おくすり
【服用に際しては…】
BY 遙か
こほん。
ん――何だか、咽がいがらっぽいっですね。
風邪の、引き始めでしょうか。
だったら、早目に薬を飲んでおきましょう。
えっと…3錠…ですね。
こくん。
何でも、物事を先回りして、予防線を張るのは。
八戒の習性の一つ。
だから、この行動も至極当たり前の事でした。
ただ、先読みの力など、普通、誰にもありませんので。
これから、起こる事を知ったならば。
絶対に、飲まなかった事でしょう……。

「八戒ーっ、たっだいまあーっ。」
「お帰りなさい、悟浄。今日は、早いんですね。
まだ、11時ですよ。どうしたんですか? 負けでも、込んだのですか?」
「ちゃう、バカ勝ちっ。あんましにも勝ち過ぎたんで、退散して来たのよ。
あれ以上、勝ってたら洒落になんなくなって、マジ恨まれちまう。
んだから、お土産買って、八戒んトコに帰って来たの。で、はいよ。」
「ありがとうございます。お酒…ですよね、これ。
えっと…白乾酒?」
「そ、飲んだ事あるか?」
「いいえ。美味しいんですか?」
「ああ、美味い。で、強いんだな。」
「確かに、随分と強いお酒みたいですね。」
「そうだろ、やっぱ、こーゆーのは八戒とじゃなきゃな。」
「なんか、人の事をのんべみたいに言わないで下さいよ。」
「まあ、いーじゃん。今の俺、気分イーんだからさ、気分良く付き合ってよ。」
「はいはい。じゃあ、何かおつまみを作りましょうね。」
「そんじゃ、俺はグラスの用意すっか。」
いつもの会話。
パターンは様々あれど、甘えたり、甘えられたりの。
2人だけの、会話がされて。
2人とも、ご機嫌良く、良いお酒と美味しいおつまみを間に。
杯を交わしていきました。

始めにきたのは。
くらり――とした、眩暈。
そして、酩酊感。
『あれ? もしかして、僕、酔ってるんでしょうか?』
酒類関係に、滅法強い八戒は。
実際に、酔った経験が無い為に、判断が付きかねるのですが。
話に聞いていた、お酒に酔うというモノに、今の自分が一致しているみたいで。
今の自分の状況に少なからず驚いておりました。
すーーっと、足下の力が抜けていき。
自分の物ではない、感覚。
身体の芯が温かいというより、一気にカッと熱くなる。
思考が纏まらなくなり、視界がぶれ始める。
それらが、心地良くて。
八戒は、ふわりと微笑んだ。
『えっ、もしかして、八戒が酔ってる?』
不意に、目の前で変化していく八戒の様子に。
悟浄は目を見開いて驚いた。
今の今まで、一度だってお目に掛かった事のない、八戒が酔っている姿。
何度か、どうしても見たくて試したのだが。
その度に、撃沈するのは自分の方なので、最近では諦めていた。
それが、白い滑らかな肌が。
すーーっと、掃く様に、桜の花びら色に染まっていく。
目元がとろんとしてきて、肩の力が抜けていく。
それと何より、初めて見る、妖艶としか言い様のない、微笑。
碧の貴石が、誘う様に、潤んでいた。
「…悟、浄。」
「八戒?」
「しません、か?」
「するって…お前。」
「ぼく、すごく、したいんです――あなた、と。」
「マジ?」
「ええ。ダメ、ですか?」
「そんな訳、ねーだろ。」
悟浄と八戒の双方から、手が腕が、伸ばされ。
引き寄せ合い、唇が重なった。
灯りは消されているけれども、月の明かりが窓から部屋の中へと入り込み。
薄暗い部分と、夜目にも分かる部分に分かれていた。
夜の静寂の中では、時計の時を刻む規則正しい音と。
睦み合う2人の、音が支配していた。
ベッドに横になった悟浄の上に、八戒が四つん這いになり。
互いのモノを自分の口腔で、高め合っていた。
深いストロークを繰り返し、浅く形をなぞる様に嘗め合う。
羞恥心など、凌駕していた。
ひたすら、相手の感じるトコロを熱心に求め合う。
悦楽のみを追っていく。
「…は、っかい、来い…よ。」
「……ん…ごじ…ょ。」
上半身を起こし、八戒は悟浄へと向き合った。
細い腰が、大きな掌に掴み取られ、崩れ落ちそうなのを支えられる。
「おっけ、…ゆっくり、な。」
「……は、ぃ。」
呼吸を合わせて、膝を降ろしていく。
絞られていた蕾が、綻んでいく。
「くっ。」
「あ……あっ、ああっ。」
一部分だけの、肉体の繋がりが。
こんなにも、快感と安堵を湧き上がらせる。
「…ごじょう…ごじょ、お……ご、じょおっ。」
「はっかいっ。」
壊れそうな、壊れてしまいたい、壊してしまいたい。
そんな激しさで、2人は同じ場所へと堕ちていった。

その後、その時の事を2人とも鮮明に記憶していて。
何回か、どちらともなく(いえ、悟浄の方が積極的に・笑)、試したのですが。
八戒が、酔っぱらう事はありませんでした。
まさか、事前に飲んでいた風邪薬との相乗効果があった事など。
思い付きもしませんでしたので・笑。
2001.9.26 UP
★ コメント ☆
7878のキリリクをGETして下さった零さまへ捧げます。
「めちゃめちゃに酔っ払う(酔っ払わされた?)八戒さん。
(本人無意識ですが、お色気+お誘いモード+甘え度が対悟浄=8割増しで
対その他=2割増しvvv)
次の日ちゃんと記憶も残ってます。」
ていうので、いいでしょうか?
モチロン裏モードイッちゃっても良いですvvv
(むしろそっちの方が・・・。)
以上が、零さんからリク内容でした。
んで、頑張りました。
だって、楽しいネタなんだもーん。
零さん、ありがとうね。
クリアしてるかにゃあ。
それだけが、心配です。
でも、八戒さんを酔わせてみたいってのが書けたから。
深く考えるのは、止そう。
悟浄が、又、美味しい思いをしているのには…くっ、悔しい〜(>o<)
