開催趣旨

  第一勧業銀行・京都支店の改築ニュースが市民に伝わって半年が経ちました。その間に「京都の近代建築を考える会」などの市民グループや日本建築学会から保存の要望書が提出されています。また、銀行側と京都市との協議の結果、今の建物に「似たもの」が新築される予定であることも明らかとなりました。レプリカを作るためにオリジナルを損なうという奇妙な計画です。

  この建物は、日本近代建築の父と呼ばれる辰野金吾の設計で1906年に完成しました(辰野は東京駅や大阪中ノ島の中央公会堂などの設計者として知られています)。完成以来、赤レンガの建築として市民に親しまれてきました。また、現存する銀行建築としてもっとも古いもののひとつとして高い歴史的評価を受けています。建物は、京都の近代化のメインストリートとなった三条通りにあり、三条通りの歴史的景観を成立させる重要な要素ともなっています。

 近年、近代建築の持つ歴史的価値の蓄積を活かそうとする試みが各地で始まっています。福岡市立歴史資料館や岩手銀行中ノ島支店など辰野作品は、その試みの先駆となってきました。

 はたして京都で進められているレプリカ計画で、長年蓄積されてきた歴史的価値を活かすことができるのでしょうか。ニセモノと分かったとたんに、歴史的な感動は失われてしまうのではないでしょうか。

 今年は、辰野の没後80年に当たります。そこで、辰野金吾の業績と残された近代建築の歴史的価値を見直すために、この記念講演会を企画しました。多くの市民の来場を希望します。

 

 

   辰野記念講演会実行委員会

 委員長   中川 理(京都工芸繊維大学助教授)

委員    青谷  治人 (都市探検家倶楽部)

委員     円満字洋介 (西日本建築探偵団)

 委員 山添みどり(京都の近代建築を考える会)