【 天然素材 U 】
by 遙か
俺のシャツを着た八戒を。
後ろから、やんわりと抱き締めた。
鼻先で、さらりと八戒の髪が動く。
シャツの襟の、丁度、肌との境目にある、俺の付けた痕が。
ちらちらと、見える。
首筋に顔を埋めると、擽ったそうに、身動いた。
「危ないですよ、悟浄。
コーヒーが零れてしまいます。」
「飲んじゃうから、貸して。」
片手でカップを受け取り、もう片手で八戒の腰を抱いて。
離れないようにしてから、俺は一気に中身を飲み干した。
「ごっそさん。」
「いいえ、どういたしまして――ん。」
普段も我慢出来ねえが、至近距離での八戒の微笑なんて。
絶対に我慢が効かなくなる。
だから、当然の如く、そのままキスをする。
「……悟浄、ってば、不意打ちは止めて下さい。」
「お裾分け。美味いだろ、八戒のコーヒーはv」
そう言って、俺は八戒の躯を反転させて、正面を向けさせ。
もう一度、腰を抱いて、抱き締める。
ゆっくりと、唇を重ねてから。
静かに、角度を変えて唇を開かせる。
「あ……ん。」
八戒の声、吐息、それまでも甘く感じる。
今は、性急にするよりも、じっくりと八戒を堪能したい気分。
舌を絡ませると、初めは逃げるけど。
ちゃんと、時間を掛ければ、応え始めてくれる。
真珠色の歯列をなぞり、俺は薄目で八戒の全身に視線を流した。
袖のトコロ、俺の腕が長いから一杯余って、皺作ってて。
手の甲を半分まで隠して、綺麗な指先だけが覗いてる。
胸んトコロの釦は、当然、填められず。
やっと、留めているってカンジだ。
しかも、胸の谷間はしっかりとあって。
全体的に大きいシャツの中、胸の部分だけツンとしている。
裾の方は、小さいおしりは隠してるけど、すらっとした脚が見えてる。
今まで、こーゆーシチュエーションなんか、いっくらでも体験してきたってのに。
そん時は、そん時で、それなりの興奮もしてたってのに。
相手が、八戒ってゆーだけで。
これまでの経験値なんぞ、綺麗にふっ飛んでいる。
いっくらでも、蜂蜜みてえにトロトロに甘やかしてやりてえし。
痕が消えない位に、きつく、俺に縛り付けたくなるし。
感情が、すっげえあっちこっちに揺さぶられてる――俺。
すっげえ、好き。
俺が八戒に、惚れてるって自覚する。
だから――。
「も一度、抱いていいか?」
神経が焼き切れてしまいそうな、錯覚。
悟浄の髪の色、瞳の色が――炎を連想させるからでしょうか。
肌の上に、悟浄の指が、掌が触れると。
意志を離れて、躯がピクリと反応をしてしまうのです。
今、僕と悟浄を隔てているのは、悟浄のシャツ一枚。
悟浄の素肌の感触が、薄いシャツを通して僕に伝わってくる。
堅くて、熱くて、その触れ合っている部分から。
どうにかなりそうな熱が、僕に移されてくる。
自我が崩れるのは、好きではありません。
お酒を飲んでも酔わないのは、そういった気持ちからかもと思っています。
けれど。
今の。
僕は。
悟浄の腕に抱き締められて、悟浄の胸の中に居て、悟浄とキスを交わして。
このまま、悟浄だけで何もかも埋め尽くしたいと、思っているのです。
悟浄が僕を欲しがってくれるのが、嬉しい。
このまま、悟浄が望むままに、僕を奪って欲しいと。
心から切望している、自分が不思議で…嬉しい。
好きです。
あなたが、とても。
僕は、あなたが、好きなんです――悟浄。
「はい、悟浄。」
はにかんだ微笑みと甘さを含んだ呟きが。
白いシーツの海へと、沈んでいった。
2001.9.2 UP
トモコさんより、このお話のイラストを頂きました。
このページのどこかに隠してあります。
頑張って探してみてね。
☆ コメント ★
SIMOONのトモコさんに捧げます。
トモコさ〜ん、みんなあげちゃうv
あー、もー、ダメだよー(^^;)
トモコさんとメールしてると、刺激されっ放し。
書くのを我慢出来なくなっちゃう。
【彼氏シャツ】、うずうずしてたんだもん。
書いてる間、トモコさんのビジュアルの八ちゃんがシャツ着てさ。
ゴジョににっこり笑ってるんだ。
私、ノーミソ腐ってますね。はは。
んじゃ、そーゆーコトで。ダッシュ・逃。