イチブトゼンブ
by 遙か
最初の一個目の発見
笑った顔が焼き付いた
八戒の、俺に向けて笑ってくれた顔が
俺はそれがイイんだって、知った
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八戒と一緒に暮らし始めて、一年と半年。
まだ、ぎこちなさがある、つーか。
それでも、始めの頃に比べりゃ、だいぶ慣れてきた、つーか。
今まで、他人との付き合いをなあなあでヤッてきた俺にとっちゃ。
八戒の存在ってのは、かーなーり特別なモン。
何しろ、同居してんだからさぁ。
自分に、不思議ってモンだ。
で、そんな八戒と俺は只今、ケンカの真っ最中…。
理由? 今、思えばチョー詰まんナイこと…。
いつものアレしろ、コレしろ、に。
後ですっから、イーじゃんの、攻防戦の末。
八戒が珍しく、ヘソ曲げた…。
んで、冷戦状態…何日目だ?
そろそろ機嫌直してくんねぇかなあ。
マジ、口も聞いてくんない、必要事項以外。
冗談言っても、相手してくんないだろー。
おはよー、とかの挨拶には返事してくれっけど、そんだけ。
強硬手段しようかとも思ったけど、余計拗れそーなんでヤメた。
俺、八戒、大事だからさ。
それにさ、八戒の誕生日なんだよ。
ヤじゃん、誕生日にケンカなんてさ。
一番、祝ってやりたい日に、祝ってやれないなんてさ。
だから、俺は覚悟を決めた。
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悟浄と…ほんの些細な事で、気まずくなって…幾日も過ごしています。
後悔ばかりを抱えて。
この素直にならない自分の性格に、ほとほと愛想が尽きます。
しかも…悟浄限定で。
他の人になら、こんな事にはなりません。そうしません。
流す事が出来るのに、胸の内でどう思っていても。
余計な摩擦や、言い訳などする事が面倒だから、当たり障りの無い態度を取る事が出来るのに。
それが、悟浄にだけ出来ないんです。
意地を張っている、僕がいるんです。
はぁ…どうしてか何て、答はちゃんと判っています。
判っていますけど…判っているから、一歩が踏み出せない。
素直という、歩み寄りが。
同居を始めて、一年半も経っています。
無理じゃないかと、思っていました。
でも、そう思っても、傍で暮らせたらと願った僕がいて。
それを悟浄も受け入れてくれて。
試行錯誤の毎日を、悟浄と過ごしてきました。
嗜めたり、納得したり、譲ったり…。
お互いを認めて、笑い合ったり…そんな風に。
僕と悟浄は。
謝りたいという気持ち。
でも、どう謝ったらいいのかという、躊躇う気持ち。
どう口にしたら…。
悟浄が怒ったままで、許してくれなかったら。
もう、何日も悟浄の顔をまともに見ていないんです。
…無視しましたから。
最初は意地で、今は怖さで…悟浄からも無視されたらどうしようと。
でも、でも…これ以上、この状態を続けるのは嫌、です。
だから、悟浄にちゃんと言わないと。
ごめんなさい、って。
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悟浄の辛そうだった眉が、一気に解かれていく。
八戒の強張っていた肩が、ゆっくりと落ちていく。
互いの表情を見やると、不安が消えていくのを知る。
八戒の身体を抱き抱き寄せる悟浄の腕。
柔らかくなっていく、ホッとする心と温かくなっていく体温。
恋人の全部を欲しいという、傲慢さも。
たった一部でも知る事が出来れば得られる、喜びも。
貴方が、お前が…いればこそのもの。
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きっと、完璧なんて無いんですね
でも、それを求めてしまうのも本当で
いつまでも、最後の一個を探していくのかもしれません
悟浄の『誕生日おめでと』のキスの中、僕はそう思いました
2009.9.21 up
★ コメント ★
2009年の八戒の誕生日話です
喧嘩して、誕生日を切っ掛けにして、仲直りです
結局、今年もイチャラブなお2人さんです
お誕生日おめでとう、八戒v
私より愛を込めて(笑)
モドル