plastic smile
by 遙か
何カガ、外レタ
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見、てるよな。
気、のせいじゃないよな。
自惚れじゃなく、八戒が俺を見てんのに気付いたのは、ずっと前で。
確信したのは、つい最近。
八戒、俺と目が合うと逸らすんだって。
これって、そうだろ? 俺を見てたってコトだろ?
…けど、ナンで逸らされんのかが、判んねえんだけどよ。
聞いちまえば、イイのは判ってる。
それが一番手っ取り早いってコトも。
けどな…それが、出来ねえ。
まあ…その…出来ねえ理由は、判ってる。
怖いじゃん。八戒の答えが。
ナンて言われっか判んねえ分、怖いんだよ。
すっげ、変。俺。
こんな煮え切らないトコが、あったなんてさあ。
他人がどう思おうと、気にしねえようにしてきたし。
それが、身に付いてたし。
だから、今更、気にしたって仕方ねえのは判ってるってのに。
どーしたんだよ、俺?
八戒にはダメ。八戒にだけ、通用しねえ。
強がって、虚勢張って、ナンでもナイ、いつも通りってのを演じてる時がある。
八戒が昼でも、俺が起きた時に言ってくれる『おはようございます、悟浄』って声、とか。
『好き嫌いは駄目ですよ』って言いながらも、俺の好物を作ってくれる手、とか。
出掛ける時、帰って来た時の『行ってらっしゃい・お帰りなさい』に付く笑顔、とか。
俺が欲しかった『普通』を八戒がくれる。
でも、それに慣れてねえ俺は、素っ気なくしか出来ねえ。
…これってさ、一体、ナンなんだ?
自分のコトも良く判らねえ。
八戒のコトも…。
答えって、あんのか?
あんだったら、知りてえよ。
このモヤモヤのまんまなのは…イヤだ。
すっきりしてえ。
俺は腹を据えて。
又、俺から目を逸らした八戒に近付いて肩を叩いた。
「なあ、八戒」
「…何ですか、悟浄」
深い深い翠の目。
雨の日に見つけた八戒の目に、俺は吸い込まれた。
―――ソンナ目デ、見ツメンナ
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気が付くと、僕は悟浄を見ていて。
悟浄に気付かれると、気付かれないようにと逸らしていて。
自分でも、不可思議な行動ばかりを取っていました。
不審、がられるのじゃないかと思うのですけど。
悟浄を目で追っている自分を止めようが無くて。
困惑ばかりが、増えていきます。
やっぱり…不審がられていますよね。
悟浄、何か言いたそうですし、態度も聞こうとして聞けなくて、ですし。
済みません。
聞かれても、きっと答えられません。
僕が、その答えを欲しいくらいなんですから。
僕の中にあるはずの答えが、まだ見えないんです。
悟浄に拾われて、すったもんだの慌ただしさを過ぎてから。
繰り返す日常が、定着しました。
朝起きて、家事をして…悟浄と暮らす日々が。
思いもかけない平穏で、初めは戸惑っていたのですが。
慣れて…しまったんですね。
悟浄のおかげで。
悟浄の粗雑さは、余計な気を負う事がなく。
それが、悟浄の優しさだと知って嬉しかった事を覚えています。
ただ、それに甘え切る訳にはいかないと思いましたけど…。
僕が早く馴染むようにと、何度も『八戒』と呼んでくれる、悟浄。
『気晴らしだ』と、決して強引にではなく僕を外に連れ出してくれる、悟浄。
雨の夜は『休み』と、一言だけ言って出掛けず傍に居てくれる、悟浄。
…僕は、これ以上、何を望んでいるのでしょう?
悟浄に。自分に。
悟浄に肩を叩かれ、振り返った時に綺麗な紅の眸から目が離せなくなりました。
いつか、終わるものなら、終わらせてしまえばいいのか。
僕は迷っています。
「八戒、俺のコト、スキ?」
「好きです、悟浄」
するりと口から滑り出した言葉に、僕達は固まりました。
一歩、動き出す前に…。
でも、動く事を確信して。
―――ソンナ目デ、見ツメナイデ下サイ
2008.5.8 UP
★ コメント ★
今年の58dayも無事書けました〜万歳!
コンセプトは『恋を意識する迄』です
甘ったるいお話を書きたくなって、書きましたv
八戒と悟浄に捧げます〜♪
モドル