月下美人
〜 捲簾と天蓬
by 遙か
一生に一度だからと
取ったスィートルームでの、新婚初夜
果たして、この2人にその言葉が適用するのでしょうか
…否、皆様の予想を裏切らないかと…
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「天蓬、どこだ」
シャワーを浴びて、部屋に戻って来た捲簾は。
いの一番に、姿が見えない新婚の奥さんを呼びました。
一々探すより、早いですから。
「―――こっちです、こっち」
寝室の方から声が聞こえ、まだ乾かない髪をタオルで拭きながら。
捲簾は続き部屋のドアを開けました。
「何しているんだ?」
「夜景を楽しんでいますv」
愁傷に、ベッドの中で恥じらって待っている訳は無いと、
決め付けていましたが。
自分の予想が当たり過ぎるというのも、時には虚しくなり。
捲簾は肩を落としました。
その様子をきょとんとした顔で、見ている天蓬は。
大きな出窓の所に腰を掛け。
部屋に用意してあった『結婚おめでとう、シャンパン』を傍らに置き。
手には、洗面台に置いてあったコップを持ち。
その中になみなみと注いで、一人、乾杯しておりました。
「…お前は少し位、俺を待てないのか」
「お風呂上がりで、喉が渇いたんですもの」
悪びれるというものには、程遠く。
何を今更の関係だったなと、シャンパンにほんのり酔っている天蓬に。
捲簾は近付いて、キスをしました。
「愛してるよ、奥さん」
「それは勿論、僕もですv」
ご機嫌な儘、首にしがみついてきた天蓬を捲簾は抱き上げました。
「初夜、するんですか?」
「する、んです」
「優しくして下さいね?」
「誠心誠意込めて優しく、してやるよ」
「宜しくお願いします」
「お願いされた」
くすくす、笑い合いながらキングベッドの上に。
2人して倒れ込み、スプリングの振動の中、深いキスを交わす。
天蓬の手が、捲簾のバスローヴを脱がして。
捲簾の手も、天蓬の身体から身に付けている物を脱がしてゆく。
そして、素肌で抱き合う。
体温を直に感じるゼロの距離で、きつく。
「気持ち良いです」
「まだ、何もしていないぞ」
「こうして、貴方を感じるのが気持ち良いんです。
安心するし、温かいし、僕の場所ですし」
「そうか」
気分がハイになっているのか、いつになく饒舌に話す天蓬は。
子供の様な、無邪気さで。
捲簾に愛おしさを感じさせた。
もう一度キスをして、細い躰を抱き締めて。
繰り返し抱き合った中、覚えた天蓬の感じるところを。
捲簾が丁寧に愛撫してゆく。
今晩は、何の技巧もいらない。
心から求める相手をただ、求め愛し合う。
幾つも付けられる、赤い所有の印は。
鮮やかに咲き誇る花の様で、深い愛情を2人にもたらす。
真っ正面から抱き合い、繋がって。
流れる汗と熱くなっていく鼓動、吐息。
それらを全て共有し合って、高みに達する2人で。
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「捲簾」
「ん?」
「いいですね、こういうの」
「どういうのだ?」
「帰らなくていいところ、です」
「ああ」
「別に後ろめたさはなかったんですけどね。
した後も、こうして一緒にいられるのっていいな、と」
「…そういや、よく帰りたくないと駄々を捏ねていたよな。
眠いからだと、思っていたが」
「失礼ですね。
捲簾と一緒にいたいからに決まっているじゃないですか」
「それは失礼した」
「判れば宜しいです」
天蓬の偉そうな物言いに、2人して声を立てて笑い合った。
「さ、寝るぞ。起きたら出発だ」
「何処へ、ですか?」
「新婚旅行に、だ」
「あ、それがありましたね」
「天蓬〜」
「判ってます。一人で行かせませんから起こして下さいね」
「………了解」
天蓬の頭を腕枕して、捲簾は目を閉じる。
寝付きの良い捲簾の寝顔を暫く見てから、天蓬も目を閉じて。
部屋の中は、2人の寝息が静かに聞こえて来ました。
―――――お幸せに…
2007.01.05 UP
★ コメント ★
捲簾と天蓬の初夜編ですv
こっちは喜び勇んで書いちゃいました
初じゃないけど、結婚してのお初ですから
さらりと、読み流して下さいませ
モドル