FOREVER
by 遙か
「疲れた?」
「えぇ、少し…。
あ、でも大丈夫ですから。」
部屋に入って、俺は直ぐに隣に立つ八戒へと声を掛けた。
疲労の色が見えるのに、それを隠そうと。
微笑んでくれる八戒に、俺はドキリとした。
「それより、悟浄は大丈夫ですか?」
「俺は、へっき。」
横に立つ、俺を見上げる八戒。
その動きで、八戒の髪がサラリと動き。
俺を更にドキリとさせた。
今日は、一日忙しい日だった。
何しろ、人生最良の日だもんな。
俺と八戒の、結婚式なんだぜ。ハハハ。
惚れて惚れて、惚れ捲って。
やっと、今日という日に漕ぎ着けた。
しかも、まだkiss止まりとゆー、今時、珍しくも。
イヤ、俺では信じられない婚前交渉ナシの結婚。
だってよお。
とてもじゃないが、手を出すなんて出来なかったんだよ。
式の準備と仕事の調整で忙殺されていたのも、確かにあったけどさ。
今までの俺の手腕だったら、そんな時間なんぞ捻り出す位。
造作もナイコトだったってのに。
……しなかったんだ。……したくなかったんだよなあ。
俺……。
会う時はさ。
半分以上、式の打ち合わせで色気ナシだったけど。
八戒の顔が見られるのが、嬉しくてさ。
ただ、それだけが。
マジ、嬉しかったんだよなあ。
食事して、遅くなんねーうちに、マンションのドアの前まで。
きちんと送って行って、八戒が部屋に入ったのを確認してから。
帰ったんだよなあ。
kissも…挨拶程度の軽いモン。
本当は、きつく抱き締めて。
貪るよーにkissしてえ、衝動が多々あった。
それこそ、崖っ淵状態………。ふぅ。
けどなあ。
kissひとつで、あんなに身体を堅く緊張している八戒相手に。
それ以上、出来ねーよ。可哀想で、さ。
で、我慢したの。
我慢して来たんだよなあ、俺。
「…スーツ、皺になりますから、貸して下さい。」
「…ん、あ…あぁ、サンキュ。」
俺の上着を持って、クローゼットへと仕舞う八戒を。
見ていたら、ちょっとした悪戯心が湧いた。
後ろへ、そっと近寄り、耳元へと囁いた。
「疲れたろ?
フロ入って、もお、休もうぜ。」
瞬間、耳朶から首筋から全てが。
綺麗な薄紅色に染まっていった。
「ぼ、僕は後でいいですから。
お、お先にどうぞ。」
その場で固まって、振り返るコトも出来ず。
俯いてしまった八戒の頬に、ひとつkissをして。
「んじゃ、先に入ってくるな。」
と、言葉を残して俺はバスルームへ向かった。
パタンと、バスルームのドアが閉じられた音で。
僕その場に、ペタンと座り込んでしまいました。
頬に掌をあててみると、凄く火照っているのが分かりました。
心臓の音がドキドキと大きく、耳の奥に木霊しています。
どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。
悟浄と出逢って、こうして式を挙げるまでの期間が。
本当に短くて…周りをびっくりさせてしまいました。
でも、僕にとって。
悟浄との事は、自然な事で。
どんどん、気持ちが傾いていくのをしっかりと、自覚していました。
【好き】なんです。
悟浄が…僕は……。
初めて会った時から、今日の式を迎えるまで。
ずっと、バタバタとしていて。
今、こうして2人きりになると、時間が止まってしまった様で。
……落ち着かないんです。
……落ち着きません。
まだ、悟浄とはkissまで、で。
それに、僕はkiss以上の事をした事がなくて。
……知らない、から。
どうしても、恐い。恐いのです。
僕は、どうすればいいのでしょうか……。
「悟浄…。」
と、名前を呼ばれて俺は八戒を見た。
俺と入れ替わりに、フロに入った八戒が出て来ていて。
本当に所在無さ気に立っていた。
八戒は、全体の色調が優しくて、淡い印象を受ける。
俺は暫く、八戒に見取れていた。
「…悟浄?」
もう一度、呼ばれた声に。
俺は立ち上がり、八戒の前へと立ち、そのまま抱き締めた。
「悟浄。」
俺の胸んトコロから、俺を見上げて来る八戒を。
俺は、引き寄せて…優しくkissをした。
着ていた服を一枚…又、一枚と脱がされていく羞恥心。
自分の身体が、悟浄の目に映ってしまうのが、恥ずかしくて仕方ないんです。
悟浄の掌が、僕に触れている。
唇以外にも、kissされている。
何度も、僕の名前を呼ばれている。
それが、とても安心させてくれて…。
僕の中に、気持ちが溢れていく。
素肌の触れ合っているトコロが、熱くて。
意識がはっきりとする様な、霞んでいく様な。
感覚が、変なんです…僕。
どんどん、変になっていくんです。
恐くないと言ったら、嘘になります。
でも、悟浄だから…。
悟浄だから、僕は。
悟浄へと、手を伸ばしました。
抱き締めるのさえ、恐いと思う。
けれど、抱き締めていないと、、もっと恐い。
恐くて、仕方ねえ。この俺様が。
こんなにも、本気になれる。なってしまっている。
【好き】だ。
【好き】で、仕方がねえ。
俺は八戒が【好き】なんだ。
軽いkissと紅い痕を刻むきつめのkissを。
八戒の躯のあっちこっちに、何度も残す。
ピクンと――ビクッと、反応して跳ね上がる。
慣れていないから。
八戒は、俺が初めてだから。
優しくしてやりてえのに。
なのに、焦ってんのが分かる。
「あっ……あ、ぅ…ん。」
涙声。
小刻みに震える、躯。
きつく閉じている瞳から、涙が零れる。
頬は上気し。
ひとつひとつの愛撫に対する、初々しさ。
俺は、強引に八戒の裡へと己を埋め込んだ。
みしりと、軋む。
八戒の裡が、引きつる。
全身が硬直し、痛々しく。
息を詰まらせている。
それなのに、俺は更に八戒への侵攻を止めず。
その躯を力任せに、抱き締める。
ひでえコトをしてる自覚はあんのに。
八戒が可哀想だと、分かってんのに。
ダメだ。
やめらんねえ。
八戒の中に、俺を――。
ごめん、ごめんな、八戒。
「…ご、じょお。」
なのに、八戒はその白くて細い腕を俺の背へと回してくれた。
痛みで辛いだろーに、俺へとその碧の瞳を向けて。
俺の好きな、綺麗な微笑みと一緒に。
「好き、です…ごじょ。
ぼく…あなたの、ものに…なれた、のですよ…ね。
うれ、しい…です。」
絶対に、離さねえ。
離してたまるもんか。
ずっと、こーして溶け合っていこう。
ずっと、このまんまで、いてくれ――八戒。
八戒の紅く染まった小さな唇に。
kissをしながら、強く祈っていた。
2002.01.01 UP
★ コメント ☆
14000のキリリクです
沙羅さま、お待たせして申し訳ありませんでした
新年早々というコトで、おめでたいと
それで、お許し願います〜(^^;)
さて、頂いていたリク内容は
【58の裏で、新婚旅行で、甘々で、定番】
でしたvv
甘くは、出来たと思うのですが…
裏仕様は…ごめんなさい…ι
一応、屋根裏部屋に置いてありますが
多分、ヌルイわ・笑
では、沙羅さま
慎んで贈らせて頂きますので、貰ってねvv