた時だった。
「よっ、悟浄じゃないか」
悪魔の声が、降ってきた。
勝手に座るんじゃない。
「あ、アンタ」
「奇遇だな…と、こちらは?」
「ダチの八戒。八戒、コイツは…」
「悟浄の恋人の天蓬の担当編集をしている捲簾と、言います。
初めまして、八戒さん」
「あ、天蓬さんの。こんにちわ、初めまして、捲簾さん」
え、ナニ、この変わり身の速さ。
「捲簾さんの分も買ってきますね。何が良いですか」
「ああ、ではホットコーヒーで」
「判りました」
八戒の後ろ姿を見ながら、世界がグルグル回る感覚に囚われた俺の首に。
捲簾の腕が、ガシッと絡んできた。
「天蓬にチクッといてやるな」
鼻歌を歌い出しそうな、ご機嫌な捲簾の台詞に。
反論の言葉より先に、俺の背中にはザアザアと冷たい汗が落ちてった。
【6】に続く★
モドル