チイサナテノヒラ



by 遙か



大して変わらねえと、思ってた
けど、その同じくらいの手を握った時
守ってやりてえと、俺は思った


≪ ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ≫


八戒んコト、スキになって。
八戒も俺のコト、スキんなって。
両想いっても、どーすりゃいいんだか。
気恥ずかしくって、ギクシャクしてたのが。
少しずつ、ナンとかなってきた今日この頃。

俺の誕生日を知った八戒に『お祝いさせて下さい』と。
メッチャ緊張した顔で、お願いされて『うん、いいぜ』と。
引き攣りつつも、虚勢を張って頷いた俺。

八戒といっと、意地が張れねえ。
八戒が喜ぶ顔が見てえから。
もっと、って欲張ってっから際限がなくなってく。
いいのか、悪いのか…そんなの、考えらんなくなるくれえに。

『八戒』と呼ぶと、振り向いて笑ってくれる。
段々、笑う回数だって増えてきてるもんな。
素で笑ってる八戒が―――スキなんだ。

スキだから、俺が笑わせてやりてえって、思うようになった。
スキな奴が、笑ってんのがこんなに嬉しいもんなんだって。
初めて、知った。八戒で、知った。



「悟浄、今晩は少し早く帰って来てくれますか?」

ソファに寝そべってた俺んトコに来て、八戒が言った。

「イーけど、ナンで?」
「誕生日ですよね、だから」
「出掛けねえよ」
「悟浄?」
「だーから、ドコにも出掛けねえ。ウチにいる。
 ウチで、八戒に誕生日祝って貰う。
 それでいいっしょ?」
「はい、悟浄」

あっ、イイ顔で八戒が笑った。
こーゆーの、もっと俺に見せて?

「腕奮いますね、楽しみにしてて下さい」
「うん、期待してっから美味いモン作ってな」
「はい、頑張りますね」

そう言って、八戒が握り拳をした。
すっげ、カワイイ。本気で思っちまった。
ソファから起き上がって、その八戒の拳をギュッと握った。

「あの、悟浄…」
「嬉しくってさ」
「何が、ですか?」
「八戒がさ、俺の為にしてくれるコトがさ。
 誕生日がめでたいなんて、思ったコト…なかったモンなあ…」

そんだけ言って、今度は握っていた八戒の手に俺は懐いた。
八戒もナンにも言わず、そのまんまでいてくれた。
振り払ったり、ましてや叩いてくるコトなんてナイ。

優しい手、だ。
俺を安心させてくれる手―――八戒の。

「悟浄が僕の為にしてくれるように、僕も貴方の為に何かをしたい…んです」
「俺も同じ」

懐いていた拳に、チュッと音を立ててキスする。
嬉しくてさ、どーにかなりそうだ。

「好きです、悟浄」
「俺もだよ」

もう少し伸び上がって、八戒の腰に腕を回して抱き締めた。
八戒の手が、俺の髪をソッと撫で始める。

「お誕生日おめでとうございます、悟浄」
「ん、あんがと…八戒」


―――花のように降り注ぐ
   溢れてしまう、この気持ちを貴方へ



2008.11.9  UP



★ コメント ★

今年の悟浄の誕生日話です
優しい気持ちで書きました
お誕生日おめでとう、悟浄v





モドル