枯れない花
by 遙か
君に会えて良かった…
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時間がかかるのは、覚悟してたさ。
けど『いつか』はって希望がぐらつく時ってあるだろ?
その『いつか』が判れば、踏ん張れるけどよ。
判んねぇってのが、続くと流石に不安になる。
不安になって、焦りが出てくる。
んで、その焦りをコントロール出来なくなりそうな…。
俺自身が、イヤになる。
向こうだって…八戒だって…苦しんでるってのによ。
俺だけじゃねぇ…んだって、言い聞かせて。
ナンとか、耐えてんだけど…よ。
それがいつまで保つのか。
自信が崩れ始めてたんだ―――あの頃。
毎日、雨だった。
ただでさえ、気分が沈む八戒がどんどん、と。
口数少なくなっていっていた。
笑顔も、俺を心配させない為にじゃなく。
無意識に機械的なものに、なっていた。
雨は、過去の記憶を。
今に、押し流してくる。
余計な事をすんなって、カンジだ。
八戒は、ぼんやりとする時間が多くなって。
俺は八戒に、声をかけるタイミングを失っていて…。
狭い家ん中で、堂々巡りばっかしてた。
スキな奴、一人守ってやれねぇ自分に。
俺は叱咤激励を続けては、いたが。
イイ加減、燃料切れしそーだった。反応の薄い八戒に………。
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僕の内側は、半分ずつに分かれていました。
花喃を好きでいる、僕と。
悟浄を好きになった、僕が。
丁度、半分。見事に均等が取れていて。
どちらにも、傾こうとはしませんでした。
天秤の両脇の受け皿のどちらにも、1gの重さも掛けないように。
細心の注意を払って。
…どちらも、失いたくないから。
…どちらも、欲しいから。選べないから。
生者と死者。
どちらかを選ぶ事は、本当はもっと簡単かもしれません。
僕が難しく考えてしまっているだけで。
手を伸ばして、触れる事が出来るのは。
今、生きている―――僕の隣にいる、悟浄なのに。
どうして…。
僕は花喃を吹っ切れる事が、いつまでも出来ないのか。
悟浄に、悪くて…悪くて…悪くて…。
―――――済みません、悟浄。
―――――ごめんね、花喃。
顔を俯かせてしまう癖が、ついてしまいました。
血で濡れた過去のある両手で、顔を覆いながら。
耳を塞いでしまいたい。
もう一つの目も抉ってしまいたい。
身体の器官を全て封印して、裡に隠る事が出来たなら。
都合の良い錯覚が出来るように、なるのでしょうか。
花喃に許されて。
悟浄に手を取って貰って。
笑う事が出来るように…。
そんな欺瞞は出来ないのに……。
どうして、僕はこんなに欲深いのでしょうか。
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「あれ? 八戒、出掛けんの?」
「ええ、食料の買い出しに行かないと。底に付く前に。」
「あはっ、そっか〜。」
「じゃ、行って来ますね。」
「あ、ちっと待った。俺も行くワ。」
「悟浄…も、ですか? お仕事に行くには、早くないですか?」
「仕事じゃねぇよ。八戒のお手伝いv」
「僕の…ですか?」
「そv 荷物持ってやるよ。雨だから大変じゃん。」
「それは、助かりますけど…。」
「けど?」
「おねだり付きかな、と。」
「当たりv タバコ、切れちまってさ。」
「やっぱり。」
「ダメかあ?」
「はいはい、いいですよ。」
「おっ、やったvv」
「では、悟浄が荷物持ちを進んでしてくれるという事ですから。
お米と…お味噌と…徳用醤油と…。」
「おいっ! 買いモンリストを増やすなよ〜。」
「お駄賃分を頑張って下さいね。」
「…八戒〜〜。」
普通にする軽口の叩き合いに、悟浄と八戒は声を出して笑いあって。
外出の支度を始めました。
2人で出掛ける事に、心を弾ませながら。
外は、しとしととした雨降りになっていて。
普段だったら、気が沈み気味になるのに。
心の中を満たしていく温かさに、ホッとしてしまう。
意識などしなくても。
悟浄は八戒が居る事に。
八戒は悟浄の傍に居る事に。
どんな、どん底になったとしても。
絶対なんて、無いと思い込んでいても。
2人は―――――
「八戒八戒。」
「はい、何でしょう?」
「あの花…ナンて言うんだっけ?」
「――紫陽花、ですね。」
「あ〜それそれ、そーゆー名前。」
「思い出しました?」
「ん、バッチリv」
「それは、良かったです。」
「アレってさ、雨に濡れてもキレイな。」
「…ええ、そうですね。綺麗です。
――悟浄?」
「手、繋いでこーぜv
帰りは荷物で手一杯だろうから、行きだけでも、さ。」
「はい。」
素直に繋がれた手の温かさが。
2人の笑顔を更に、明るくさせて。
雨の中、再び歩き始めました。
降りしきる、雨の冷たさも。
気にする事なく…。
2007.03.10 UP
★ コメント ★
8万ヒットのキリリクですv
やっと書き上がりました…あはは(苦笑)
リクエストを下さったのは、8万を踏んでくれたふゆさんですv
ふゆさ〜ん、ありがとうvv 捧げさせて下さいねvvv
リクエストの内容は【木か花をテーマにした58】でした
う〜んと呻って、抽象的ですが
枯れない花…枯らしたくない、枯らさないと
花を八戒にたとえて
傍に居て欲しいという悟浄の気持ちで
書き上げてみました
どんなもんでしょうか?(笑)
モドル