風を感じて


始めは雑誌から…

モエナが3ヶ月になったくらいの頃だったと思うけれど、 横になってるモエナの隣で、やっぱりボクも寝っ転がって雑誌を読んでた。 この頃は、部屋の中がオトナには適温でも、手足バタバタ運動マニアになってたモエナには、 ちょっと暑いこともあったみたいで、よく首の後ろなんかに汗をかいてた。 この頃のコドモは、人によって差はあるらしいけれど、まだ寝返りとかうてなくって、 背中方面が暑いときにもどうしようもない。
この時も、やっぱり少し暑かったみたいでグスグス文句を言い始めたから、 横に起き上がって、手にした雑誌で顔に風を送ってあげた。 それはそれですぐにニコニコし始めたんだけれど、なぜか”出来心”で、 モエナに強風を送ってみたくなって、片手に持っていた雑誌を両手に持ち替えて、 ブンブンと思いっきり風を送ってみた。
#ヘタすると幼児虐待だね。(^^;
そしたらモエナったら、なんていうか、「恍惚とした表情」って言うのかな、 そんな顔つきになって、なんかメチャメチャ喜んでる風だった。 向かってくる風が強いから、髪は全部逆立っちゃうし(元から逆立ち気味だけど)、 目はうっすらとしか開けていらんなくなるしっていう状態なんだけれど、 でも両手両足をバタバタさせて(喜んでいるときの証し)、 フゥフゥ言って、そりゃぁもう興奮状態。
ヨメを呼んで「ほらほら、見てみ」なんて言いながら、二人(三人だね、正確には)で少し楽しんだ。 ヨメには「雑誌とか飛ばして顔にぶつけたりしないでよ」ってしっかり釘をさされたけれど、 これ以来、ボクらが「風を感じて」と呼ぶことになったこの遊びは、 モエナとボクたちにとって定番のモノになったんだ。

ウチワになって進化した

そんなわけで、定番の遊びになった「風を感じて」だけれど、釘をさされたこともあるし、 やっぱり普通に考えると危ないから、しまってあったウチワを出してきて、それで遊んであげることにした。
このウチワは、片面が白、反対側が赤なんだけれど、これで何回か遊んでいるうちに、 面白いことに気が付いた。
赤いほうをモエナに向けて、風を送るときに、始めは顔に風が当たらないように、 顔の脇から扇ぎはじめて、これを徐々に近づけて行くと、そのウチワの寄って行く動きに合わせて、 モエナが目で追う。これを繰り返してたら、今度は近づいてくると、 モエナが「期待に胸ふくらます」ような表情をするようになって来た。 「来るぞ、来るぞぉ」って感じ。
顔の右横から風を送り始めて、徐々に顔に風を当てて、そのまま左側に通りすぎて、 ってことをやってみると、「来るぞ来るぞぉ」から「うらぁ、来た来た来た来た来たぁ!はぁはぁ」 になって、「ふぅ、もう終わりかぁ」みたいな感じになる。 オトナがジェットコースターに乗って下るときみたいな、そんな感じに似てるかな。 この頃には、他にも「抱こうとするとウキウキした表情になる」とか、 「ハダカにすると喜ぶ−風呂がとっても好きだから」とか、「玄関に行くと嬉しい−お出かけも好き」 など、自分が好きなことに対する準備を覚えて、そこから先を期待してワクワクするってことを、 いろんな場面でするようになって来た。
モエナはまたひとつ進化した。
1999.8.1