白のラビリンス 〜 ロンド 〜
【2】


この話は不定期連載の形を取ってます
この話は萌え仲間の由良嬢に捧げます



黒い髪だった。
転生しても、黒い髪だった。
一度も触れた事のない―――何度も触れてみたいと、思っていた。
髪の色だった。

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残酷とは一体、何を差して言うのだろうか。
無視される事か? 反応されない事か?
いや、相手が自分に気付かない事かもしれない。
だから、一方的な想いは。
自分を優先して、歪んでいくのかもしれない。

ジレンマが、俺を襲った。

諦めていたものが、存在を誇示される事で。
諦めの付かないものに、変化していく事に。

手に入らないと、思っていた。
いくら望んでも、自分の手には入らないものだと…。
【彼】は【奴】のものだ、と。

再び、現実を突き付けられた所為か。
燻っていた熾火が、沸き上がる。
それが自覚出来、今度は止められそうもない。
否。
止める気が起きない。

何故、遠慮する必要がある?
奪えばいい。
欲しいものは、欲しいのだから。

あの時。
天界で、味わった喪失感は二度とご免だ。
己の望みを優先して、何が悪い。
何もせず、手を拱いて後悔するくらいなら。

手に入れる―――この手に。
抱き締めて。
あの黒髪に触れて。
口吻ける。


俺は初めて、俺のしたい事をすることを決めた。


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捉えるのは思っていたより、ずっと簡単だった。
三蔵一行への攻撃は、三蔵が狙いだという周知の事実が目眩ましになった。
自分が等と、頭に全くなかったのだろう。
拍子抜けする位に、あっさりと捉える事が出来た。
『彼』の魂を保有する者は――面影もその儘に息づいて。
――『八戒』と呼ばれていた………。


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結界を張った。
気配を完全に断ち切り、異空間を作り上げた。
意識を深く眠らさせてあるうちに、耳に付いている制御装置の力も増幅しておく。
決して、自らは外せないようにと。
俺だけが、外せるように。

ここまでして、少し安心をした俺はべッドの端へと、腰を掛けた。
手を伸ばすと、夢では触る事の出来なかった黒髪に、触れる事が出来た。
思っていた通り、柔らかく。
指先に馴染んでいく。

…このまま、髪を伸ばさせよう。
短い、今のより、あの頃の肩に掛かるまでに。

――覆い被さり、口吻けながら、俺はそう決めた。



続く★



モドル