雷 雨
by 遙か
「僕は、大丈夫ですから。
悟浄、先にシャワーを浴びて下さい。」
確かに、俺がちゃーんと、庇ったから。
八戒は急に降り出した雨からは、濡れてはいなかった。
その分、俺は濡れたけどね。
別に、そんなのはかまわないんだが。
「悟浄、早くっ。
風邪、引いちゃいますよ。」
俺のコトを心配してる、八戒の目にはかなわねえ。
素直に言うコト、聞いちゃうよなあ。
「着替えとタオルは、僕が持って行きますから。」
んじゃ、頼むわ。
俺は濡れた前髪を掻き上げながら、バスルームへと向かった。

やっぱり、雨に濡れたコトで躯が冷えたらしく。
俺は寒さで身震いをした。
てっとり早くと、シャワーをフックに引っ掛け。
適温のお湯をザッと出す。
バスルームの中が、湯気であっという間にあったまり出して。
俺は、ホッと息を付いた。
雨…相当、ひでえみたいだな。
どんどん、激しさを増してるみたいだ。
しかも、雷の鳴る音までが微かに聞こえくる。
そんなコトを俺はシャワーを浴びながら。
ぼんやりと、考えた。
けど…な。
さっき、さ。
雨から庇った、八戒の感触が手に残ってて、さあ。
ちっこいわ。
細いわ。
……柔らかいわ。
参るわ…マジ。
抱きたいのわ、やまやまだっちゅーの。
けど、ホントにいーのかって?
カンジ…なんだよなあ。
俺が八戒を避けちゃう理由。
八戒が女化して、実は、八戒よりも、誰よりも。
俺が一番、動揺してる。
なんでだって、説明を求められるとさ。
超・困っちまうんだが。
繊細な男心っての・笑。
とにかく、今までと勝手が違うだろ。
八戒だってのは、変わんねーけどさ。
躯のラインから大きさまで、今までと違うんだからさ。
はあ〜。
俺は、水滴を浴びてる自分の手を見た。

やっぱり、ここは実力行使しかないですよね。
このままじゃ、嫌ですもの。
僕は、タオルと悟浄の着替えを用意してから。
着ていた服を脱いで、バスルームのドアを開けた。

「はっ、八戒っ!!」
完璧なパニック状態。
よく、ここまでなれるなと、妙に冷静な部分もあることはあるが。
やっぱ。
今の、俺の目の前の状況には。
両手を挙げて、降参してえのに。
その原因が、全く許しくんねえ。
「は、八戒…お、お前っ。」
「悟浄が悪いんです。」
「お、俺が、な、何でっ。」
「僕の事を放っておいて、ちっともかまってくれなじゃないですか。
この躯になってからっ。」
フロん中だから、当然といえば当然だが。
八戒は何も着てねえ。
しかも、そのまんまで。
俺のしがみついてきた。
「ちゃんと、僕の事をかまって下さい。
かまってくれないと、嫌、です…悟浄。」
俺の裸の胸に。
柔らかい、八戒の頬が擦り寄せられてくる。
女の裸なんて、俺様的には慣れ親しんできたモンだってのに。
どうして、それが八戒ってだけで。
俺は、こんなに――。
「――泣いてもしらねえぞ。」
「悟浄にだったら、いいです。」
片腕で、八戒の腰を抱く。
少し、その躯を浮かすように持ち上げ。
もう片方の腕で、八戒の肩を抱き寄せて。
キスをした。
シャワーの飛沫が、俺と八戒の躯に降り掛かってゆく。

ベッドの上に、バスルームから抱き上げて来た八戒をそっと横たえる。
雪の白。
そんな印象が、八戒の肌から連想する。
足跡を付けるコトに、ある種の快感を感じる――そんな、凶暴な印象。
「八戒……。」
名前を呼ぶと、それは嬉しそうに微笑む。
俺の腕の中、俺の躯の下で。
「……怖い?」
「……いいえ。」
肌と肌を直接合わせてるから、良く分かる。
八戒の躯が、緊張して、小刻みに震えてるコトなんてさ。
この強情っぱり。
やっぱ、八戒だって、この女の躯に戸惑ってんだろ?
それを勢いで、誘ってくんだから。
怖いモン知らずってゆーか、八戒らしいってゆーか。
「うーんと、優しくしてやっから、安心してな。」
「…悟浄は、いつも優しい、じゃ…ないですか。」
「そりゃね。けどさ、今の八戒、ヴァージンだろ。ほら。」
閉じ合わせてあった脚の間に掌を忍び込ませ。
中指の先を軽く、八戒の裡へと埋める。
途端。
八戒の躯がビクンと跳ね上がった。
「なっ。そうだろ?」
「…悟浄の…馬鹿。」
「はいはい。
いいから、もう黙ってな。」
なーんか、やっとこさ。
主導権を取り戻せたぜ。
キスをしながら、俺はそう思った。

自分が望んでいたのに。
望んで、この状況になっているというのに。
どうして?
今更?
僕は、僕の上にいる悟浄が。
…怖いと思ってしまうなんて。
自分で自分に、驚いています。
悟浄の堅い肩。
広い胸。逞しい腕。
全部、知っている筈なのに。
何故、躯が震えてしまうのか。
分からないんです。
「……あっ……んん。」
悟浄の唇が、僕のカフスの付いている方の耳を甘噛みしていく。
噛んだ処を今度は、嘗められて。
『八戒』と、低い声で囁かられて。
いつもの躯に灯る、快感がじわりと沸き上がってくる。
首筋に、悟浄が顔を埋めてくる。
肩の丸みの部分を大きな掌が包み込むようにして。
首への愛撫に、無意識に逃げようとする躯を抑え込まれる。
「悟浄…。」
「そ、俺だよ。お前を今抱いてんのは、俺だろ。
安心しなって。なっ、八戒。」
返事をする前に、キスが一つ。
指が絡められて、しっかりと握られて。
安心感と共に、熱くなっていく躯。
悟浄の触れてくる処が、僕を支配していく。
やっぱり、いつもと感じ方が違うのは、この女性の躯のせいでしょうか。
悟浄の掌が、とても熱い。
胸を下から揉み上げられて、乳首を吸われる。
「あ、…だ、め………ごじょ…。」
「ダメじゃねえって。気持ちイイだろ。
イイ子にしてんだぞ。もっと、してやっから。」
その言葉にかあっと恥ずかしくなる反面。
僕の躯は、悟浄からの愛撫を期待して熱くなる。
何度も、胸にキスをしてその跡を残していた悟浄の唇が。
不意に、下へと降り始めた。
僕のお腹の引きつった傷跡も、丁寧に嘗められて。
僕は過剰に感じて、全身を跳ね上げた。
それを今度は宥めるように、掌が触れてくる。
「んっ。……ぅ、うん。」
声が鼻に抜けてしまう。
息がどんどん、熱くなってしまう。
思考がとろけだしてしまう。
悟浄に抱かれて、悟浄としている事に……。

さて、と。
これからのコトが、肝心要。
俺は力の抜けきっている八戒の両脚を立たせ、左右へと開いた。
しどけないってのを具現している、八戒。
息は絶え絶え、目は潤んでて、涙が溢れている。
俺は八戒の足首をしっかりと掴んで。
八戒の女の部分に舌を這わせた。
「いっ、いやあっ。」
八戒の抵抗は、無視。
下から上へと、嘗める。
それを何度も何度も、繰り返す。
舌の先を窪みの中へ、押し込む。
すると。
「あーーっ。」
さっきより、一段と高い悲鳴が上がり。
八戒の躯が、硬直して。
波が引くように弛緩していく。
そして、堰を切ったように。
八戒の裡から、とろりとしたモノが溢れ出してきた。
それを確認して、俺は躯を起こし。
指を一本慎重に八戒の裡へと滑り込ませた。
指が感じるのは、柔らかさと熱さ。
そして、もう一本…もう一本、増やしていく。
中を傷つけないように、中を広げるように。
俺は八戒の躯を準備させていく。
「いい、か?」
コクンと、縦に首が小さく動く。
俺もここまでくっと、余裕なんて殆どなくなっちまってるが。
何とか掻き集めて、俺は狙いを定めた八戒の裡へと俺を呑み込ませていった。
「ごじょ、う……ご…じょ…う、ご……じょおっ。」
「はっかいっ。」
加減なんか、もう、出来ねえ。
いてえだろうに、一言もそんなコトは言わず。
八戒は俺を呼んで、俺にしがみついてくる。
八戒の俺を初めて受け入れる部分を。
俺は俺自身で、侵略していく。
守られていたモノを力で押し広げていく。
その感覚に、頭の芯がぶれていく。
汗が滴り落ちる。
八戒を乱暴に力の限り抱き締める。
八戒の全部を俺のモンにする為に。
そして、来る感覚を手に入れる。
駆け上がった先の、あのスパークを。
俺は怠い躯を叱咤して、八戒の上からどいて横へと転がる。
八戒を俺の上へと抱き上げて。
「好きだぜ、八戒。」
「僕も好きです。悟浄、貴方の事が。」
八戒の躯をゆっくりと抱き締め。
行為の余韻に浸っている俺の耳に。
雷の音が遠離っていくのが…聞こえた。
2001.5.13 UP
★ コメント ★
サブタイトル【ねことねずみ】でしたあ。
さて、どっちがどっちでしょうね・笑。
さてさて、この八戒女の子化シリーズが、なかなかの好評を得ていて。
書き綴ったモンとしては、嬉しい限りです。
このお話、パターンを変えた
【八戒ちゃんの処女喪失編・第2弾】なのです。
まあ、何回喪失しようが、その時に貰うっちゅーか、奪っちゃうのは。
悟浄です。
羨ましいですね……………悔しいっ。
ちなみに、この話の打ち込み時のBGMは…。
最遊記のオリジナルサウンドの中の
【悟浄のテーマ&八戒のテーマ】です。
私、一体、何をやってるんでしょーね。
だって、途中で眠くなっちゃって、景気付けに選曲したんですう。
はは。
あと【ふぉーりある・大笑】も聴いてました。
