『感謝のキモチ』 by 夢 黎明
どんな時も決して揺らぐことのない背中。
前を向いて。
真っ直ぐに。
傍らに在るその存在にどれほど自分が安らぐだなんて。
周囲を取り囲む冷たく凍えた世界が彼に出逢って動き始めただなんて。
きっと彼は知らない。
知らない。
言うつもりもない。
だが、間違いなく己はこの男によって変わったのだ。
変わることは嫌いじゃない。
変わりゆくことに畏怖は覚えるけれども。
臆病だから。
本当はとてもとても臆病だから。
だから、変化に抵抗がないわけじゃない。
それでも決して嫌いではないないのだ、今の自分が。
天蓬は。
「捲簾、後ろ向いてください」
「ナンデ? 」
「いいから、後ろ」
唐突にそんなことを言い出した副官に怪訝な表情を浮かべ、それでも捲簾は言われるままに背中を差し出す。
目の前の黒い軍服に包まれた男の背をしばらく見つめると天蓬は徐に指を持ち上げた。
「…?…」
荒事には到底むくとは思えないような白い指が広いキャンバスをすべってゆく。
『D・A・N・K・E・S・C・H・O・E・N』
やがて、何かを綴っていた指がぴたりと止まる。
「もう終わり?」
「ええ」
「で、天蓬サンは結局ナニ書いたわけ?」
「さぁ?」
首を傾げる相手には構わず、最後の一文字まで書き終えた白衣の青年は満足そうに微笑んだ。
Danke schoen ―― ありがとう。
☆こめんと☆
『夢色水晶宮』の黎明さまより頂きましたv
ふふふ〜♪ 天ちゃんですv天ちゃんvv
いいなあ〜、こんな天ちゃん(笑)
と、いうことで対になる話を書かせて下さいとお願いしまして。
↓の話を書いてみました。
どうぞ、返品可でお受け取り下さいね(苦笑)
『カンシャの気持ち』 by 遙か
黙っていれば、美人。
口を開いても、美人。
西方軍に着任した時に感じた第一印象は、未だに揺るぐ事はなく。
そんな事をずっと俺に思わせているのは、上司で部下の天蓬元帥。
冷静沈着。荒唐無稽。七転八倒。
掴み所がないと思えば、ツーカー過ぎて何だコイツの時もある。
可もなく不可もなく。
余剰も不足もなく。
背中を預ける事に何の躊躇いもない。
「秘密?」
「当てたら教えてあげますv」
「新手の意地悪かよ。」
「根性無しですか。」
背中に書かれた指の動きは読めた事は読めたが、意図が掴めない。
してやったりといったこの笑顔では、白状なんか決してしないだろう。
だったら。
手首を引いて、引き寄せる。
笑っている瞳の中を見つめながら、唇をゆっくりと合わせる。
ピクリと跳ねた痩躯を逃がさない様に、力を込めて抱き締めながら。
合わせた唇の間から、音にしない言葉を口にする。
『す・き・だ・ぞ』―――と。
2005.5.23 UP
モドル