Always
by 遙か
【Always 1】
「兄貴」
「何だ?」
「ちーっと、話あんだけどいーか」
「ああ、俺もあるから丁度良い」
「兄貴も?」
「お前から話せ」
「ん〜〜実はさ、家出よっかと」
「何でだ?」
「結婚してえんだv」
「奇遇だな、俺もだ」
【Always 2】
「へ?結婚する気あったんだ」
「俺はな」
「………あ〜あちらさんかぁ」
「まあな」
「で、年貢納める気になってくれたってワケ?」
「要約するとそうだな」
「おめっと、兄貴!」
「サンキュ、それでお前の方はどう進んでるんだ」
「プロポーズのOK取ったトコなんだな」
「そうか、おめでとうだな」
【Always 3】
「W寿だな〜めでたいな〜」
「いっそ式も一緒に挙げるか」
「あっ、いーなー、それ」
「ま、それは追々相談するとして…」
「何か問題ある?」
「この家をどうするか、だ」
「あ〜兄貴達が住めばイーじゃん」
「お前は?」
「俺は出っから」
【Always 4】
「出るって…金あるのか」
「ん〜ナンとかなるっしょ」
「おーい、脳天気過ぎるぞ」
「でもさぁ、新婚さんのジャマしちまうじゃん」
「お前も新婚になるんだろ」
「あ、そーネ」
「だったらこの家に住めばいいじゃないか
4人だったら充分な広さだろ」
「…そっだな」
「死んだ親の遺産だ。兄弟2家族で住めば供養にもなるだろ」
「んじゃ、そーする〜」
【Always 5】
兄の名前は捲簾
弟の名前は悟浄
極々普通の三歳違いの兄弟です
顔の造作は同じ遺伝子が強く出たらしく
良く似ています
ただ長兄と末っ子次男の産まれた順番が
大きく影響しているらしく
性格は本当に兄と弟の典型
ある程度の大局を決めて動き出す兄と
出来るくせに巧く甘ったれる処世を身に付けてる弟
丁度良く補い合っていて仲の良い兄弟でした
その2人がそれぞれに伴侶を見つけたのでした
【Always 6】
兄の捲簾が見つけた伴侶の名前は天蓬
個人経営の病院に勤めていて
職種は外科医
かなり優秀で執刀の腕に評判があります
捲簾との出会いは捲簾が仕事の怪我で
その病院に運び込まれた事からです
捲簾は天蓬の顔に
天蓬は捲簾の骨格に
一目惚れしたそうで
ちなみに捲簾の職業は刑事です
【Always 7】
弟の悟浄が見つけた伴侶は八戒という翠の眸の美人さん
悟浄の出勤途中で車の(車種はジープ)故障で困っていた所を助けたというベタな出会いでありました
ちなみに悟浄のお仕事は自動車の整備工です
タラシの異名を持つ筈なのに
その時は八戒に見とれて名前も住所も携帯b
何も聞かずにという失態をおかしましたが
八戒の方から悟浄の仕事場にお礼にくるというハプニングがありまして
2人の交際が始まりました
好きになった切っ掛けは
悟浄は八戒の美人な全部で
八戒は秘密だそうです
【Always 8】
「そうだ、今度顔合わせするか」
「へ?」
「一緒に暮らすわけだからその前に4人で会うのがいいだろ」
「あ、そーネ、それ賛成」
「ついでに食事でもするか」
「俺、イーとこ知ってる」
「じゃそこで頼む」
「それはいーんだけどさ、兄貴いつ時間取れんの?」
「それが問題か…何とか作る」
「んじゃ予定立ったら教えてな」
「判った」
【Always 9】
「……判りました。ではスケジュール確認しますから又後で連絡します。はいはい、必ずしますってば。そんなに僕って信用ないんですか。あーもう煩いですね。以前の事を何度も。は?以前が多すぎると何度言っても繰り返す僕の所為って…ホント失礼ですね、貴方。仮にも恋人に対してその口の聞きようは。親しき仲にも礼儀ありでしょう。判りましたから。はい、本当に判りましたから、もう切りますよ。貴方も忙しいでしょうけど、僕だって忙しいんですらね。サボってなんかいませんってば。いいですから、僕から連絡するまで待ってなさい」
―――ピッ…ツーツーツー
【Always 10】
「おい、こら、待て、天蓬!」
また一方的に切りやがって、アノヤロー
人の話はちゃんと聞けと何回言った事か
俺は自分の携帯の不通音を聞きながら溜息をついた
もう一度掛けてもどうせ天蓬の事だ
電源を切ってるだろう
後で時間をおいて掛けるのが得策だ
俺もよくこんなのと付き合ってるよな
しかも結婚を決めた相手だ
悪趣味と言われても否定出来ないよなあ
けど惚れてるんだから
まあいいさ
蓼食う虫も好き好きってな
さて俺も仕事を片付けてくるか
【Always 11】
窓を大きく開けて僕は外へと煙草の煙を吐き出しました
あー良い天気ですね
こんな日は仕事したくないです
えーと今日は夕方からでしたっけ手術の予定は
まだ時間ありますね
携帯の電源は切りましたから当分は静かですし
そのうち又捲簾から電話があるでしょうし
僕は取り敢えずスケジュールの確認だけしておけば
……面倒くさいなあ
でもするまで煩く言ってくるでしょうし
確か自分達だけじゃないんだから…とかなんとか
……金蝉に確認しておいてもらいましょうか
【Always 12】
「…はい、判りました、悟浄。もう少し詳細が判ったら連絡して下さい。…そうですね、多分大丈夫だと思いますから。ええ、緊張しそうですけどお会い出来るのが楽しみですから。え?心配って…そんな事ありませんから。……///僕が好きなのは貴方だけです。怒ってませんよ…ヤキモチ妬いて貰えて嬉しいのですから…僕、変ですか?…良かった、悟浄も同じで。……はい、じゃあまた」
頬が火照っています
どうして未だに悟浄と話すとドキドキしてしまうんでしょう…
【Always 13】
悟浄と出会ったのは、偶然と偶然が沢山重なった事からだと思います
悟浄は『運命』だと、にこにこと満面の笑みで言ってくるので
僕もそれに面映ゆく思いながら、頷いています
両親が早くに亡くなって、姉の花喃との2人暮らしをこの春までしていました
花喃が仕事と結婚で、海外へと行って
僕は一人暮らしを始めたのですが
元々、家での仕事の為、あまり人との付き合いがなくて
苦手なのもあって、内に籠もっている方が多かったんですよね
それがあの日
初めて会った悟浄にプロポーズを受けて結婚をするまでになるなんて
人生って本当に先が判りませんね
僕が姉以外の人をこんなに好きになるなんて…
【Always 14】
八戒と初めて会った時
俺は八戒に一目惚れしてたんだよ
はっきり判ったネ
八戒も俺をスキになったってのをさ
だかさ八戒は俺のモンなんだ
落ち着いてておっとりしたカンジで
八戒は大人しい
けど結構気ぃ強くてさ
譲らないトコは譲らない
……それで大ゲンカしたコトもあるんだよな〜
でもさそれもアリ
八戒とは表面的な付き合いするつもりじゃねーから
いっこでも少しずつでも分かり合ってきたいって
思ってる相手なんだよ
あーこんなマジな俺って
マジこっ恥ずかしいって
【Always 15】
さて4人全員が揃いましたので次のステップにv
これから婚姻を通して一つの家族になろうとしている4人が
顔合わせの為に会食をしようと
それぞれに都合を付けて(日程を決めるまでに一悶着有り)
梅雨の合間の晴れの日に弟の悟浄が決めてきたお店にと
一同介しました
緊張と期待と不安と好奇心をミックスしながら
【Always 16】
天気予報の当たった朝から晴天の日曜日
昼食をという事で個室での懐石料理
『初めまして』と頭を下げた挨拶から始まりました
「そんなに固くならなくていいから」
「そーそー緊張しすぎ」
「あ、はい…」
「僕は緊張なんかしてませんよ」
「誰がお前の事を言ってる」
「え〜、心配してくれないんですか」
「されたいのか」
「して下さいv」
「だったら、されるようにしおらしくしてろ」
「してるじゃないですか」
「どこがだ」
「ここです、ここ」
「兄貴〜」
「………」
どうやら、初対面の緊張は解れた様…な?
【Always 17】
「大丈夫かぁ、八戒」
「あ…はい、大丈夫ですよ、悟浄」
兄とその婚約者(仮)の問答を横に
悟浄は何よりも大事な八戒へと心配そうに
その顔をちゃんと見ながら話し掛けました
八戒も悟浄が心配してくれるのが判るので
心配を掛けないようにと返事をしました
多分…じゃなく、確実にこの4人の中で
一番の人見知りは(他の3人には当て嵌まらない単語)
八戒、でしょう
「本当に大丈夫ですよ?」
「ん〜しんどかったらちゃんと言えよ? 俺にさ」
「はい、ちゃんと言います」
「そーしてv」
どうやら大丈夫そうですね
【Always 18】
「天蓬」
「はい」
「手加減って言葉は知ってるよな」
「はい」
「だったらその言葉を頼むから実行してくれな」
「…判りましたよ」
「俺とか悟浄はいいが、初対面の八戒にはな」
「…判りましたってば」
一寸、煙草を吸ってくると捲簾が天蓬の腕を引っ張っての
喫煙所の会話、でした
「僕だってね、悪かったなって思っているんですよ」
「判ってりゃいい」
「でもね、あーんな可愛らしい美人さんの困惑したお顔っていうのも風情があって」
「天蓬」
「判ってますってば、そんな怖い顔しなくても」
「頼むから、いい子にしててくれ、今日は」
口元の煙草を取り上げて、天蓬の顎を取って
捲簾はその唇に口吻けた
違う煙草の味を感じつつ
【Always 19】
「悟浄」
「あ、はいはいはいっ!」
「僕は大丈夫ですから、そんなに焦らないで下さい」
「八戒〜」
「本当ですから、最初は吃驚してしまいましたけどね」
くすくす笑いの八戒と冷や汗たらりの悟浄が
兄と兄嫁が退出した後の部屋に残されて
額をくっつける程の近さで、こそこそと話しています
「悪気はないって判りますし」
「そ?」
「ええ、緊張を解してくれようとしていたんですよね、きっと」
「そ、そ、そーだなv」
ポジティブ
その言葉が頭の中をラッパと共に鳴り出してた悟浄は
知らないでいるのも幸せだよな、と
にこっとした八戒の笑顔の誘惑に降参して
ちゅっと可愛らしいキスをしちゃいました
【Always 20】
再度、部屋の中に4人が集いまして
気を取り直して、お食事会を再開致しました
先程までのキスの余韻を各自の胸に収めて
さて、美味な料理も粗方お腹の中へと次々と片付けて
少し緊張の取れた歓談が進んでおりました
話題はあちらこちら
仕事とか、今住んでいる所とか、趣味とか…等々
たわいない話から、相手の人となりを知ろうと
色々と話しておりました
さてさて、そろそろ今回の顔合わせのメインイベント
肝心な話に入ろうと
一番の長老……いえいえ、年上の捲簾が口を開きました
【Always 21】
「あのさ、こいつと話したんだが」
と、兄の捲簾は弟の悟浄を指差しました
悟浄はコクンコクンと頷きました
「顔見せも終わった事だし、これからの具体的な話を進めたいんだ」
それに、天蓬と八戒が今度は頷きました
神妙な表情と好奇心剥き出しの、対称的な顔で
「式は一般的にやろう、それぞれの立場もあるしな」
えーっ面倒臭いのに…と、モロ顔に出た天蓬と
2人で見つめ合って頷いた悟浄と八戒
ひとつ大きく息を吸ってから、捲簾が口を開きました
「それでな、細かい事は追々決めていくとして
結婚後の話なんだが、4人で一緒に住まないか?」
【Always 22】
「「えっ!?」」
2つの澄んだ声の、デュエットが
捲簾の発案に驚いた響きを持って口にされた
「悟浄?」
「うん、八戒がイヤじゃなければさ、と思ってよ」
「良いのですか?」
「ほら、俺んち広さだけはあるからさ
2階建てだし、上と下に住めばさプライベートも守られるじゃん」
「…僕は」
「ダメぇ?」
「嬉しいです、悟浄」
【Always 23】
弟夫婦(予定)が、早くも新婚さん色の空気を醸し出して
にこにこと、幸せそうに話している前の席で
もう一組の兄夫婦(予定)が、顔を見合わせておりました
「捲簾?」
「ん?」
「初耳なんですけど」
「そりゃ、今初めて話したからさ」
「はあ…」
「嫌なのか?」
「嬉しいに決まってるじゃないですか」
【Always 24】
顔合わせの会も無事終わり
先ずは第一ポイント通過と言った所でしょう
取り敢えず決まった、二世帯同居と二組同時挙式
それを骨格として、詳細という肉付けの始まりです
主に、お兄ちゃんの捲簾が…
その細々としたサポートに八戒が
その使いっぱに悟浄が
天蓬は………聞かぬが花と言うものでしょう
【Always 25】
外科医という仕事はなかなかに忙しいものなんですよ?
捲簾に『白衣で煙草吸ってる姿しか見た事ない』と言われてもね
…全く失礼なんですから…ぶつぶつ
あ、論点がずれました
なので、結婚にかかる諸事情…
諸々の雑事はお任せでお願いしていたのですが
捲簾に電話で掴まってしまいまして
今日、出掛けてきた訳なのですが
ぶつぶつ…
「いいから大人しくしてろ
ウェディングドレスの採寸にお前が来なくてどうするんだ」
【Always 26】
期限というものを決めたら、その中でやるべき事はやらないと
後にずらすって事は出来ないだろうが
やっと掴まえた、婚約者…天蓬を引っ張って
…これ以上ぶつくさ言うなら、肩に担いでいく気だったぞ
ドレスの仮縫いに漕ぎ着けた
『全部お任せしますからv』のにっこり笑顔に
ドレスを選んだのは俺だが
サイズは俺でいく訳にはいかないんだからな
「捲簾〜、まだ掛かるんですか〜」
「…終わるまでジッとしてろっ!」
【Always 27】
「悟浄、今日は大丈夫なんですか?」
「もっちろんv ちゃーんと、休み取ってきたぜ」
「お仕事…」
「そんな心配な顔をしなくても平気だって〜
俺、普段からきちんと仕事してんだからさ」
「ええ、それは知ってます」
「それにさ、仕事も大事だけど〜結婚式の打ち合わせだって大事じゃん
なんせ、一生に一回だぞ?」
「はい」
「俺、すっげ楽しみなんだv」
「僕もです」
にっこりと花が綻ぶ如く微笑んだ、未来に奥さんに
べた惚れの悟浄は、思わず顔を赤くしてしまいました
【Always 28】
「でさあ…俺、これがイイって思うんだv」
「ええ、僕も良いなって思いました
…でも、良いのですか? 僕達で決めてしまって」
「あ〜、それはイーの。兄貴に全権委任されてっからさ〜
逆に申し訳ないって言ってんの。一任しちまってって」
「いえっ、そんな事は全然ないです」
「んv だからさ一生懸命決めよーぜv」
「はいv」
「じゃ、船上結婚式で決定な〜♪」
【Always 29】
「疲れた後の珈琲は美味しいですよねv」
「…俺の方が疲れたわ」
「ええ〜、何で捲簾が疲れるんですか、何もしていないのに
僕なんか仮縫いの間、ずっとじっとしてなきゃならなくて…」
「…嘘付け
あれのどこが、じっとだ」
先程までの、ウェディングドレスを作る為のサイズ計りから
第一段階の仮縫いの間、超の付く自覚の無い我が侭婚約者を
宥め賺していた我が身を振り返って、捲簾は
気分を落ち着かせる為に珈琲をゆっくりと飲み始めました
【Always 30】
目を軽く伏せて、珈琲を飲み始めた僕の婚約者を
そぉーと、盗み見してみました
精悍な顔ですよね…別に僕、面食いじゃない筈なんですけど
この人の顔形は好きです
僕の好みです
毎日見るのに値するんですよね…
結婚を決めた決め手の一つなんでしょうね…きっと
…こう言うと、口煩く言われるので黙ってますけど
結婚を顔で決めるんじゃないだの、何だのって
…本当に口煩いんですから
そう言えば…
捲簾は何が決め手で僕と結婚しようと思ったんでしょうか??
【Always 31】
又…何か、ロクでもない事を考えているな…あの顔は
天蓬は自分の事を『ポーカーフェイス』だと思っているらしいが
俺にしたら、感情がそのまんま顔に出るタイプで
判りやすい事、この上無い
どうせ、我慢し切れずに後で思っている事を話し出すだろうから
その時に聞けば良い
俺も大概物好きだよな
人にも言われるが、自分でもかなりそう思う
この天蓬と、結婚を決めたんだからな
けど、人から何言われようとそれを撤回する気は無い
俺と天蓬で決めた事だからな
………ただ
そういや…決め手は何だったか…な
【Always 32】
「捲簾捲簾」
「ん? 何だ」
「僕のどこが好きで、どうして結婚しようって思ったんですか?」
「ああ、お前だから、だな」
「僕…だから?」
「お前だから好きで、お前だから結婚するんだ」
そうか…これが、決め手だったか
自分で言った答に、内心で感心していると
目の前の天蓬が、笑っていた
ああ…
この子供みたいな、俺にだけ向ける笑顔が
一番の決め手だったんだな、俺には
【Always 33】
「そう…なんですか」
「そう、だ」
「単純なんですね」
「それで良いんじゃないか」
「そうですね」
「ああ」
意外にも、簡単な事なんですね
複雑に考え過ぎていた所為か、吃驚です
この答には、僕一人では辿り着けなかったでしょう
捲簾が居るからなんですよねぇ…
と、いう結論となりました
ふふ
でも気になる事が一つ
捲簾が僕を見る目に、時々保護者的なものが
混ざる気がするのは気のせいではないですよね?
【Always 34】
『船上結婚式』
悟浄が探してきてくれた様式は
僕が初めて聞くものでした
でも、その言葉を聞いただけでドキドキしてしまいました
どんなものなのか、判らないのもありますけど
それが、どんなものなのか想像すると…
とても、幸せな気持ちになっていきます
「八戒」
「あ、はい」
「どんなもんか一緒に見にいこv」
「ええ、僕はいつでも良いですよ」
「んじゃ、明日v 善は急げってなvv」
【Always 35】
あー、可愛い
なぁんで、八戒のするコト、ひとつひとつは
俺をこんなに刺激するんだろーなー
不思議だヨ
『結婚式』の相談をメールだの、携帯だの
こうしてデート兼用で、ずっとしてんだな
俺達だけのじゃないけどさ、兄貴達のも一緒なんだけどさ
こうして八戒と二人で決めてくのって、すっげ楽しい
ワクワクしちまう…
「悟浄」
「あ、ナニナニ?」
「模擬結婚式とか披露宴とか見られるみたいなんですけど」
「見たい?」
「ええ、どんな雰囲気か判るんじゃないかって」
「了解〜♪」
【Always 36】
日差しの温かい晴天
今日は悟浄と、約束した式場への下見の日です
天気が良くて、本当に良かったです
「八戒〜、待たせてゴメンな★」
「3分遅刻です、悟浄」
「あーゴメンゴメンって」
一寸悪戯気分で、怒ったふりをしてみたら
悟浄は本気で慌ててしまって
僕はくすっと笑って、悟浄へとにこりと笑いました
「八戒〜」
「怒ってませんから」
「あー良かったv んじゃ、早速見に行こっか」
「はい」
差し出された悟浄の腕に、そっと触れて
僕は悟浄と、会場の中へと入りました
【Always 37】
八戒は
ナンて言ったらいーか…こーゆーのに全然慣れてなかった
自分から腕を絡ませるなんてしたコトねぇんだろうな
俺が腕を差し出して、俺がおねだりして
やっと、手を伸ばしてくるってカンジ
「…悟浄、これ綺麗ですね」
「あ、ホントだ〜貰ったら嬉しいかも」
「僕も欲しいです」
「んじゃ、これに決めちゃおっか」
八戒が目に留めたのは、引き出物コーナーの
櫻の模様の入ってる一輪挿し
薄いピンクに白の櫻が散りばめてあんの
すっげ、キレイなんだ…八戒には負けっけど
キレイな…キレイに真っ白な、俺の八戒と
あーーーっ、早く結婚してえっ!
【Always 38】
一番、決めるのに迷うと聞いていた引き出物が
直ぐに決まって、安心しました
悟浄も賛成してくれましたから、大丈夫ですよね
喜んで貰える物を選ぶのって、大変なんですね…
「チャッチャッと決まってさ、先行きイイな〜♪」
「ええ、本当に」
「あと…決めるのって…」
「色々ありますよね」
その色々の中のひとつに、僕はちらりと目を向けました
悟浄の式服
どれもこれも似合いそうで、悟浄が着たら
きっと、どれも映えるのでしょうって思いました
「なあに、考えてんの?」
「あ、いえ…別に…」
「すっげニコニコしてたぞ〜」
「………内緒です///」
【Always 39】
慌ただしく
忙しなく
けど、気恥ずかしい幸せを伴って
式の準備は進んでゆき
式の日が近付いてきます
細々とした事を決めていく八戒
それに大雑把に一緒に決めていく悟浄
全体的にそれを見て把握していく捲簾
……………それと、何処吹く風の天蓬
もうすぐ二組のカップルの挙式ですv
【Always 40】
新郎の捲簾が全面的に選んだのは
(新婦に丸投げされたともいう)
白い肩を隠さずに出し、長い白の手袋で細い手を覆っていて
シンプルに淡い光沢を持った白いドレスでした
黒髪が垣間見えるヴェールは、細かい小さな花を象ったレースで
ドレスの露出を抑える様に、長く垂れ
天蓬を包み込んでいました
捲簾の愛情を纏うように
【Always 41】
悟浄と八戒が2人で選んだのは
清楚をイメージしているのが一目で判る
薄く翡翠の色が入っているドレスでした
襟も胸元も袖も背中も、きっちりと花嫁の身を包み込み
真珠が貝に守られているように
八戒は悟浄の愛情を一身に受けていました
いつでも、どんな時も、微笑みと共に
【Always 42】
式、前夜
悟浄は八戒へと電話をかけていました
「いっよいよ、明日だな〜俺、今から楽しみでさあ」
「…僕は今からドキドキしてしまって」
「寝坊すんなよ?」
「悟浄こそ」
「んじゃ、モーニングコールしてよ」
「いいですよ」
「やったv」
「…悟浄」
「ん、ナニ?」
「…明日」
「明日からずっと一緒だよな」
「ええ」
受話器を耳にあてて、互いの声を愛しく感じて
ぎゅっと受話器を握る手に力を
悟浄も八戒も、込めました
【Always 43】
式、前日
会場から一番近いホテルに
捲簾と天蓬は泊まっていました
捲簾の発案で
「ほら、もう寝るぞ」
「あの〜何でホテルに泊まるんですか〜」
「ドタキャン防止だ」
「そんな事ありませんよ〜ちゃんと行きますよ〜」
「危機管理だと思え」
「何ですか、それ〜」
「早起きするからな、明日は」
「え〜」
「風呂入って、メシ食ってくからな」
「…面倒臭ぃです〜」
「俺が支度してやるから、文句言うな」
「…はぁい」
ぐっと、天蓬の腰を引き寄せて
捲簾はあやすように、キスをひとつ
目を閉じながら、しました
【Always 44】
カーテンを開けると、霧雨が降っていました
一寸心配になりながら、僕は悟浄へと電話を掛けました
「…おはようございます、悟浄」
「……………お…は、よぉ……」
「起きて下さい、悟浄」
「おき…てる、おきて…るぅ」
「悟浄」
「だぁい、じょーぶ…だってぇ」
「二度寝しないで下さいね」
「んv あ、八戒」
「何ですか?」
「今日はピーカンになっから大丈夫」
「あ…はい」
「んじゃ、あとでなv」
「はい、式場で」
僕のどんな些細な心配も
悟浄は綺麗に晴らしてくれるんですね…
さあ、支度をしないと…ですねv
【Always 45】
捲簾の腕枕が外されたのに、眠りから意識が浮上しました
でも目は開かないし、身体もまだまだ睡眠を必要としていて
起きる気がおきません
「いいから寝てろ」
「………」
「まだ余裕の時間だからな…もう少ししたら起こしてやる」
「………」
キシリと音を立てたベッドから起き上がった捲簾の広い背中を
チラリと見て
言葉に甘えて僕はもう一度眠りに落ちました
【Always 46】
式場到着!
ギリギリだったのは、八戒に内緒で〜
完全な二度寝はしてねーもーん
おっと、支度支度
八戒が俺の為に選んでくれた式服〜♪
キッレイな黒のタキシードv
八戒が俺にとっても似合うって言ってくれたんだよな
ナンで一発決め
さあ〜って、さっさと支度して八戒んトコに行こーっとv
【Always 47】
天蓬を介添えの人に渡して、先ずは一段落
充分な時間を取ってあるからな、大丈夫だろ
天蓬には言ってないがな
さて、俺は一服してくるか
天蓬に比べたら、俺の支度なんぞ直ぐに済む
同じ生地で同じ色に揃えた、白のタキシードが
今日の俺の式服だ
ん…これを着て、隣に天蓬を早く立たせたいぞ
【Always 48】
悟浄は…大丈夫、ですよね
遅刻なんて…していないですよね
一寸だけ…心配なのですが
ここは、悟浄を信用していないといけませんよね
「…はい、動かないで下さいね」
「あ、済みません」
「もう少しで、お支度済みますからね」
「はい」
鏡に映っている自分が何か不思議です
つい首を傾げてしまいました
「お綺麗ですよv きっと花婿さんも大喜びされますよ」
「…ありがとうございます」
【Always 49】
ん〜〜〜寝ているなら、じっとしているのは良いのですけど
ただ、立ったり座ったり…言われるままに、じっとっていうのは…
はっきり言って苦痛です〜
『一生じっとしてろって訳じゃないんだ、我慢しろ』
と、捲簾の声が幻聴で聞こえてきそうです
…あと、どのくらい掛かるんでしょうか
気が遠くなりそうです…
「はい、お支度仕上がりましたよ」
「…あ、どぅも」
「本当にお綺麗で、旦那様になる方は幸せですね」
【Always 50】
「はぁっかいぃvvv」
「あ、悟浄」
支度を済ませて、椅子に座っていた八戒の所に
悟浄がひょっこりと顔を見せました
ちゃんと支度を済ませてから
「すっげぇ…キレイだぁ…俺、また惚れちまったヨ」
「悟浄…///」
「ナンか心配」
「心配って何がですか」
「式の最中に八戒、攫いに来るヤツいっかもな」
「そんな事ありません」
「なくても、あっても絶対渡さねえから」
「はい」
真剣なマジ顔で、八戒の前に跪いて、八戒の手を取って
その手の甲に恭しくkissをしました
【Always 51】
「支度出来たか」
「出来ましたよーとっくに」
「して貰ったんだろ。大人しくしてたか」
「煩い人ですね…」
じっとしてるのに疲れた天蓬が
ふわりと飾られた花嫁衣装の中から捲簾を睨みました
「んーいい出来だ」
「…はいはい」
「天蓬」
「はい?」
呼ばれて、顎を上げられて
ベールの中に捲簾の顔が入ってきて
天蓬の唇へと近付いて重ねられました
「………何、するんですか」
「口紅の色が濃かった。これで丁度いい」
【Always 52】
誓いの言葉は神聖に
未来は見えないものだけど
心で感じ取れるものだから
差し出された掌に
想いを込めて手を重ねて
互いの指にリングを贈り
ヴェールを上げて
生涯を共に歩む事を決めた、ただ一人に
『愛』を誓う口吻けを
【Always 53】
沢山の花と祝福の中、僕と悟浄は式を挙げました
胸が詰まって、誓いの時の言葉もちゃんと言えたかどうか
『はい』…だけは、しっかりと記憶に残っているのですが
隣に居てくれた悟浄の笑顔と一緒に
僕の不安を直ぐに感知してくれる悟浄は
その度に、そっと手を握ってくれたり
大丈夫とウィンクしてくれたりして
…ありがとうございます、悟浄
僕は貴方と一緒になる事が出来て
本当に幸せです…
【Always 54】
人の目なんか気にする方じゃねぇ
だから、八戒をぎゅーっと抱き締めたいのは山々なんだけど〜
一生に一回
八戒との結婚式の最中じゃ、俺もガマンするきゃない
神聖とかっての意味が、判ったよ
八戒が俺の傍にいてくれてるコトだってな
奇跡だよな
俺が八戒を選んだように、八戒も俺を選んでくれたってコトは…
大事にする、大切にする
一緒に幸せになろうな…八戒
照れがどっかイッちまった
俺は八戒の顔を見つめながら、八戒の手をしっかりと握った
【Always 55】
やっと、ここまで漕ぎ着けた…な
紆余曲折&山あり谷ありって、感じだ
天蓬との付き合いにいる覚悟は
ただ、な
俺は天蓬を誰にも渡す気は最初に会った時から、全く無い
だから、この式は通過点であって到着点では無い
これからが、また俺達の一つの始まりだ
『天蓬』と名前を呼ぶと、俺を見る
その眸の中に、俺だけを映す色を見た
天蓬なりの覚悟の色を
愛してる、俺にはお前だけだ…天蓬
【Always 56】
神妙な捲簾の顔を横目でチラッと盗み見ると
思いの他、惚れ直してしまいます
どうして、この人なんでしょう…という自問自答と
どうして、僕を…という疑問は
今も胸の中にありますが
理屈じゃないのが自分が一番良く判っています
だから、これで良いんですよね、捲簾
僕は貴方の隣にいます
一番の傍にいます
離れませんから、それだけは安心してて下さい
僕は愛しています、捲簾…
【Always 57】
神妙な時間が終わり
一斉に、幸福感で揉みくちゃにされる時間が始まりました
「やったな」
「おめでとー」
「幸せになれよ」
「頑張れ」
「カンパーイ」
ノリの良い友人諸氏に囲まれての、大騒ぎ
シャンパンにクラッカーに笑顔満面と
花嫁からのブーケトス
先ずは正統派花嫁の八戒から
白薔薇の蕾を翡翠のリボンで纏めたブーケが
ゆっくりとした弧を描いて投げられました
受け止めた人への幸せが続くようにと
祈りを込めて
【Always 58】
式が無事終了した所為か気が緩んでいたとしか言えない
油断大敵
この言葉が捲簾の頭の中に鎮座してしまった瞬間でした
「いっきますよ〜!」
上機嫌も上機嫌の、自分の花嫁の声と共に
投げられたのは、ウェディングドレスの裾を盛大に捲り上げ
惜しげも無く晒された脚から抜き取られたのは
身に付けていたガーターベルト
制止の声など間に合わず、ポーンと勢いよく投げられました
「天蓬っ、何やってんだっ、お前はっ!」
【Always 59】
「八戒〜、疲れだろ?片付け、明日でイーからさ〜」
「もう少しですから…悟浄の上着、ハンガーに掛けておかないと」
3次会までのお祝い…どんちゃん騒ぎが、無事終了して
新婚の花嫁と花婿は、やっと2人きりになれました
明日一日はホテルに滞在して、明後日新婚旅行の予定です
疲れをちゃんと取る為と八戒とゆっくりする為に
余裕のあるスケジュールを悟浄は組んでいました
「お疲れさんv」
「悟浄もお疲れさまでした」
ぎゅっと八戒を抱き締めて、上機嫌の悟浄に
ふと、思い出した事を八戒は口にしました
「大丈夫でしょうか?」
「あ?ナニが?」
「お兄さん達です」
「あーまー、ん〜大丈夫じゃねえ、新婚さんなんだし」
「そうですね」
あまり的確な答えになってはいないと思うのですが
2人で納得したのだったら、良いのでしょう
きっと
【Always 60】
「まだ怒っているんですか?」
「誰の所為だ」
「僕ですか?」
「他に誰がいる」
「えーと、アレですか?」
「それ以外に何がある」
「しつこいですね」
「だったら原因を作るな、お前が」
初の夫婦喧嘩は夜更けになっても延々と続いておりました
「伝統行事じゃないですか。お祝い事ですよ」
「お前はやり過ぎなんだ」
「折角ですから、派手にが良いかと」
「その脳天気さ、どうにかしろ」
「どうにかしろと言われても」
「しろ」
ガータートス自体はまだ許容範囲だったらしいのですが
花嫁が観衆の目の前で、ご祝儀とばかりにドレスを捲り上げたのが
花婿の地雷を踏んだようで、一方的な不毛な言い争いは続いていきます
初夜…どうするんでしょうね?
【Always 61】
「おはよv八戒vv」
「…悟浄?おはよぅございます…」
一夜明けての、朝の光の降り注ぐ、ベッドの中での第一声
悟浄は八戒の寝顔をずっと堪能していて
ご機嫌で、おはようのキスをしました
「よく寝れた?」
「はい…悟浄は?」
「ぐっすりv」
「僕も、です…悟浄と一緒で」
「俺もだよv」
新婚第1日目
見事なイチャイチャぶりです
「腹、へんない?」
「空きました」
「俺も空いた〜けど、も少しこのまんまでなv」
「はいv」
ぎゅっと、悟浄は八戒を抱き締めて
八戒は悟浄の腕に擦り寄って、幸せに微笑みました
【Always 62】
「…おはようございます、捲簾」
「起きたか…気分は?」
「…無茶苦茶です」
「良く寝てたぞ」
「…無茶苦茶されましたから」
腕枕から上目遣いで睨んでくる天蓬の髪に
捲簾は満足そうにキスをして、抱き寄せました
「捲簾っ、僕はお腹が空きましたっ」
「判った判った」
「喉も渇いているんですっ」
「後でな」
体勢を簡単に変えられて
抗議する口を塞がれて
これはこれで、新婚さんの正しい朝となりました
【Always 63】
「じゃ、気を付けてな、兄貴」
「ああ、お前もな」
「大丈夫だって」
「新婚旅行で無茶はしないか、新妻の為にもな」
「それは、お互いさまだろ」
「俺の場合は妻の無茶だ」
「あ、あっ…あぁ〜」
国際空港、搭乗前のロビーでの兄弟の会話でした
【Always 64】
「お気を付けて、天蓬さん」
「ええ、貴方も気を付けて行って来て下さいねv」
「はい、ありがとうございます」
「お土産買って来ますね」
「はい、僕も買って来ます」
仲の良い美人さん2人の会話はほのぼのとしたもので
周りの人々の視線を釘付けでした
「八戒と離れるのが寂しいですよ」
「ええ、僕も」
…もしもし、新婚旅行に出発なんですよね?
【Always 65】
二組の新婚さんが、別々の場所へと
一部騒がしく、新婚旅行に旅立ちました…
後は無事に、旅行を楽しんできてくれるのを祈るだけです
結婚という一つの節目をクリアして
これから、一人で過ごしていた時間を2人で過ごしていく幸せを
それぞれの想いで、大事にしていく事でしょう
どうぞ、お幸せにv
2007.01.05 UP
★ コメント ★
以前、ブログ連載していたものを纏めてみましたv
:捲簾と悟浄が兄弟で、それぞれの恋人が天蓬と八戒で
この4人が結婚式を挙げる迄を書き綴ってみました
今回、整理してみて書いていた時の楽しさを思い出しちゃいました
こういう甘ったるい話は好きなんですv
モドル