白のラビリンス 〜 ロンド 〜【3】
この話は不定期連載の形を取ってます
この話は萌え仲間の由良嬢に捧げます
見られている ほんの一瞬だけ
気付くと 直ぐ伏せられてしまう視線
だから 意図が汲み取れなくて
曖昧なまま 振り返る事はしないでいた…
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頭が痛い。身体が重い。
指を動かすと、スイッチが入った様に。
僕の意識は、ゆっくりと浮上し始めました。
厚い膜に覆われている感覚に、瞼が重くなかなか目が開けられません。
…気持ち悪い。
何かに、圧迫されている様で、口の中に苦みを感じました。
夢…覚えていないけれど、夢見が悪かったのでしょうか。
こんなに、目覚めが悪いなんて。
悟浄と一緒に眠る様になってから、久しくなかったのに。
旅の途中なので、熟睡までは出来ませんが。
安心して眠れる様になっていたのに。
気持ちは早く起きたいのに、身体が付いてこない。
…もしかして、まだ夢の中にいるのでしょうか。
こうなった時は、悟浄の事を呼べば良いんですよね。
常々、悟浄も呼べと言ってくれてますし。
『直ぐに、起こしてやっから』
そう言って、笑ってくれる悟浄の顔を見れば。
きっと、この夢から抜け出せます。
僕は、口を開いて声を出す事に集中しました。
「……………」
言葉にはならなかったけど、音にはなりました。
そして、聞き取ってくれたのでしょう。
僕の指に、手が触れてきて、握られました。
良かった。悟浄が気付いてくれて。
重かった瞼が、やっと開く事が出来て。
僕は、ゆっくりと焦点を合わせ始めました。悟浄に。
「目覚めたか? 気分はどうだ?」
え? 悟浄の声ではありません。
けど…何処かで、聞き覚えのある声、です。
「まだ寝ていろ。無理に起きる事は無い」
誰? 目を凝らして見ると…2つの色の違う眸が。
僕を見ていました。この人は…。
「貴方は…」
「焔だ」
「どうして、僕はここに…」
「考えなくて良い」
「そんな訳には」
「考えるな」
ピシャリと、悉く言い返されましたが。
ここで、引き下がる訳にはいきません。
僕達は、味方同士ではないのですから。
それに、何より。
僕は悟浄の所に帰らないと。
握られていた手を取り戻して、腕の力で上半身を起こして。
この人から、少しでも距離を取ろうと。
寝かせられていたベッドの上を這いずりました。必死に。
危険信号が鳴っています。
一刻も早く、この人から離れないと。
「何処へ行く」
「帰るんです、僕の仲間の所に」
「あの男の所にか」
「何を言って」
手首を引っ張られ、体勢を簡単に崩され。
僕は倒れ込みました。
「放して下さい」
「お前はここにいるんだ」
仰向けになった真上から、見下されました。
両手首をベッドへと押し付けられ。
射抜く様に、痛みのある視線を落とされました。
何故、僕がこんな意味のある眸で見られるのか。
全く、判りません。
懐かしそうに、寂しそうに…。
ほぼ、初対面だというのに、どうして…。
近付いてくる眸から、視線が外せず。
緊張で、動悸が速くなっていきます。
そして。
鼻先が触れ合った時、何か呟いたみたいですが。
聞き取れませんでした。
唇を合わせられて…。
続く★
モドル