白のラビリンス 〜 ロンド 〜【1】
この話は不定期連載の形を取ってます
この話は萌え仲間の由良嬢に捧げます
貴方は 私に 気付かない
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歩いてゆく横顔を見たのが、初めてだった。
白い服で、無表情で、淀みない歩調で。
歩いてゆくのが、印象的だった。
目を離せなかった。
それから、度々見掛けるようになった。
呼び止めるとか。
話し掛けるだのは、頭になかった。
だから、いつも横顔だけを俺は見るようになった。
後から追い掛けてきた部下らしい者が『元帥』と呼んでいた。
それで、西方軍の『元帥』なのだと知った。
変わり者と、俺の耳にも聞こえていたので、判った。
次に。
前から来た男が『天蓬』と声を掛けてきた事で、名前を知った。
親し気に呼ばれ、足を止め。
その男の顔を見ながら『天蓬』は『捲簾』と呼び返した。
無表情を和ませて、口元に微かな笑みを乗せて。
―――――胸が焼かれた、その一瞬に
理由など、思い当たらなかった。
自問自答を繰り返しても、納得のいく答どころか。
答の出ない事に苛立った。
が、判らない事に執着する自分が段々と許せなくなり。
俺は許せない方に比重を置き、無視…切り捨てる事を選んだ。
判らないのなら、無理に判ろうとしなくても良い。
そう、決着を自分なりに着けた時に。
謀反を起こしたと聞いた。
天界に、天帝に背いたと、2人で……………。
俺の現実の視界から、突然に消えてしまった。
もう、偶然に見掛ける事もなくなった。
ただ、脳裏に記憶している姿が何度も何度も浮かび。
焦る事はなかった。
繰り返し、その姿を思い出すうちに。
俺はいつしか、その笑みは俺へと向けられて…いると。
欺瞞でも、何でもそう思う事で。
俺は―――――『天蓬』を手に入れていた。
あの男から、奪い取ったという満足感を得ていた。
これで永遠に、俺だけのものなると…なったと。
それを望んでいた自分に、安堵した。
それが、まさか。
地上へと転生するなど、と考えもしなかった。
――――――――――あの男と共に。
完全な正反対の立場の、敵同士で。
以前の記憶など、持っていないと判る眸で。
声も、姿も。
何一つ変わらず。
あの男の傍で、あの男にだけ見せていた表情をして見せている。
あの時と同じように………。
俺の中で、何か軋んだ音がした。
続く★
モドル